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新たな旅路の祝福を  作者: 稀一
一章
19/54

03

 娘には悪いが、心底驚いた。予想だにしていなかったのだ。まさか、


「すまない、まさかここまで体力がないとは」


 剣を十回素振りしただけで、倒れるほどに力尽きるだなんて。

 私が五歳の頃は剣を振りまわし走り回っていた。両親からの手紙では弟もそれぐらいには既に駆け回って遊んでいたというし、五歳児というのがまさかここまで体力がないだなんて。私たち兄弟がおかしいのか、それともシアの体力が極端にないのか。


 だが、そうか、目覚めたばかりだった。無理をさせてしまったんだろう、確実に。自分の感覚でさせてしまったのが悪かった。私たちがおかしかったのかどうかは置いておくにしても、一般的な五歳児より余程体力なんてあるはずもなかったのだ。


「ご、めんな、さい。私から、お願い、した、のに」


 大きく胸を上下させながら倒れたままのシアに慌てて首を振り謝ると、気落ちしたように目を伏せた。


「もう休憩にしよう。まずは体力作りからだ」


 言うと、シアは全身の力を抜き、くて、と芝生に頭を落とした。こちらに顔を向けている程度も苦しいぐらいに限界だったのかもしれない。本当に申し訳ないことをしたな……。言ってくれれば止めたのに、と思うものの、こちらはこちらで素振りしていたのでそのせいで言い出せなかったのかもしれないと思うと口を噤むほかない。

 さてどうしようか。体力作りといっても、ただの走り込みなどでは子供にはつまらないだろう。私はどうやって体力をつけていただろうか。


(ああ、そうか……)

「リリシア、来てくれないか」


 自身の考えにこれはいいことを思いついたと自画自賛しながら呼べば、リリシアはすぐさまやってきた。


「休憩を取ろうと思う。何か飲み物と、シアに今日のおやつを持ってきてくれないか」


 とりあえず今の状態から回復させようと思い言えば、リリシアの返事の前にシアが顔をこちらに向けた。早い反応だ。甘いものが好きなんだろうか。


「任せてください、ファデル様」


 可愛らしいシアの様子に笑いながらリリシアがいい、私も笑いながら頼むよ、と返す。リリシアはシアを見るとふふ、と満面の笑みを浮かべ、人差し指を頬に添えた。


「シア様、今日のおやつはシア様の大好きなマアムですよ」


 嬉しそうに跳ね上がった後疲労を思い出した様子でぐったりするシアに笑いそうになりながら、マアムか、と驚く。この時期に採れるなんて珍しい。


「まだマアムが採れたのか。今日のマアムで今年は食べ納めかな」


 私も果物の中ではマアムが一番好きなんだ。また来年か、としみじみしていると、シアがショックを受けたような顔をした。もしかして知らなかったのだろうか。まあ、それもそうか。

 リリシアとシアのやりとりを見ながらなんだか悪いことをしたな、と思う。シアが再び寝転がるのを見て、リリシアを呼ぶ。


「後でシアも連れて出かけるから、その準備も頼みたい」


 こそっと頼むと、リリシアはかしこまりました、と笑顔で頷いた。シアはやっぱり疲れきって寝そべっている。

 はは、なんだ、そんな姿も可愛いなんて、さすが私たちの娘だ。

 心の中で自身の親馬鹿加減に呆れながら、それでも綻ぶ頬を堪えることはできなかった。





 適当に着替えて街に出ようかと思っていたが、エーデリアに娘との初めてのデートなのよ! と叱られ、ある程度しっかりとコーディネートされてしまった。シアはまだそんなことに興味のある年じゃないと思うんだがなあ。執務で忙しいくせに変なところに凝るんだから。


 軽く頭を掻きながらシア達を待っていると、二人の姿が見えた。角から曲がってきたリリシアはいつもの作業服だが、シアは違う。行きすぎないおめかしをした様はなんとも可愛らしく、まただらしなく頬が緩んだ。

