【番外編】クリスマス⑤
目を疑うとはこのことを言うのだろうか。圭織は左腕を美紀に預けながらぼんやりとそう思った。でも、何だろう。とてつもなく、ふわふわする。圭織は目を細めた。
キャンドルの炎は揺らめき、生み出された影がテーブルに美しい波を落とす。そして、波は静かに揺れている。
圭織は自らに絡むように動く美紀の指を感じながらその波をまるで夢のように見つめている。
「ほら、出来たわよ。ふふ、圭織によく似合ってる……」
美紀が突然、圭織の手の甲を指先で軽くつつく。
「え?」
「ねぇ、酔ってしまったの?」
圭織ははっとする。瞼が重い。美紀は圭織を見つめている。その顔は美しく、見慣れていた。
「圭織?」
「え、あ、ううん。大丈夫!」
圭織は言った。何をそんなに焦っているのだろうか。圭織は恥ずかしくなる。それでも美紀は呆れることなく、「見ていて飽きないわ」と呟いた。
圭織は顔を熱くしながら腕時計に目を落とした。
そして、すぐに息を吐く。バンドは淡いピンクに染まり、真っ白なダイヤルには花と二匹の蝶が描かれている。圭織は目を細めた。イエローゴールドのケースがきらきらと光っている。
「綺麗……」
圭織の呟きに美紀は嬉しそうに笑う。その声が圭織の耳に届いた。圭織は腕時計に視線を向けたまま、思った。
キャンドルの炎が腕時計を宝石に変えたのだ、と──
大変、お待たせ致しました(短い挙げ句、待ってくださった方がいらっしゃるか不明ですが)腕時計は実際に存在致します。
そして、食事の描写を省略するか迷いますね……では、また明日も書きます。




