第5話
10話までは毎日更新するかもかも。
バルサン大樹海は危険度Sの魔物が蔓延る危険地帯である。そんな樹海から数千キロメートル先にある人間の国【ペルシア王国】王城ロザンマリア城の会議室にて緊急会議が行われていた。
「さて今回の会議に集まってもらったのは他でもない。バルサン大樹海にてグラップラーバーサークウルフの群れが一夜にして消失した」
その言葉に周りからどよめきの声が響き渡る。
「陛下、それは本当なのですか?疑って居る訳では無いのですが、グラップラーバーサークウルフは危険度Sの魔物です、それが消えたというのはどういう事なのですか?」
今回の会議を開きバルサン大樹海の異変について話した陛下と呼ばれた少し長い白い髪に白い髭、サンタクロースではないかと言いたくなるようなそんな男。
名をサーディル・ハード・ペルシア。
ペルシア王国国王である。
「うむ。これは確かな情報だ。バルサン大樹海の境にあるムース辺境伯領からの情報だ」
「それなら確かな情報ですね。ムース辺境伯領はバルサン大樹海と隣接して居ますからね」
「あそこには、【種族探知】の魔道具が設置されている。バルサン大樹海を監視できるほどの距離のな。なので魔道具の故障ではない限り今回の件は本当の事となる」
【種族探知】の魔道具とは、種族を把握する為の魔道具である。これは種族が多いい【ゴルセア】ならではの魔道具といえる。
今回使用された魔道具は国宝級のモノであり膨大な距離があるバルサン大樹海の魔物登録されている種族を全て把握することが出来る。その魔道具に件の魔物が反応しなかったのだ。1体だけでも危険視される危険度Sの魔物、それが群れで行動するグラップラーバーサークウルフ、その群れが一夜にして消えたのだ、これだけで緊急会議を開く理由になる。
「現状はまだ何もわかって居ないが、グラップラーバーサークウルフの群れを一夜にして全滅させることが出来る魔物が現れた可能性がある。そしてその魔物が樹海から出ないという保証がない為、現状が分かるまで警戒をしてくれ。
それともう一つ、大賢者殿から吸血龍とダンジョンマスターが5体になったと報告があった」
人間から仙人に進化したペルシア王国の預言者にして相談人である大賢者からの報告と聞き緊張が会議室に重たい空気を産み、さらに世界の頂点に立つといわれる吸血龍と世界各地に魔物を生み出すダンジョンを造りだすダンジョンマスターが同時に現れたと聞き会議室が余計に緊迫した状態になった。
「なんてことだ、グラップラーバーサークウルフだけでもいっぱいいっぱいだというのに、吸血龍とダンジョンマスターまでとは何が起こっているのだ。まあ、吸血龍は最強の種族だが縄張りから一歩も出ない、血を吸う以外無害な種族。だが、ダンジョンマスターは姿はバラバラで見つけるのが困難であり、ダンジョンを考え無しに造るから困る」
「それで、この国の大賢者殿が言った、という事はこの国の近くに現れたという事でいいでしょうか陛下?」
「うむ。それであっておる。はぁ~よりにもよってどうして我が国なのだ」
現状維持という事で今回の会議は終了した。
この時、誰かが吸血龍がダンジョンマスターだと予想を立てれば、グラップラーバーサークウルフの群れを倒したのもダンジョンマスターだと予想を立てて居れば、これから起こるであろう出来事を防げたかもしれない。だが、それは誰にも分から無い事である。
* * * *
「知ら無い地面だ」
目を開くと俺が知っている筈のアパートの部屋の床では無く岩肌覗くごつごつした地面だった。
そういえば転生して狼ゴリラ達と戦いになったんだっけ?その後確かスライムに名前を付けて・・・・・・・その後の記憶が無いな。
《目覚めましたかマスター。不用意に力を持つ魔物に名を与えるからそういうことが起きるのですよ?気をつけてください》
「どういう事だ?」
《はぁ、やはり知りませんでしたか。魔物に名前を与える時に魔力を消費します。その魔力は魔物の力によって消費量が変わります。グラトニーエンペラースライムは危険度災害の魔物ですので一気に魔力が0になり気絶しました》
「魔力がなくなったら気を失うのか?」
《いえ、魔力の無い種族もいますので。魔力を一気に0にするという事をした時にのみ起こる現象みたいなものだと思ってください。今回は最終進化まで行った魔物だったので進化はありませんでしたが、進化先がある魔物は名前付けで進化したりしますよ》