 胸元でふわふわ揺れるリボン。ゆったりと広がったワンピースに、目の色に近い青い花があしらわれた小さな鞄。そしてまだまだ小さい足を包む茶色の靴はエーデリアが幼いころに履いていたという靴で、以前シアが大きくなったら履かせるのだと笑っていた様を思い出した。


 ああ、生まれてからもうそんなに経ったのか。

 時間の早さと、成長の早さ。けれどやっと歩き始めたシアは、きっと今までの時間の分もぎっしりと詰まった人生を見せてくれるのだろうと、あまりに先に行き過ぎた思考に思わず苦笑する。こんなつもりではなかった。子供が生まれたら厳しくも優しい父になろうと決めていたのに、気が付けば娘の一挙一動に翻弄されている。きっとこれからもそうなんだろう。


 外套を羽織ったリリシアにシアと手を繋ぐよう促され、恐る恐る小さな手を取る。本当に小さな手だった。抱きしめる度に思ってはいたが、片手でだって持ち上げられそうな軽い体だ。子供だから、というだけではない。それくらいは私にだってわかった。

 手のひらの中に包みこまれてしまうほど小さな手を、どうしようもなく愛しく感じる。


 やはり緊張しているのは私だけのようで、シアは平然としたまま手を一度見ただけで視線をそらした。もしかしたら思っている以上に、この子は私やエーデリアを受け入れているのかもしれない。突然起きて、何が何だかもわからないままここまでやってきただろうに。


 強い子だ。きっと私たちが思う以上に。


「これから歩いて街まで行く。その後はまだ決めてないが、街を見て回ろう」


 邸を出ながら伝えれば、シアはこくりと一度頷き門の外へ視線をやった。庭から見た街を思い出しているんだろう。あんなに感動していたんだ。きっと嬉しいに違いない。


「緩やかな坂だから大丈夫だとは思うが、私の手は離さないように」


 しっかりと握って言えば、「はい」とこれまたしっかりした返事が返ってきた。それに気を良くしていると、リリシアに胡乱気な目を向けられてしまった。仕方ないだろ、娘と手を繋いで歩くなんて、それこそ本当に夢に見たことだ。


「行こうか」


 ついつい緩む頬をそのままに歩きだす。崖を崩して作った坂とはいえ、きちんと整備されているし、幅も馬車が余裕で通れるほどには広い。柵はないがここから落ちることはないだろう。が、一応私が崖側を歩く。怖いのか足元をしっかりと見続けるシアは繋いだ手にぎゅっと力を込めていた。かわいい。


 それから暫くたわいもない話をポツリポツリと交わしていると、シアの歩調が落ちてきた。疲れたのか、と四分の一ほど下ってきた道を見て、休憩を提案した。今はこんなところだろう。

 ほっとしたように息をつき立ち止まったシアにリリシアが布を地面に敷く。「こちらへどうぞ」と呼んだ。手を放してやるとよたよたと危なげな様子でそちらまで向かうものだからついはらはらして手を伸ばしそうになる。

 にっこりと笑ったリリシアがシアの手を取り座らせると、肩にかけていた籠から飲み物を出し、いつのまに用意したんだと少し驚いてしまった。


「疲れが取れたらまた進むとしよう」


 二人の傍まで行きながら言えば、シアが「はい」と少し情けない声で返してきて、それにリリシアと二人で苦笑する。やはりこの道は少しきついか。

 そうしてまた歩きだし、しばらく進んでは休憩、と四回ほど繰り返すと、ようやく街についた。シアは一息つくと前を向いて、そのまま動きを止める。驚いて顔を見れば、軽く見開かれた目はきょろきょろとあちこちに動き、頬が少し赤くなっている。よほど高揚しているらしい。握る手に力が込められ、それに笑った。


「すごい」


 シアは初めて邸から出たのだ、真新しい光景に感動しないはずもない。だが、その言葉はきっと、エーデリアが聞いていたら飛び上るほど喜んだことだろう。彼女がこの地を治めているのだから。帰ったら教えてやろう。


