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新たな旅路の祝福を  作者: 稀一
一章
18/54

02

 正直に云おう。私には不安しかなかった。


 それは何も彼女と結婚したことを後悔しているだとか、そういう話ではない。ここでの生活は心地がいいし、何より彼女を愛している。もちろん彼女のお腹の中の子だって、何時生まれるだろうかと、愛しくてたまらない。

 だがまれに体調を崩し苦しむ彼女を、見守ることしかできないのはつらく、不安だった。彼女の体は大丈夫なのだろうか。お腹の子は。彼女は当然初めての妊娠だ。私だって、それを傍らで見るのは初めてだった。弟はいるが、あれが生まれるとき私は家には居なかった。すでに騎士団の訓練生だったからだ。

 これは普通のことなのか、体調を崩すのは平気なのか。不安は付きまとい、気丈に笑む彼女の手を取り何の不安もないかのように笑い、未来を共に語ることしかできなかった。子供を産むことは、その苦しみは、変わってやることができない。


 予定日はまだだったこともあり油断し、遠征を組んでしまった私はその三日目の朝早馬によって知らされた事実に焦り、すぐさま帰還することにした。新しい訓練生たちも魔物との戦いを幾度となく繰り返し、疲労もたまっていたのだろう、事情を説明すれば不満の声は上がらなかった。

 領に戻ってこれたのは夜だった。暗闇の中そのまま現地解散を言い渡し、副団長であるトアレに心配気に見守られながら邸へ急ぐ。遠征に乗っていた馬を訓練所に返すことなくそのまま乗り、邸についたのは深夜。産気づいたと連絡があったのは今朝のことだ。もう生まれているだろうに、あまりにも静まり返った邸に不安が募る。一体どういうことだ。なぜこんなにも静かなんだ。


 馬を門へと繋ぎ、邸に駆け入ればリリシアがお待ちしておりました、と沈んだ表情で迎えた。

(まさか――)

 最悪の想像をしてしまい、それを振り払うように首を振り、毅然とリリシアの後についていく。心無し二人とも駆け足なのは、やはり不安が拭えなかったせいだろう。


「エーデリア!」


 戸を叩くこともなくそのまま部屋に入れば、青白い顔をしたまま、赤ん坊が包まれているだろう布を抱きしめる愛しい愛しい妻の姿。彼女が無事であることに体から力が抜けるような安堵をおぼえ、しかしその顔色に不安がまた積もり、ゆっくりと近づいていく。彼女は力なく、今気づいたようにこちらに顔を向けると、途端にくしゃりと歪ませた。


「あなた、ごめんなさい。ごめんなさいっ」


 今にも泣き出してしまいそうなその顔に耐えきれず強く抱きしめれば、彼女は赤ん坊を抱きしめたまま私の胸に顔を押し付け、声を堪えながら泣いてしまった。何が起こったのかも正しく理解しないまま、彼女の頭を、背中を撫で続け、大丈夫だと、額に口付けた。

 暫くそのまま泣き続けていたが、ある程度落ち着いたのか彼女は赤ん坊を私に見せた。眠っているようで、目を瞑り、胸を小さく上下させている。顔色もいい。一体何があったのかと聞けば、何とこの子は、動きもしなければ、泣きもしていないのだと言う。産声は、と問えば、彼女は悲しげに眼を伏せ首を横に振った。


「それでも、生きているじゃないか。君が謝ることなんて、なにもない。無事に産んでくれてありがとう。君が、無事でいてくれてありがとう」


 涙の跡が残った頬を拭えば、彼女は愛しげに私の手に頬を擦り寄せ目を瞑る。最後に彼女の眼尻に残された涙が零れ、私の手を濡らした。


「愛してる」





 翌日、私は彼女の傍にいようと思ったのだが、断られてしまった。きちんと仕事に行ってきなさいと言われ、後ろ髪を引かれる思いで邸を離れる。何度も何度も、門までの短い道で振り向けば、その度に赤ん坊を抱えた彼女に窘められる。


