最終話 「西の守王」
20160520公開
≪てんちょーさん、結構恥ずかしいですね≫
≪だよね? 『女神様が遣わしてくれた神の兵』なんて言われ始めた頃なんて、恥ずかしさの余り逃げたくなったからね≫
≪でも、そう言う割には店長はノリノリだったと記憶していますよ? ハチキュウとかぶっ放して見せてましたしね≫
≪あれは『高度な戦意高揚』ってやつだから、仕方なしにやってたんだぜ≫
『中の国』の首都「ファティエル」を襲った「災害」は大きな爪痕を残した。
だが、今、この瞬間は、来襲した千頭もの『大型害獣』と『巨大害獣』をその日の内に全滅させた事と、市民の人的被害が無かった事で「ファティエル」は沸きかえっていた。
「ファティエル」には時ならぬ紙吹雪が吹き荒れていた。
≪でも、この後、掃除するの、大変だろうな≫
≪まあ、しっちゃかめっちゃかになった『外市街』を建て直す事に比べれば可愛いもんですよ≫
≪チエッチ、『シッチャカメッチャカ』って言わないよ、普通の女子中学生は・・・≫
≪え、そうなんですか?≫
≪時々、オジサン臭い時が有るよね≫
≪水戸黄●のテーマを鼻歌で歌うあずやんには言われたくない気がしないでもない今日この頃≫
≪な・・・≫
「ファティエル」を東西に貫く『東西街道』の沿道は、市民で溢れていた。
街道上を4人はそれぞれの愛馬(織田信長と石井孝義は『益獣』、鈴木千恵と岡田あずさの2人は『ラカ・クヌ・ナク』)に騎乗して沿道に繰り出している市民に手を振りながら行進をしていた。
市民のお目当ては『女神様が遣わしてくれた神の兵』の15人と『敵獣ラカ・クヌ・ナク』だった。
それまでの歴史で、『敵獣』が「ファティエル」内に入った事は無い。そして、これからも無い筈だった。
≪ラカ、手を振って上げたら?≫
≪ナンノイミガアル?≫
≪パフォーマンスよ≫
≪イミハワカラナイガ、ヤッテミル≫
一瞬後、沿道が更に湧き上がった。
≪おお、受けてる受けてる! こりゃ、負けられない! あずやん、私たちも当社比200%で手を振らなきゃ!≫
≪なによ、その当社比って・・・≫
今頃、『ラカ・クヌ・ナク』の群れは、「ファティエル」市外で食事をしている筈だ。
本来ならば『ラカ・クヌ・ナク』も一緒に居るべきだったが、ある意図の下、このパレードに引っ張り出されていた。
≪まあ、それはさておき、このどさくさに紛れてラカを売り込まないとね。牛貰えるかどうかが懸っているもんね≫
≪牛くらいくれるんじゃない? だって、ラカが居なきゃ、勝てなかったんだもん≫
≪いやいや、人間の強欲さを見くびっちゃいけないって、あずやん。利用するだけ利用して、用済みになった途端にポイされる事なんて当たり前に有るよ≫
≪うー、大人って汚い・・・≫
≪あー、ドキドキする。元気にしてるかな? 可愛いかな?≫
≪どうだろう? この前来た時は未だ産まれる前だったけど、元気にしていたけどな≫
≪問題はうちの子が怖がらないかって事だけど・・・≫
≪うーん、さすがにそればっかしは会わせて見ないと分からんな≫
≪あ、居た! ラカ! こっちこっち!≫
異星に召喚された挙句、数奇な運命で人類の救世主となった男女から生まれた赤ん坊は、初めて会う異形の獣に視線を向けると、キャッキャと笑った・・・・・
その赤ん坊の両親と共に、一緒に覗き込んだ『西の守王』と人類から呼ばれている異形の獣の表情はひどく人間臭いものだった。
その獣は自分の足元で首を伸ばして上を覗こうとしていた我が子を抱き上げて、人間の赤ん坊と対面させた。
親子2代に亘って人類を救う事になる赤ん坊と子供の獣は、お互いに興味を示すかのように同時に手を伸ばした・・・・・
最後までお読み頂き誠に有難うございます。
駆け足で書いて来ましたが、これにて本作は完結となります。