「さて、行くとしようか。私は一度訓練所の方へ顔を出してくるから、リリシアとともに街を見て回るといい。きっと疲れなんて吹き飛ぶぞ」


 言いながらリリシアと手を繋ぎ直させるも、それに気づいているのかいないのか、視線は街に固定され頭を何度も上下に振っていた。リリシアに聞いていただけとは違い、珍しく全開で子供らしい姿をこの目で見て、その可愛らしさに思わず苦笑する。誘拐されてしまいそうなほど可愛い。


「私たちも近くまで一緒に行きましょう。騎士団の訓練所の近くには可愛らしい雑貨屋さんがあるんです。あそこならすぐに合流できるでしょうし」


 如何ですか、と同意を求めてくるリリシアにそれはいいと頷くと、シアも雑貨屋に興味が引かれたのか頷いた。


「じゃあ、行こうか」


 街を囲うように舗装されている道を歩けば、シアとリリシアが付いてくる。シアは外から街をじっと見つめていて、そんなにみたいのならやはりこっちではなく、先に行ってもらっていた方がよかったんじゃないかと思ってしまう。まあ何も街から離れるわけではないから、良いんだが。


(……しまった!)


 良くない、この流れは良くない! 騎士団までシアが付いてくるということじゃないか!

 近づいた途端むさ苦しい集団にシアが取り囲まれる光景を想像してしまい、ゾッとする。いけない。こんなにも幼気いたいけなシアをあんなところに連れていけば、そうなることは確実だ。


 どうしたものか、とちらりと二人に視線を向ける。二人は楽しそうに会話をしていて――恐らくあちこちを指をさすシアの質問にリリシアが答えているんだろう――とてもじゃないがやっぱり付いてこないでくれとは言い辛い。ああ、汗臭い筋肉に囲まれてしまうのか、可愛い可愛い娘が!

 頭を抱えたくなる。気付かれないよう長い長い溜息を小さく続けながら、見え始めた訓練所に顔をしかめる。いや、待て、ここからその雑貨屋に行かせてしまえばいいのでは。そうだ、それがいい。


「シア、御覧。あれが私の仕事場だよ」


 立ち止まり訓練所を指差せば、街の方を見ていたシアの眼が指し示す方向へ向く。ぱちりと瞬きを一つすると、納得したように頷いた。


「あれが訓練所なのですか」

「ああ、年に一度十人ほど新しい訓練生が来ては、ここで訓練を積み、経験を積み、王都へ行くかここに残るかを決める。ここにいる騎士たちはここに残った者たちだ。もちろん街の人たちも訓練生として入ってくることもある。この街を守りたいのだと強い意志を持って。そういった騎士たちがこの街を守っているんだ。魔物が街に入ってこないのは彼らの働きのおかげなんだよ」


 ぴくりと反応したシアに内心首を傾げ、そうか、魔物がなにか知らないのかもしれないな、と少し考える。なんと説明したものか、と顎を擦ると、シアがこちらを見た。


「魔物との戦闘で騎士様が亡くなってしまうことはあるのですか」


 突然なされた硬い声での質問に、思わず硬直してしまった。


 小さい女の子といえば、騎士と聞けばかっこいいと憧れるもので、生死のことなど気にもかけない。そもそもまだそういうことには鈍感なものだ。騎士が命をかけているということだって漠然としかわからないだろう。さっそうと現れ自分を守ってくれる。そう憧れる存在なのだ、騎士というのは。


「そう、だね。騎士は、命がけの仕事だ」


 ああでも、そうか、この子は騎士団の訓練する光景に目を奪われたと言っていたじゃないか。この子の目には、決して遊んでいるようには見えなかったのだろう。ただただかっこいいだけには映らなかったのだろう。