 だって君が愛しくて、心配で、居ても立ってもいられないんだ。


 繋いでいた馬に跨りすぐさま街へ降りると、領内のすべての魔術師と医師のもとを駆け回った。だが誰もかれもわからないと首を振るばかりで、なんの成果もないまま訓練所へと向かった。どうすればいいのだろうか。不安は付きまとい、馬から降りた足は重い。こんなことで仕事になるのかと、朝見送ってくれたエーデリアを思った。不安だろうに、恐ろしいだろうに、気丈に微笑んで見せていた。昨晩の涙なんて嘘のようだ。

 けれど、確かに彼女は泣いていた。私の腕の中で。苦しげに、悲しげに。


 いい人だ。私にはもったいないほど、強く、優しく、心の豊かないい人だ。

 こんなことではいけない。彼女に釣り合う人として、強くあらねば。

 ぐっと顔に力を入れ、なるべくいつもと同じように訓練所に入ればトアレが数人を連れて寄って来た。おはようと声をかければ、内一人からもう昼ですよと苦笑された。ああ、そうか。医師たちの下に寄った時間が長すぎたようだ。時間は疾うに過ぎていた。


「すまない、気がつけばこんな時間だったよ」


 苦笑を浮かべて謝れば、今度は他の一人が何やら期待を込めた目でこちらを見ていた。それを訝しげに見れば、またまた、と笑顔を向けられる。


「団長、昨日お子さん産まれたんでしょう? 遠征途中で切り上げて、慌てて帰って来たらしいじゃないですか。時間を忘れるほど可愛いみたいですね! 男の子ですか? 女の子ですか?」

「あ? あぁ、まあな」


 自分のことのように嬉しそうに聞かれ、思わず言葉に詰まった。そうだ、無事生まれてきてはいるんだ。それも女の子が。きっと、エーデリアのように美しく育つ。もし見た目が美しくなかったとしても、それでも私と彼女の子供だ。可愛くないわけがない。いい子に育つに決まっている。


「女の子だよ」


 苦笑して答えれば、そいつはにんまり笑うと他の者も引きつれて走って行った。「団長のお子さんは女の子だ!」と嬉しそうに叫びながら。

 その後ろ姿につい苦々しい気持ちになってしまう。気持ちを殺すように深く溜息をつけば、トアレが眉を寄せてこちらを見た。


「どうかしたんですか。まさか、お子さんに何か問題でも……」


 何を案じているのかは手に取るように分かった。それにすぐさま違うと首を振る。


「無事に産まれはしたんだ。エーデリアも、子も、健康体で」


 なら、と訝しげに返された言葉に、トアレにならば、と口を開いた。トアレは静かに話を聞いてくれ、話が終わると悲痛な表情を浮かべた。


「そんなことが……医者はなんと? 原因は分かったのですか?」


 彼もまた自分のことのように辛そうに聞いてくるが、それには首を横に振るしかなかった。そんな、と小さく漏れた言葉に苦笑し、大丈夫だと肩を叩く。


「他のやつには内緒にしてくれないか」


 訓練所の真ん中で木剣も放り出しお祭り騒ぎのやつらを見て言えば、トアレは重々しく頷いた。





 それからは度々娘さんを連れてきてくださいよ、と強請って来るやつらをかわすのに苦労した。トアレも協力はしてくれたが、中々にしつこい。まだ小さいし駄目だと断り続け、邸に押し掛けて来ようとするのも止めること三年、やっと落ち着いたかと思えば、まだ諦めていない連中はすれ違う度娘さんはどれくらい成長しました? と世間話のように始めては、奥さんのように綺麗なんでしょうね、会いたいなぁとちらちら見てくる。