そうなのか。これから気をつけなければな。
「それと危険度って何だ?召喚の時の高難易度って言うのもよくわからんのだが?」
《危険度とは魔物の強さを表します。下からG・F・E・D・C・B・A・S・災害とランクが上がっていきます。
高難易度というのはダンジョンマスターが召喚する時の判断基準ですね。Sランクと災害ランクが高難易度に位置します。因みに今回の敵は全てSランクです》
「成る程。じゃあ俺のランクは?」
《マスターにランクはありませんよ。魔物の強さを測るためのランクですから、ですがそうですね、強さで言えば現在はAよりのSと行ったところでしょうか?》
つまりはプルリより弱いって事だな。
あ、プルリが俺の方を見て揺れてる。可愛い。
「魔物かそうじゃ無いかってどうやって判断するんだ?俺みたいな姿な奴とかいるだろ?」
《はっきりと決まってる訳では有りません。人の言葉を話して理解しているか如何か、というだけです。理解できず話せなければ魔物認定されます。あ、赤子は除外ですよ?》
「つまり龍の魔物もいるのか?」
《います。ただ、見た目が龍族と同じなので話しかけてから攻撃するという決まりなのですが話しかける前に消されます。魔物なので待ってくれません》
「うわぁ、種族が多いいとそうなるのかー」
《まあ、見分ける方法もあるのですが、その方法がなかなか難しいのです》
「どういう方法なんだ?」
《龍族と魔物の龍は魔力で判断します。魔物はドス黒い魔力を持って居ますので。ただ、魔力を読み取れる者がそんなに居ないというのが現実です》
そうなのか?襲われない様に気をつけないとな。まあ、ダンジョンマスターとバレタラ襲われそうなのだがね?
それに魔力ってどうやって読み取るのよ?
《大体が【魔力気配】のスキルレベルが高ければ読み取れるかと思います。ですが【魔力気配】のスキルレベルを上げるには大分時間がかかりますが、上がりずらいですから》
さて、聞きたいことは一通り聞いたのでこれからの予定を立てよう。
先ずは、人が住んでいる街を探したいがこの広い樹海のどっちに向かったら街があるか分から無いからな。俺が進もうとしていた方向には無かったのは確かだ。いや、物凄い距離なのかもしれない。
それと此処のダンジョンは放置して新しい所にダンジョンを移し替えたい所だ。樹海にダンジョンは生きた心地がしない。
「ダンジョンを破棄した場合、その場所で生み出した魔物はどうなるんだ?」
破棄して魔物が消えた場合プルリが。
《ダンジョンを破棄した場合、そのダンジョンはダンジョンマスターがいない只の自動魔物呼び出し機のような場所になります。そして、破棄する前に居たダンジョンの魔物は全てダンジョンコアに収納が可能です。ですが、生まれたダンジョンが違うと言う理由で新しいダンジョンの魔物と喧嘩する場合がありますが現在グラトニーエンペラースライムのプルリしかいませんので問題ないかと。
それと、ダンジョン破棄する場合ダンジョンに1000DP程置いていく決まりです。疑似ダンジョンコアがそれを使いダンジョン運営をしますので》
「疑似ダンジョンコアってなんだよ。今初めて聞いた単語だぞ」
《ダンジョンコアを破棄した場合、そのダンジョンからダンジョンコアがなくなります。そしてダンジョンコアがなくなったダンジョンは機能が停止するのですが、この停止する場合というのがダンジョンコアが破壊された場合、ダンジョンマスターの死亡時のみですので破棄の場合はダンジョン機能が残ります。ダンジョン機能が残りそのダンジョンを自動で運営する機能が疑似ダンジョンコアです。
それと、破棄したダンジョンをダンジョンマスターはもう一度自分の物にすることが出来ます。戻す方法が1000DPですね。保険みたいなものです》
「保険が効くとかホワイトすぎるなダンジョンマスター。
では、このダンジョンを破棄して次のダンジョンを作る場所を探すことにして、この近くに街はあるか?」
《検索中。結果が出ました。
バルサン大樹海から数千キロメートルの場所にペルシア王国があります。マスターが進もうとしていた方向とは真逆の方向です。因みにマスターが進んでいた方向には【ハロワナ大海】と呼ばれる海があります。辿り着くのに数カ月程かかりますが》
数カ月って、俺そんな所に行こうとしていたのか。それにまさか結構近くに国があったとは思いもしなかった。
じゃ、先ずはペルシア王国ってところに行ってみるか。