 事実その通りだ。シアが剣術を習いたいと言ったあの日は、三度目の遠征で新しい訓練生の一人が重傷を負った直後だった。彼は未だに自宅療養中で、稀に訓練所に来ては「こうなりたくなければ訓練を必死でやれ」と、笑って同期達に言っているのだ。


「行きなさい。私もすぐに戻る。楽しんでおいで」


 強張ってしまっていた顔に気付き笑って言えば、リリシアがシアを連れて街の方へ向かう。時折振り向くシアは、もしかしたら心配でもしているのかもしれない。


 不慮の事故、だった。怪我をした彼にも、それを避けることができなかった私たちにも、予想していなかったことが起こったのだ。

 最近この領地付近には今までいなかったような高位の魔物が現れることが稀にある。原因は分かっていないが、よりによって遠征の帰りに鉢合わせしてしまった。目を瞑れば今でもあの光景が鮮明に思い出される。

 守るべき若者を、未来ある若者を、守り切ることが出来なかった。


 だが、彼らは訓練生と言えど騎士だ。自身が負った怪我の責任を他人に求める者たちじゃない。それでも私たちはまだ彼らを守るべき立場で、指導する立場なのだ。責任を覚えずにはいられない。

 彼は、私たちを恨まないだろう。責めもせず、怒りもせず、悲しみもしないだろう。少なくとも、私たちの前に現れる彼はいつだってそうだ。自身は何か月もかけなければ治らないような怪我を負ったのに、それを見て教訓にしろと同期の背を押している。


 はたして、私が彼だったとしたら、そんなことができただろうか。若いころは無鉄砲で、自分は強いのだと馬鹿みたいに信じていた。自分は守る側なのだと根拠もない確信をしていたのだ。そんな頃の私が、怪我のせいで休まなければならず、一緒に訓練していた同期達に追い抜かれていく。私一人がどんどん置いていかれて、復帰するころには自分以外はもう一人前の騎士になっているのだ。そんなことを、わざわざ訓練所に来て目の当たりにして、耐えられるだろうか。笑って忠告できるだろうか。


「……」


 気付けば立ち止まったまま俯いていた顔を上げる。首を振り、暗い考えを振り切った。彼が立派な騎士なのだ。それは確かなことだった。

 しっかりと前を向き、訓練所へ向かう。彼は今日来ているだろうか。


「トアレ!」


 訓練所に入り一番に見えた姿に声をかければ、驚いたような顔をして振り向いた。


「今日は休みだったはずですが、どうかしたのですか?」

「いや、ちょっと街に出る用事が出来たから、一度顔を出しておこうかと思ってな」


 慌てて走り寄って来た彼の後ろから、他の奴らも付いてきているのを見て笑いながら言えばほっとしたように息をついた。そんなトアレの後ろから「えー」だの「驚かさないでくださいよ」だのと軽い調子で飛んでくる非難にまた笑う。と、内一人、一番シアに合わせろとしつこい奴が顔を突き出してきた。


「てっきり娘さんとお出かけかと期待しちゃいましたよ!」


 きょろきょろと顔を動かしたかと思うとがっかりしたように言ってきた奴に顔を引きつらせる。ここまで連れてこなくて正解だったようだ。


「休日なのに娘さんと過ごさないんですか?」

「もしかして娘さんに懐かれてないんですか?」

「パパ嫌いとか言われてたりして!」

「おい言い過ぎだぞ」

「でも偶の休日ぐらい娘さんと過ごしてあげればいいのに」


 一人目が引き金となったのか囲んで言いたい放題言ってくる奴らにどんどん顔を引きつらせていると、トアレが手を叩いた。途端に口を閉じた奴らに、この態度の差は一体何だと顔を顰める。


「休憩にします。丁度いい時間ですからね。ただし警報が聞こえる場所にいること」


 時計を見れば確かに昼時の丁度いい時間だ。


「団長も一緒にお昼どうですか」

「ひとりさびしく食べるよりいいでしょう」

「連れがいる!」


 また口ぐちに好き勝手言い始めるやつらに思わず返せば、きょとんと全員が動きを止めた。「ははーん」、と漏らされたいやらしい笑みに嫌な予感を募らせていると、


「エーデリア様とデートですね!」


 と満面の笑みで言われた。違う!


