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61話 「補給」

20160420公開

 思わずやってしまったが、鈴木千恵は後悔をしていなかった。

 どうせ、実際に侵略して来た『害獣』の群れと接触しないと、具体的な作戦など立てられない・・・筈。

 ゲーム絡みで興味を持って色々調べた武将が(ビジュアルがおじい様なのに心惹かれたのは謎だが)、偶々『鬼島津』と呼ばれていた島津義弘だったからあんな会話になったが、てんちょーに喝を入れられたから目的は達成した。

 それにてんちょーが包容力を持っている事も分かったのだから、成果は十分だった。




 

 俺たちの目的地はもうすぐだった。

 俺はキファ砦に近い場所に牛肉を持って来てくれる様に頼んでいた。あそこは『西の国』と『中の国』が共同で管理しているかなり大きな砦だ。共同管理になっている理由は『中の国』の軍の砦運用の実地訓練を兼ねているからだ。

 それに、この辺りの砦の物資の備蓄倉庫も兼ねているから『中の国』からの補給も多い。だから1番早い牛肉の提供が可能だと踏んだので指定していた。

 俺はふと後ろを振り返った。

 千恵ちゃんとあずさ君を乗せた「ラカ・クヌ・ナク」が5㍍後ろに続いている。

 色々と検討した結果、俺と石井青年が自由に動けた方が良い事と、彼女たちの安全を考えて、俺たち以外では一番戦闘力の有る彼女に乗せていた。

 その事を提案した時に何故か2人に恨めしそうな視線を送られたが、渋々ながら従ってくれた。

 もっとも、インターフェイス経由の会話は却って増えていた。

 日本では休みの日には何をしていたのか? と千恵ちゃんに訊かれたので店の売上傾向をPOS上のデータから割り出す作業をしていたな、と答えたら全員から突っ込まれてしまった。

 言い訳を考えていたら、千恵ちゃんが唐突に報告をして来た。


≪てんちょーさん、前方10㌔ちょっとに人間の集団を発見。数は200人くらいです≫

≪うん、ありがとう。先行して確認して来るので、士長、しばらく頼む≫

≪了解です≫


 『益獣ポニー』の速力を上げて、千恵ちゃんの指示通りにしばらく走ると前方にテントの生地が見えた。

 1個中隊が15㍍ほどの方陣を組んでいて、テントはその中に建てられようとしていた。

 その横には多数の大きな木箱が積まれていた。


「悪い、待たせてしまったかな?」

「いえ、我々も先程到着して、テントを建てようとしていたところです。ノブナガ殿、お一人ですか?」

「いや、集合場所の確認がてら先行して来た。もう10分もしないうちに本隊が到着する」


 そう言いながら、俺は『益獣ポニー』から降りた。

 先程言葉を交わした士官が進み出て来て、『中の国』式の敬礼をした。俺は陸自式の答礼をした。


「申し遅れました。『中の国』第2集団第2大隊第1中隊の隊長をしているキフラです。以後、お見知りおきを。指定された牛肉が20頭分と、念の為に『益獣ポーク』も20頭分持って来ています」

「織田信長だ。『益獣ポーク』20頭分の追加は助かる。なんせ、大きな群れを併合したんで、狩りをしながら来たんだ。念の為に言っておくけど、これから現れる『敵獣』も『害獣』も敵では無い。ちゃんと話は付けてある」

「命令に付属する情報ではその様になっていましたが、未だに信じられません。いえ、別に疑っている訳では無いのですが・・・」

「まあ、そりゃあ、いきなり『敵獣』の味方が出来ました、って言われても信じられんだろうな。でも、ボスはなかなか話の分かるヤツだったぞ」

「話が分かる『敵獣』ですか・・・ 」


≪てんちょーさん、もうすぐ到着しますよ≫

≪了解≫


「もう着くそうだ」

「了解致しました。一応念の為に警戒レベルを上げますが、よろしいでしょうか?」

「うん、それ位慎重な方が戦場では生き延びられる。構わないよ」


 キフラ中隊長は振り返ると、大きな声で最大限の警戒を為すように命令を下した。

 その後で俺の横まで来ると、俺がやって来た方向に目を凝らし始めた。

 「視力強化」の魔法を使っている俺よりも遅れて、接近して来る集団に気付いた彼は息を飲んだ。

 『益獣ポニー』に乗った石井青年と「ラカ・クヌ・ナク」が先頭でゆっくりとした速度で近付いて来ている。

 「ラカ・クヌ・ナク」の上で千恵ちゃんが立ち上がって手を振っていた。

 その後方には、『敵獣』の大集団が5列の縦隊を組んでいた。


「自分の目で見ていながら信じられません。先頭の、少女が乗っている『敵獣』はもしかしたらかなり大きくありませんか? 隣の『益獣ポニー』に引けを取っていません・・・」

「あれが群れのボスの「ラカ・クヌ・ナク」だ。人間の言葉も喋れるぞ」

「そんな・・・ 信じられません」


 まあ、そりゃそうだ。

 『敵獣』はあくまでもも『けもの』であり、多少は連携するにしても人間の言葉を話せるほどの知能を持たないというのが常識だった。

 10分後、実際に「ラカ・クヌ・ナク」と言葉を交わした時のキフラ中隊長の表情は見物みものだった。

 また、どの様な態度を取っていいのか決めかねたのか、言葉もしどろもどろだった。

 おかげで、心配そうな表情の(なんとなくそう思うというだけだ。俺は●ツゴロウ先生では無い)「ラカ・クヌ・ナク」に、気遣われていた。

 彼の部下はもっと悲惨だった。

 なんせ、見た事も聞いた事も無いような大集団の『敵獣』の群れが目の前に居るのだ。

 これでいつも通りの態度を保てる方がおかしい。


 牛肉と『益獣ポーク』の肉は、全頭に公平に分けられた。

 食事の後で、千恵ちゃんとあずさ君が大量の水をシャワー用のタンクに創生し、順番に飲ましていった。

 お腹が満たされた後で、俺と石井青年が怪我をしている『敵獣』と『害獣』に治療魔法『細胞活性』を片っ端から掛けて行った。



 接触から2時間後には、幸せそうな表情らしきものを顔に貼り付けて『お昼寝』をしている猛獣の集団が居た。



 その姿を見詰めているキフラ中隊長の表情は、またしても見物みものだった・・・

 


お読み頂き誠に有難うございます m(_ _)m



  新たにブックマークをして頂いた方には、執筆意欲を増やして頂いた事に感謝を m(_ _)m

 また以前にブックマーク並びに評価をして頂いた方には、これまで支えてくれた事に感謝を m(_ _)m

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