 そうして丁度五年が経ち、何の進展もないまま、その日を迎えた。それはシアの五歳の誕生日。随分と遅い初窓の次の日のことだった。


 慌てたような足音と、エーデリアを呼ぶリリシアの焦ったような声。何事かと部屋から顔を出した時には既に二人の背中が角を曲がったところだった。何が起こったのかもわからないまま私もそちらへ向かえば、娘の、シアの部屋の入口で呆然と立ち尽くす二人の姿。口元を覆い、今にも零れそうな涙を湛えたエーデリアは、ゆっくりと部屋の中へ入って行った。リリシアも涙を湛え、そっとその様子を見守る。

 そんな二人の姿に、部屋の中で一体何が起こっているのかとゆっくり近寄れば、かすかに見えていたエーデリアの髪が靡き部屋の中へ消えて行った。慌ててリリシアの元まで行けば、旦那様、と震える声で呼ばれた。


「ああ、シア、シアっ、起きたのね。起きたのね……!」


 部屋の中には固まる小さなシアを、強く強く抱きしめ、確かめるように顔を撫でるエーデリアがいた。

 シアの眼がきょろきょろと忙しなく動く。それを見て、私も事態を察した。


 ああ、この日が来たのだ!


 胸の奥から湧き上がる名もわからない感情に強く心を揺さぶられながら、またシアを抱きしめ直すエーデリアを見つめた。


「おはよう、シア」


 ああ、おはよう、私たちの愛しい





 涙の止まらなくなってしまったエーデリアの肩を抱え、後はリリシアに任せ一端私たちは部屋を出た。少し、彼女だけでなく私も呼んでくれればよかったじゃないかとリリシアを恨みつつ、笑顔のまま困ったように止まらない涙をぬぐうエーデリアを抱きしめた。

 じわりと、足もとから幸せに浸かっているような感覚に私も思わず涙した。


 しばらくして落ち着いたエーデリアとともにまたシアの部屋を訪れる。シアは忙しなく視線を動かし、私たちを見るときょとんと動きを止めた。リリシアは微笑みながら見守っていて、私はそっとエーデリアの手を取るとシアへ歩み寄る。


「シア」


 呼ぶも、シアは反応しない。自分の名前だとまだ分かっていないのかもしれなかった。


「ろぁ」


 五歳といえども、今まで一度も口をきいたことがない口は、喉は、うまく動かないらしい。口を開くと聞き取れない何かを言い、ぺしん、と床を叩いた。そこで気づいた。


「表情が……」


 思わず口をついて出た言葉に、リリシアが目を伏せ顔を逸らす。気づいていたらしい。エーデリアもそれにまじまじとシアを観察し、ショックを受けたのだろうか、口元を覆った。

 私たちを全く意に介さず、シアは手を握っては開き、腕を振っては見つめ、足の指を触っては、ちいさく動かし、喜んでいる、ようだった。


 笑顔がない。それどころか、表情というものが抜け落ちたように、目の中だけがキラキラと光っては、その感情を表しているようだった。


「ああ、それでも、元気でいてくれればそれでかまわない」


 そっと抱きしめると、エーデリアは優しく笑い、シアの頭を撫でた。





 あれから数日。特になんの問題もなくシアは元気に動き回っているらしい。リリシアからの報告を受ける度顔が綻んでしまう。仕事でなかなか接する機会がなく、食事のときしか会話する機会もないことをさびしく思いながら、日々仕事に打ち込む。自分のことのように親身になって悩んでくれたトアレも報告すると喜んでくれた。安心したようで、その日から少し訓練に力が入っている。

 そんなある日のことだった。


「シアが剣術を?」


 いつもの報告の際リリシアの言った言葉に困惑する。


「どうして剣術に興味なんか」


 女の子なのに、そんな物騒な。確かに女騎士もいるにはいるが、仮にも貴族の娘が剣術など、嫁の行き手がなくなりはしないだろうか。いいや嫁になど当分行かせるつもりはないが。そもそも怪我をしたらどうするんだ。あのかわいらしい顔に怪我でもしようものなら。

