67話 「ラカ・クヌ・ナク集団の戦い」⑤
20160427公開
今日はハードな1日だった。
朝から陣形の組み立てから移動と戦う際の動きの練習をして、夕方から夜にかけて実際に戦ったんだから、我ながら頑張ったと自分を褒めて上げたい。
まあ、てんちょーが寝る前にあずやんと私をちゃんと褒めてくれたから、元は取れたからいいけど・・・
美味しかったな、ビーフジャーキー・・・
4日目の天候はまた快晴だった。
今日は『害獣』の集団を追い掛ける事になるが、ひたすら先に進まれていたら『西の国』到達前に追い付けるかは微妙なところだ。
間に合わなくても『西の国』のナジド王が守りを固めているだろうから、多少は気が楽だが。
だが、何かを仕掛けて来る予感はしている。
こっちには未成年の女の子が2人も居るので無理はさせられない。
状況を見極めながら判断するしかなかった。
テントから出て、先に目が覚めていたらしいあずさ君と千恵ちゃんに会ったので訊いてみた。
「おはよう。あずさ君、千恵ちゃん、疲れは無い?」
「おはようございます、てんちょー。若いから1晩寝れば、大丈夫ですよ。今日も頑張りますね」
千恵ちゃんがすぐに答えた。
一方、あずさ君はお腹をさすりながら答えてくれた。
「おはようございます。ちょっと食べ過ぎました」
大丈夫そうだな。
≪『ラカ・クヌ・ナク』、群れの調子はどうだ?≫
≪モンダイナイ。キズヲナオシテクレタオカゲデ、ミナゲンキダ≫
≪そうか。引き続き見張りを頼む。出発は1時間後の予定だ≫
≪ワカッタ≫
石井青年もあくびをしながらテントから出て来た。
さあて、まずは朝食からだ。
昨日絶賛されたビーフジャーキーは未だ1食分くらいは残っているが、今朝はピコマシン含有量優先で作られた軍用のビーフジャーキーを食べる事にしよう。
水を鉄鍋に出して貰い、固形のスープの素を入れる。これは俺たちがこっちに来てから開発させたものだ。密封する容器が無いので日本のそれと違い日持ちしないが、それでも10日くらいは賞味期限が有るので軍関係者には好評だ。それまではビーフジャーキーを煮て、それを出汁代わりにした味気の少ない塩味のスープばかりだったからだ。
野菜成分は、時間が有る時にせっせと作っておいた乾燥させた保存野菜だ。俗に言うフリーズドライ製法で作っている。普通ならこっちの文明度合いでは作れるものではない。
だが、俺たちならフリーズドライ製法自体を知っているので、強引に魔法で作れる。
ただ、何故か、スープそのものをフリーズドライ製法で作ると失敗する。きっとノウハウが足りないのだろう。平和になったら、もう一度挑戦してみよう。
≪待たせたな≫
≪モンダイナイ。ジンケイハドウスル?≫
≪輪形陣で行こう。追い付いたら状況に合わせて換えよう≫
≪ワカッタ≫
朝食と歯磨きが終わり、『益獣』の餌も与えて、身支度を整え終ったので出発する事にする。
昨日は上手く行き過ぎた。
今日からが本番だろう。
追い掛ける形になるので、待ち伏せをして来る可能性は有る。それに対する対策も考えておかないといけない。
確かに千恵ちゃんが居るおかげで先手を取られる危険性は少ないが、それでも万が一は有る。
最悪でも、あずさ君と千恵ちゃんの安全だけは確保しておきたい。
それは、『ラカ・クヌ・ナク』が人間の言葉を理解出来ると判明した後に直接言葉で彼女に頼んでいた。
具体的には、いざとなったら彼女たちを乗せたまま逃げろと言ってある。彼女が全速を出せば、多分だがどんな生物よりも速く走れる筈だ。
「てんちょーさん、私たちは大丈夫です。もし危なくなったらちゃんと逃げますし」
千恵ちゃんが笑顔で言った。
やっぱりバレていたか・・・・・
俺は苦笑いを浮かべた後で答えた。
「そうならない様に頑張るとするよ」
「はい、頼りにしてます」
頑張ろうか、今日も・・・
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