36話 「再降臨」
20160318公開
人間は予想も出来ず、しかもすぐには理解が出来ない事態に直面した時に、どの様なリアクションを取るのだろうか?
その答えの1つが、『西の国』のナジド王と『中の国』の幸女王の会談中に起きた。
≪珍しいな。自ら姿を現すとは・・・≫
≪採集サンプルMale-3の手法をシミュレーションした結果、このタイミングで姿を現す事がより大きな効果を得られると判断しました≫
≪確かに効果的ではあるな。まあ、度々姿を現すと“有難味”が減るから、次は『北の国』を交えた会談の時かな?≫
≪採集サンプルMale-3の意見を参考にシミュレーション実施。結果を聞きますか?≫
≪いや、止めとく≫
会談場は光が満ち溢れていた。
インターフェイスの登場の仕方は前回の時よりも更に派手になっていた。
眩しくて目が見えなくなる様な光ではなく、明るいが優しい感じになる様に微妙にスクリーンを掛けた感じになっていた。それが益々彼女の神々しさを醸し出していた。
それに微妙にウエディングドレスもどきが風に仰がれているかの様に揺らいでいる。
突然の女神の登場に、会場に居る人間は呆けた。頭が真っ白になったのだ。
最初に反応したのは、最初の会談にも参加していた人々だった。
ナジド王も幸女王もすぐに参拝時の儀礼に沿って片膝を付いて、頭を垂れた。ほんの一瞬だけ遅れて『中の国』の官僚団が続いた。
数秒後にやっと目の前で起きている事を認識出来たのか、『西の国』の官僚団がギクシャクとした動作で片膝を付いて、頭を垂れた。
『我が連れて来し子らよ。顔を上げよ』
全員が顔を上げる。
中には感動の余り、涙を浮かべている者も居た。
『ナジド王よ、汝の要請が無ければ、我は新たな召喚を行う事は叶わなかった。そして、幸王よ、汝が召喚を拒む事は理解するが、我自ら力を貸せぬ故に召喚の要請を無視する事は出来なんだ。許せ』
幸女王は小さく答えた。
「勿体無きお言葉」
インターフェイスは俺たちが居る方を向き、更に言葉を継いだ。
『召喚されし者も許せ』
俺もショーに付き合う。
「他の皆様の事を考えると全員が納得をした訳ではないでしょうが、私個人としては、妹の危機に力を貸せる機会を頂いたと考えておりますので構いません」
後ろの方で複数の人が頷いている気配を感じた。わざわざここまで来る事を志望しただけあって、その辺りは割り切っている人しか居ないから当然の反応だろう。
インターフェイスはゆっくりと周囲を見渡した。
『汝らの居らぬこの世界は我の望むところでは無い。また、この世界に元から居る生物も全て絶えた世界を望むものでも無い。苦労を掛けるが、我は常に見守っておる故に汝らの全てを賭けよ。また何時相見える日が来らん事を』
そう言って、インターフェイスは前回同様に消えて行った。
後に残されたのは、呆然とした表情を浮かべる人々と、決意を秘めた表情を浮かべる人々だった。
そして、俺自身は全く別の表情だった。
≪上出来だったぞ≫
≪どういたしまして≫
勘違いだと思うが、脳に直接響くインターフェイスの声に『照れ』を感じたのだ。
だから、俺の顔に浮かんでいるのは微笑みだった。
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