 父親として窘めるべきだろうか、と不穏な考えを浮かべていると、エーデリアはふふ、と微笑んだ。


「あら、二人とも、どうしてそんなに困ってるの? リリシア、謝る必要なんてどこにもないわ。あの子が興味を持ったのよ。魔術は前々から先生を探していて、ついこの間いい先生を見つけたから興味を持ったなら僥倖だし、さらに剣術にまで興味を持つなんて、好奇心旺盛なかわいい子だわ」


 そうでしょう? とこちらを見た彼女に怪我の危惧は消せないものの、頷いた。


「そう、だな。うん、もしかしたら私の仕事に興味をもってくれたのかもしれない」


 そう考えると、なんと嬉しいことか。少しでも私の仕事に興味を持ちそう言ってくれたのなら、これほど父親として、騎士団を預かるものとして、冥利に尽きることはない。


「シアを、これからもあの子のことを、よろしくね。私たちはどうも、まだあの子に懐かれていないみたいだから」


 エーデリアの言葉に思わず顔を伏せる。仕方がないことなのかもしれない。共に過ごす時間はあまりにも少なく、エーデリアも領主として動いており暇な時間などそうない。だが親としてはあまりに、悲しいことじゃないか。

 少しでも時間を共にできたら。


「――そうだ」


 突然声を上げた私に二人の視線が集まる。それに顔を上げ、笑った。


「シアの剣術は私が教えよう!」


 騎士団の仕事も、何も毎日というわけではない。休みの日だってある。もちろん、呼び出しがかかればそれも休みではなくなるが、それでも開いている日は作れるのだ。我ながら良い考えだと頷いていると、隣から強めの視線を感じた。


「エーデリア?」


 どうしたんだ、と聞くのも躊躇われるような恨めしそうな眼で見られている。


「……るい」

「え?」


 拗ねたように顔を逸らすと何かを呟いたが聞き取れず、聞き返せばキッとこちらを睨んだ。思わず仰け反る。


「ずるいわ! あなただけシアとの時間を作るだなんて! あなただけ! ずるい!」


 拗ねていたかと思うと駄々を捏ねるように私の手を掴んで引っ張った。ぶんぶんと振られる腕に上半身を翻弄させられるも、こういうところをつい可愛らしく感じてしまうのは、夫の欲目だろうか。


「君の時間が開いたときに、みんなでお茶会でもしよう。もちろん、君が一番シアに話しかけるといい。君とシアだけで過ごしたっていいさ。私たちは家族だろう? もちろん仕事もあるが、会おうと思えば、いつだって会えるし、話せる」


 そっと頭を撫でて言えば拗ねたままの様子で顔を逸らし、あなたも一緒よ、と小さく呟いた。


「もちろんだよ」


 緩む顔をそのままに抱きしめれば、甘えるように背中に腕を回してきた。

 少し呆れたようなリリシアの表情には気付かない振り。





 そうしてやってきた魔術の先生である青年、ノイマン・ジグトレトの整った顔とシアと距離を詰めていく様にやきもきしながら迎えた初授業の日。娘を誑かしそうな危険のある彼はシアの問題を早く解決しようと、外に意見を求め今は邸にいない。そこまで親身になって考えてくれているその気持ちは有難すぎるものだが、それでもなんとなく、やはり、どこか気に食わない。特にシアの目だ。ジグトレトを見るときのあの目。どう見ても信頼している。恐らく私よりだ! 私は親だというのに、なんて情けないことか!

 だが、今日はそのジグトレトがいないのである。つまり、私は今日敵も抜きにシアと過ごせるのだ! 全く、素晴らしい日である!


