66話 「ラカ・クヌ・ナク集団の戦い」④
20160426公開
*今回設定の見直しを行った結果、前話の一部で修正が発生しています。
本筋には影響は有りません。
チエッチが命令する度に『軍団』はギアを上げて加速して行く。
小っちゃいのも入れたら(小さいといってもシッポまで入れたら私よりも大きいし、怖いんだよ、顔が)1300頭も居る恐竜もどきが、私の目の前で敵と軍団の様子を交互に見ている女子中学生に従っている・・・
もう、自分が何を言っているのか分からなくなりそうだ・・・・・
取敢えず、今、自分に出来る事は周囲の警戒くらいだ。
万が一、他の敵に襲われたら危険という位は分かるし・・・
(*あくまでもイメージ図なので多少のズレは有りますが、気付かないふりをして下さい)
千恵ちゃんの誘導で俺たちはドンピシャの位置で敵の隊列に突入した。
再突入による被害は皆無だった。
完全に分離させられた『大型害獣』と『巨大害獣』の後方集団は、完全に足が止まってしまった。統制されていないのか、今は欠員が出来た群れ単位で俺たちと対峙していた。
≪『ラカ・クヌ・ナク』、数の優位性を活かす為に必ず相手を上回る数で当たれ。決して無理はさせるな≫
≪ワカッタ≫
≪士長、でかいのだけを狙おう≫
≪了解です≫
≪千恵ちゃんとあずさ君は自分の身の安全だけを守る事に専念してくれ≫
≪りょーかいです、てんちょーさん≫
≪あ、はい、そうします≫
≪それと、千恵ちゃん、悪いが離れて行った残りの集団が戻って来ないかも時々でいいから確認してくれないか?≫
≪もちろんです。ちなみに完全に切り捨てた様ですね。見向きもせずに離れて行きます≫
≪分かった≫
俺と石井青年は『巨大敵獣』だけを攻撃する事に専念した。
ヤツらは巨体だから身体が露出して射界が取り易いし、跳弾に注意すれば『敵獣』たちへの被害も少なくなる。
掃討し尽くしたのは2時間後だった。
最後の方は完全に陽が落ち、星明りの下、恐竜もどき同士が闘っている光景は何とも言えない非現実感に溢れていた。
もっとも、魔法で視界を明るく出来なければ、恐ろしげな唸り声や威嚇する様な咆哮、身体同士がぶつかり合う音が辺り一面から聞えて来るのだから、並みの神経では耐えられないだろう。
≪『ラカ・クヌ・ナク』、群れをまとめてくれ。一旦、ここを離れよう≫
≪ドコニムカウ≫
≪あの高台にしよう。万が一ヤツラが戻って来ても発見が早くなる≫
≪ワカッタ≫
≪千恵ちゃん、あずさ君、もう一頑張りだ≫
≪りょーかいです≫
≪はい≫
千恵ちゃんはまだ元気が残っているが、あずさ君は限界に近そうだった。
まあ、地球に居た頃に、どこかの秘境で恐竜が集団で争うような現場に居合わせる経験に見舞われる女子高生が存在するか? と訊かれたら、絶対に居ないと答えただろう。
それを考えたら、よく耐えてくれていると思う。
掃討戦で失った味方は、『標準敵獣』4頭に『大型敵獣』1頭だった。
意外な事に、『害獣』組に損失は無い。
俺も時々しか確認出来ていないが、ちらっと見えた時の戦い方が洗練されて来ていた気がする。あくまでも連携を崩さずに、群れからはぐれてしまった敵の個体を数個分隊で確実に仕留めていた。
高台に辿り着いた後、俺たち人間全員で傷付いた『敵獣』と『害獣』の治療をして回った。
本当を言えば、万が一の敵襲に備えてピコマシンの消耗を避けたがったが、今日の戦果はコイツらが頑張ってくれたからだ。ご褒美は必要だろう。
それに、前回の治療の時に気付いたが、コイツらは治療を受ける時に何とも言えない表情を浮かべるし、気持ちがいいのか、喉から猫みたいなゴロゴロという声を出す。意外なギャップに少しは親近感を抱いてもいるから億劫でも無い。
いや、決して可愛いとは思わんが・・・・・
火を起こせないので、夕食は補給の際に貰ったビーフジャーキーをそのまま齧る事にした。
「なに、これ? めっちゃ美味いんですけど!」
第一声はあずさ君だった。
さっきまで疲れた顔をしていたのが、一気に笑顔になっている。
「本当だ。今まで食べた中で1番美味しいですね」
石井青年も驚いた様な顔でマジマジと手にしたビーフジャーキーを眺めている。
俺も一口齧ってみた。思ったよりも柔らかくて、肉汁を上手く閉じ込めているのかジューシーだ。しかも味はコクが有って旨い。
思わず齧り取った断面をガン見してしまった。驚いた事に微かだがサシが入っている。
サシなんてこっちに来てから初めて見た。もしかして和牛の様に丁寧に育てられた牛が居るのだろうか?
次の一口はもう少し慎重に味わう事にする。
うん、風味も申し分ない。脂っこさも許容範囲内だ。
香辛料はややきつめだが、これくらいの方が好みだ。それに柑橘系に近い香辛料が爽やかさを引き出している。
スモークもチップに拘ったのか、いい感じで香りが付いている。
うちの店でプレミアムビーフジャーキーとして扱いたいくらいだ。
そう言えば、このビーフジャーキーは軍が支給している物とは違っていた。
補給隊のキフラ中隊長が実家で作っている物を譲ってくれた一品だった。
「これは補給隊のキフラ中隊長の実家で作っているらしい。今度会ったら売って貰えるか訊いてみようかな」
「そうですね。このビーフジャーキーなら、有り金全てをはたいてでも欲しいですね」
「あ、私も!」
「キンキンに冷えた●ビスビールと一緒に楽しめたら最高だろうな」
「店長、それは言いっこなしですよ。想像しただけでよだれが落ちそうです」
意外と石井青年はグルメなのかも知れない。
会話に加わっていない人物が1人居たが、彼女は黙々と両手で持ったビーフジャーキーに齧りついていた。
何となくリスを思い出した事は千恵ちゃんには内緒だ・・・
お読み頂き誠に有難うございます m(_ _)m
新たにブックマークをして頂いた方には、執筆意欲を増やして頂いた事に感謝を m(_ _)m
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P.S.
記念SSは無理でした。
次回のお休みに公開します。