「団長もつれないなあ、それならそうと言ってれればいいのに」

「そう言えばおしゃれしてますもんね」

「あんなに素敵な奥さんだ、隠したくなるのもわかるだろ」

「俺の嫁さんだって負けてねぇ!」

「お前の嫁さんは強すぎる」

「何だと!」


 突然発展したじゃれあいの喧嘩に呆れていると、トアレが今のうちにどうぞ、と退路を作ってくれていた。苦笑して礼を言えば、「楽しんできてください」と笑い掛けられ、もしやばれているんだろうかと冷や汗を掻きながら訓練所を後にした。


(まったく、元気な奴らだ)

 思わず浮かんだ笑顔にこれは違う、と何かに言い訳をしながら首を振った。





「二人とも、待たせてしまってすまない」


 街に入り暫く探すと見えた姿に走り寄れば、そんなに待っていません、とリリシアが笑う。シアは手にターウを持っており、そこらの屋台で買ったのか聞けば嬉しそうに頷かれた。私も昔はハマったものだ。


「それじゃあシア、広場に行こうか。きっとたくさん人がいるぞ」

「広場?」


 今日の目的はシアの友人作りだ。

 考えてみれば、私の小さいころだって何も勝手に体力がついたわけではない。友人と遊び回っては体力を使い果たし家に帰るといつも疲れ切って夜はぐっすり眠っていた。だがシアは邸から出たことがない。友人もいなければ、運動らしい運動だってしていなかった。体力なんてつくはずもない。

 道中様々なものを指差しては飽きもせずリリシアに聞くシアに微笑ましい気持ちになりながら、広場へ向かっていた、その時だった。


 大きな鈍い鐘の音が連続して聞こえた。


 突如聞こえた警鐘に思わず勢いよく振り向くと、その場だけではなく街全体が緊張状態になったのがわかった。周囲を歩いていた人たちが建物の中へと避難していく。魔物が街に近づいているのだ。

 リリシアの強張った顔と、わけもわからないままリリシアに抱きしめられたシアを見る。リリシアは行ってくださいと、強く私を見つめていた。


 少し調子に乗っていたのだ。思えば今日は朝から、シアと過ごせるのだとはしゃぎ過ぎていたように思う。これはもしかしたら、あまりいい気になるなよという天のお告げだったのかもしれない。


「っ、行ってくる」


 折角娘と過ごせている休日だというのに、魔物なんかのせいで。そんな思考が頭を過ぎるのは、騎士として失格だろうか。たまの休日を潰されることなどよくあることなのだ。今更すぎる恨み言ではあった。

 走って訓練所に向かうと、もう馬にも乗り、すぐにでも出られる、といった様子の騎士団が見えた。


「揃ってるか!」


 近付きながら声をかけ、返事を聞いて厩舎へ向かう。


「お休みですのに、わざわざすみません」

「構わん、私も行く。近頃は異常だ。そろそろ王都に報告を出すべきかもしれん」


 備品で装備を整え厩舎から馬を引き合流すると、トアレが申し訳なさそうに言って来た。思わず舌打ちしそうになる。私だって思ったさ。だが、そんな場合じゃないだろう。私の仕事は街を守ることだ。


「今回は、違うといいんだが」


 私の言葉に顔を引き締めた彼らを見ながら、「行くぞ」と声を上げた。

読んでくださりありがとうございます。


↓用語説明

◇ターウ

飴の様なお菓子。果汁が練り込んである。少し熱した飴のような硬さで噛み切ることができる。一般的に伸ばしたり形を作ったりなど遊んでから食べる。屋台などでは自分で形を作るただの丸いものから、店の人が様々な形にしたものなどが売っている。

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