7話 「インターフェイス」
20160222公開
地球に帰れない・・・
インターフェイスの女性の一言は、俺たち全員に衝撃を与えた。
突如、1人の女性が金切声を上げた。
いつも夕方に中学生の娘さんと買い物に来る鈴木さんだ。
その娘さんは母親の左手に抱き付いている。
あ・・・ さっきはカっとしていたので気付かなかったが、最初に助けた子が鈴木さんの娘さんだった・・・
「勝手に連れて来て、帰さないって、どういう事よ!」
その声に賛同の声が続く。
確かにそう言いたくなる気持ちは分かるし、俺も店長と云う立場が無ければ言いたい。
だが、俺が考えるべきは違う事だった。
「佐々木副店長、悪いが、アレとの交渉というか要求というか非難というか、みんなをうまく誘導していてくれ。俺は別の事に没頭したい」
「え、構いませんが、店長は何を?」
「最悪の事態でも、生きて行く為には最低限度の糧が要る。なんとか引き出したい」
「分かりましたが、僕でまとまるのでしょうか?」
まあ、普通に考えて無理だと思う。俺にも正直なところ完全にこなす自信が無い。
だが、ここでみんなの感情を一旦は吐き出さなければ、精神的なダメージが蓄積してしまって、後々反動がやって来る。
それに、あのインターフェイスはどれだけ罵られようが、痛くもかゆくも無いだろうから、ストレスを発散させるにはちょうどいい。
「正直に言うと無理だ。だが、みんなに不安や怒りを1度吐き出させる必要が有る。別に煽ってもいいから、全員から言葉を引き出してくれ。こっちにも非難が来るし、責任を取れって言われる筈だ。その場合はばあ、社長を使ってくれて構わん」
「店長、前から思っていましたが、よくもまあ、そんな事に気が回りますね」
「うーん、店長だからな」
まあ、店長と云う役職は、管理業務以外にも、従業員のやる気を引き出して、それを成績に結び付けるのも仕事の1つだからな。空気も読めないといけないし、その空気を誘導する事も業務の1つだ。
「まあ、貧乏くじだが、頼む」
「分かりました」
佐々木副店長に面倒な事を押し付けて、俺は俺の仕事に取り掛かる。
「おい、こっちの声は聞こえているんだろ? 姿を現さなくてもいいから、質問に答えてくれ」
「なんでしょうか?」
やはり思った通りだ。
神様じみた能力を持つ機械ならば、並列で仕事をこなすなど当たり前だと睨んだ通りだった。
「この後、俺たちが生きて行けるのか? その場合、どの様な状況が考えられるか? この2点を知りたい」
「今回の採集サンプルの今後の生存については、人間同士での交渉となる為に私たちは不干渉となります。ただし、この地の人間の知識をお望みでしたらインストールしますが?」
スマホ? まるで、俺の脳みそをスマホみたいに扱うかのような言葉に何故か苦笑する。
人間の脳以外ではスマホが最大の情報源だったのだろう。
こいつらに掛かれば、原子単位で解析されているだろうだから、そんな言葉も出て来るのだろう。
「ああ、やってくれ」
インストールは一瞬で終わった。
あ、これ、アカンヤツだ・・・・・・
人類はあと数年から10年くらいで絶滅するところまで追い詰められていた・・・・・
お読み頂き、誠に有難う御座います m(_ _)m