【番外編】クリスマス④
圭織は首を左右に振り、ホットワインを美紀の手元に返した。その動きは何だかぎこちない。どぎまぎしてしまったのだ。圭織はごまかすように「え、大丈夫。ベリーニで」と早口に言った。動揺が声と態度に現れる。顔が熱くなる。
「圭織、可愛い」
「なっ!?」と圭織は目を見開いた。
「そういうところも好き」
美紀は言い、圭織をじっと見つめている。
「うっ……」
圭織は赤面する。これ以上、美紀に顔を見られたくなかった。圭織は俯きバスケットから無理矢理、プレゼントを引き抜いた。そして、美紀につき出すようにプレゼントを向ける。美紀は目を丸くしていた。
「これ、クリスマスプレゼント!」
圭織は言った。変なタイミングになってしまったと思い、余計に顔が熱くなる。美紀はプレゼントを受け取り、「ありがとう。一生、大事にするわ」と笑う。美紀は嬉しそうだった。それに羨ましいほど余裕がある。圭織は微かにその余裕に嫉妬する。
「一生って……大袈裟。それに別に高いもんじゃないし……あれ?」
圭織は美紀の左腕を見た。圭織は初めて美紀の腕時計を知る。その瞬間、美紀がくすりと笑った。
「その時計って……あのブランドの? 美紀、好きだったっけか……?」
圭織はきょとんとする。可愛らしいデザインは確か美紀が好むものではなかったと思う。美紀は目を細めた。
「良かった。ようやく、気がついたのね。圭織、さぁ、左腕を出して?」
圭織は美紀の言葉に呆然とする。圭織の瞳に一番欲しいものが映ったのだ。
困ったことに終わりません(苦笑)そして、次回は年明けの9日です。ゆっくり進みますので宜しければお付き合いください。では、良いお年を。




