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68話 「ラカ・クヌ・ナク集団の戦い」⑥

20160428公開

 今、私が見ている光景をスマホで録画して、動画サイトに投稿したら閲覧数はとんでもない事になるだろう。

 半径50㍍の円を描く様に、小さな恐竜もどきの群れとそれよりも大きな恐竜もどきがセットで3㍍ごとにズラッと並んで走っている。

 それよりも小さな円を描く様に体長4㍍の恐竜もどきが居て、更に内側には大き目の恐竜もどきが円を描いて走っている。

 上から見たら恐竜もどきが直径100㍍、60㍍、30㍍の円を描いている事が分かる筈だ。

 そして私はその中心で、チエッチと一緒にこの集団で一番大きな恐竜もどきに乗っている。


 どうしてこうなった?





≪てんちょーさん、反応なしです≫

≪了解。引き続き、警戒よろしく≫

≪はーい≫


 俺たちは約時速25㌔でひたすら北上を続けていた。

 最初に接触した時には『害獣』の集団は大体時速30㌔で北上していたが、その速度を維持する事は困難な筈だ。

 あれは獲物となる『益獣』が近いから速度を上げていた筈だからだ。

 だが、俺たちの襲撃を受けた時に一度速度を落としたので、『益獣』に離された現在、急ぐ必要は減っている筈だ。

 もっとも、どれだけ飢えているかにもよるだろう。

 5000頭も居る『益獣』の集団から落伍する個体を腹の足しにしたとしても、これまでの道中で発見した『益獣』の骨は予想よりも少なかった。1000頭もの集団が満腹になる量を得られているとは思えない。この島に上陸して7日が経過しているので、そろそろ空腹が我慢の限界の筈だ。

 

≪店長、待ち伏せは有ると思いますか?≫


 石井青年から確認の問い合わせが来た。


≪インターフェイスが最初に寄越した情報の中に、この島の『害獣』と『敵獣』が喰われているという内容が含まれていた。だが、ヤツラの数から考えて必要とする量からすれば焼け石に水だろう。ましてや一時は『益獣』の集団に追い付きそうだったのに俺たちの妨害でおじゃんになっている。頭数だけなら俺たちの集団も結構魅力的に感じてもおかしくない≫

≪でも、数時間で仲間の1/3をられた相手に仕掛けて来ますかね?≫

≪来るな。ヤツラもかなり焦っている筈だ。このまま『益獣』の集団を追い掛けるよりも俺たちを狙った方が分がいいと思ってもおかしくない≫

≪そうですね。言われてみれば、ヤツラは1週間もろくな食事にありつけていないんですよね。僕なら空腹でおかしくなりそうですね≫

≪俺はレンジャー課程を経験したから多少の空腹は何とかなるが、さすがに1週間喰えんのは無理だな。俺がヤツラなら一か八かで襲うな≫

≪てんちょーさん、レンジャーだったんですか?≫

≪千恵ちゃん、レンジャーを知ってるの?≫

≪テレビで見ましたけど蛇とかカエルを食べるんですよね?≫

≪まあ、食べるけど≫

≪美味しいんですか?≫

≪一応言っておくけど鶏も捌いて食べるよ。まあ、蛇もカエルも捌き方を教えてもらうし、実際に食べるけどそこそこ行けるよ≫

≪へー、そうなんですね・・・  ・・・あ、居ました。距離10㌔弱。2時と10時の方向。それぞれ50くらい・・ ん、正面に200居ます。ああ、これ、きっと『釣り野伏せ』もどきですよね? もう少し行ったら伏兵が左右に潜んでいるでしょうけど、『鬼島津』相手にその手を使いますか? 舐めるなと言いたいです≫

≪いや、俺、『鬼島津』じゃないからな≫


 俺の顔には苦笑が浮かんでいた。なんせ、俺の名前は織田信長だし・・・・・

 まあ、彼女なりの冗談だろう・・・

 とは言え、戦術級の陣形を組めるという事は、少なくとも狼レベルの集団狩猟の域を超えている。

 だが、地球で嫌になる程同族同士の殺し合いをして来た人類の域は超えていない。


≪各個撃破のチャンスだな。まずは中央の集団を蹂躙しよう。『ラカ・クヌ・ナク』、『鋒矢ほうしの陣形』にしてくれ≫


 

 陣形の変更は接触までの半分に満たない時間で完了した・・・・・

 

 

お読み頂き誠に有難うございます m(_ _)m



 新たにブックマークをして頂いた方には、執筆意欲を増やして頂いた事に感謝を m(_ _)m

 また以前にブックマーク並びに評価をして頂いた方には、これまで支えてくれた事に感謝を m(_ _)m

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