試合開始
「さぁ、マウンド上オーガヤマモト振り被る」
眩い白熱灯に照らされたピッチャーマウンドの上に立つのは小柄な褐色の、少女。
「左足を高く上げ、踏み込み、投げた!ストライク!バッタートロールオオタ、動けない!球速は161km!」
5万人で埋まる会場が一気に沸き立つ。
少女はキャッチャーからの返球を受け取ると、帽子を右手で取り、額の汗を袖で拭う。肩までの金髪が風になびく。
「9回の裏、ツーアウト。7回から登板のオーガヤマモト、どんどん調子を上げているようです。4対3、1点リードのキングス。ベンチでは6回までを投げた先発のデーモンオガサワラが祈るような瞳でオーガヤマモトを見つめています。」
バッターが3mを超える巨体を揺すり、右バッターボックスからピッチャーに向き合う。ピッチャーが投球体勢に入ると場内が静寂に包まれる。
「2球目はどうか!」
唸る剛腕。放たれた白球はキャッチャーミットに突き刺さる。電光掲示板に表示された球速は162km。再び場内が盛り上がる。
「いよいよあと1球で勝利となるのかキングス!一矢報いるかクーパーズ!今シーズンホームラン王トロールオオタには当然強烈な一発があります!」
少女が3球目を投げる。
バッターが大木の様に太い腕を振るう。
その先端、バットが白球に直撃した。
「打ったー!サードに強烈なライナー!取った!取りました!試合終了ー!最後はキャプテン、ニンゲンアライが取りました!今シーズンのドグラリーグ優勝はキングスに決まったー!」