29話
20160309公開
≪魔法で軽石を創る事は可能か?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。実際に手にした事が有れば類似品の作成は可能です≫
≪俺が創った後で、他の召喚者がその軽石を手にした事で創る事は可能か?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。可能です≫
≪発泡スチロールを創る事は可能か?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。実際に手にした事が有れば類似品の作成は可能です≫
俺は長い吐息を吐いた。
余りにも、この『西の国』の人々が一生懸命に生きている事を実感した俺は、一種の贖罪の様な計画を実行に移せるのかを確認した。
王都に戻った俺たちを迎えたのは、圧倒的な熱狂だった。
これまで、集団と化した『害獣』や『敵獣』に苦杯を舐め続けたところに、久々に完璧と言ってもいい勝利が齎されたのだ。
しかも、国民に人気の高いナジド王自身が迎撃に参加した攻防戦だ。
その知らせを聞いた国民が熱狂するのも仕方が無かった。
「ナジド王よ、時間を取って貰えないか?」
やっと話し掛けられる様になったのは、王城に入って1時間後だった。
「構わぬが、それなりの時間となると戦勝記念を兼ねた昼食会が終わってからになるぞ」
「それで構わん。だが、先に言っておく。俺たちと女神様を余り関連付けない様にしてくれ」
「それは無理というものであろう。『中の国』でお主が女神様に連れて来られたと言った上に、更に女神様と交渉したと断言し、あまつさえ『神の御業』を使ったではないか? しかも直後に直接、女神様ご自身がそのお姿をお現わしになったのだ。その場に居た誰もが無関係と思うまい。ならば、最大限利用させて貰うのが王としての務めだ」
しまった・・・
あの場を自分の思う方向に持って行く為にした事が自分の首を絞めていた。
そうしなければ、みんなを守れなかったとは言え、やり過ぎた・・・
俺の顔が、まさしく苦虫を噛み潰した様な顔になっていたのだろう。
「ノブナガ殿、諦めよ。それに例の計画を進める際に、お主に後ろ盾が有るか無しかで発言力に大きな違いが出る。開き直って使えるものは使うべきではないか?」
「納得は出来んが理解はした。だが、俺は『女神様の使い』という称号を否定するぞ」
「お主が否定しても民は飛び付くぞ。なんせ『希望』に飢えておるからのう」
ナジド王の言葉は、昼食会で現実のものになった。
参加した貴族やら行政府の重鎮やらが俺たちの所に来ては挨拶をして行くのだ。
いつの間にか俺たちは『女神様が遣わしてくれた神の兵』という噂が広まっていたのだ。
砦に居る間に攻防戦の結果が届いていたとしても、インターネットやテレビやラジオも無いのに、異常なほどの拡散速度だった。
「士長、どうやら俺は地雷を踏んだようだ」
やっと昼食会を抜け出た後の控室で俺は力なく呟いた。
「それに巻き込んだ責任は取る積りだが・・・」
「店長、別に気にする必要は無いですよ」
「だが、仕方が無かったとはいえ、俺が突っ走ったせいだからな」
「店長の説明も対処もあれ以上は望めなかったですよ。それはこの国に来て一層実感しました」
「どういう事だ?」
「この国はもう意地だけで踏み止まっている状態です。しかも限界が近い事も薄々分かっています。店長の分析通り、崩壊一歩手前です。そこに希望の光が差し込んで来たんです。人間の姿を取りながらも、『敵獣』を圧倒出来る力を持った『英雄』が現れた。もしかすれば勝てるのではないか? と縋り付くのに時間は掛からなかったでしょう」
俺は石井青年の顔を見詰めていた。
「それに富田さんも言ったでしょ? お互いをカバーするのがバディの役目だと。店長が落ち込んでいればそれをカバーするのが自分の役目です」
この青年は出来た人間だった。
部下に1人居れば、大助かりの人材だった。
俺はしばらくしてから言葉を返した。
「俺がこっちに来てからした中で、1番正しい判断は間違いなく士長の同行を許した事だな。いや、それも2人に迫られてだから、積極的な判断では無いのだが、とにかくありがとう。これからもよろしくお願いする」
「喜んでお供しますよ」
お読み頂き誠に有難うございます m(_ _)m