 だと、いうのに。


「シア、その、なんだ、元気?」

「はい、元気ですよ」


 あっさりと返されてしまった言葉に思わず放心する。

 初めてのちゃんとした、一対一での娘との交流にどうすればいいかわからない、だなどと、情けなさすぎやしないだろうか。


「それじゃあ……うーん」


 会話をどうつなげばいいのかと悩めば、シアは私を見て小さく首を傾げ、ゆっくりあちこちに視線を巡らせまた私を見、またあちこちを見、と繰り返し私の言葉を待っているようだった。本当に情けない。娘に気を使われている気がする。だが何から話せばいいのか見当も付かない。五歳の女の子はどんな話に興味があるのだろうか。


 シアは、私と会話をすることになんの抵抗もないようだ。緊張も、困惑も。私だけが尻込みしている。今まで接することがなかった分、何をすれば喜び、何を言えば喜ぶのかがわからない。下手なことを言って嫌われでもしたら、という考えが頭に巣くい、中々口を開けない。かわいい一人娘に嫌われたらこの先どうすればいいんだ。

 こんな沈黙楽しくも何もないだろうに、シアは大人しく待ってくれている。


 ああ、待て。ただ交流をするわけではなく、これから剣術の訓練を始めるのだ。なにも仲良くにこやかに会話するためにこうして向き合っている訳ではない。そうわかってはいるが、やはり下手なことをして娘に嫌われたくはない。堂々巡りだ。こんなことではいけないというのに。

 勇気を出すんだ。娘と会話をするなんて魔物との命のやり取りに比べればなんということはない! はずだ!


「よし」


 意気込み、シアの眼を見る。シアは不思議そうにこちらを窺っていた。


「シア。シアはどうして剣術に興味をもったんだい?」


 可愛らしい我が子だ。私に似た灰色がかった青の瞳に、日の光の下で煌めく柔らかい淡い金の髪。

 天使のように可愛らしい、我が子だ。

 どうしようもなく緩む顔にシアがわずかに目を丸くして見せ、その反応に驚いてしまいそうになる。以前は、と言っても二週間も経たない前のことだが、ぴくりとも動かなかった表情が出始めているのだ。


 ああ、なんだ、この子はちゃんと少しずつ、前に進んでいるのか。

 胸を満たすあたたかさにどこかむず痒くなって、苦笑した。


「邸を散策していたんです」


 少し考えるようにしてから帰ってきた言葉に思わず首を傾げれば、シアは渡り廊下を振り向いた。私もその視線を追う。その向こうに見えるのは庭と柵と、広がる晴天だ。


「そうしたら前庭について、柵の向こうを見たんです」


 とても広かったのだと、腕を広げながらくるりと振り返った。それを見ながら、やはりどういう話なのだろうかとわからず見つめ続ける。


「街の周囲に広がる自然が、空が。全部広かったんです」


 嬉しそうに少し細まった目。それを見て、風に吹かれ、振り向いた勢いとともに舞った金の髪が眩しくて目を逸らしそうになる。シアはまっすぐに私の目を見ていた。

 この子は、人の目を見ることに随分と躊躇いのない子だ。


「私、その時に初めて見たんです。剣を振り、汗を飛ばし、ひたすら自身を磨くため訓練をする騎士団を」


 驚いた。その言葉に、その声音に。まさか、本当に私の仕事を見て剣術に興味をもったのかと期待が目頭をくすぐる。じわりと暖かくなるそれに自身の高揚を教えられ、堪えようもなく笑みが毀れた。


(――ああ、本当にそうなら)


 それは一体、どれだけ幸せなことなのだろう。どれだけ誇りに思えるだろう。どれだけ。


「私も、ああやってみたいと思ったんです」


 途端、花が咲いたように笑みを浮かべたシアに目を見開く。先ほどまでの微かにしか表れなかったそれが、一気に綻んだ。

 嬉しそうにはにかむ彼女の笑顔と被る、柔らかな表情。


 ああ、本当に、エーデリアと私の子なのだ。

読んでくださりありがとうございます。

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