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27話

20160307公開

 ナジド王が乗る馬車に続いて砦の門を潜ると、すぐに左折した。

 更に右にぐるりと大きく回頭する。

 少なくともこの砦は実戦に堪えうるレベルの戦訓を取り入れていると見て良かった。

 今度は左に曲がってしばらくすると馬車は停まった。

 外から「失礼します」と声が掛けられ、ドアが開いた。


「オダ様、イシイ様、陛下及びグミ隊長がお待ちです」


 馬車の外から声を掛けられ、馬車を降りた。

 途端にどよめきが起こった。

 強化されて分解能が上がった聴覚にそれぞれの言葉が飛び込んで来る。

 まあ、大体の言葉は「本当に普通の人間だぞ」という意味合いだった。

 その他、「神器を持っていないな」やら「女神様に近い方らしい」とかが多い。

 ナジド王を迎えて跪いている武人がこの砦の責任者なのだろう。

 ナジド王が近付く俺たちに気付いたのか、こちらを振り返った。


「ノブナガ殿、この砦の守将、グミ中隊長だ。お主たちに是非ともお礼を述べたいと言ってる」

「それほど大したことはしてないが?」


 その時、グミと紹介された武人がガバっとでも形容出来る様な勢いで顔を上げた。


「何を仰います! 我々は城壁の上から一部始終を見ておりましたぞ! 見た事も無い道具で、確実に『害獣』を倒し始めたと思ったら、『敵獣』を2頭同時に倒した挙句に、更には『大型敵獣』さえも倒した事を『大した事をしてない』と言われては、我ら軍人は戦果を上げていない無駄飯食いと同じです」


 おおっと、いきなり熱く語られてしまった。


「そうだな、前言を撤回しよう」

「有り難きお言葉。それで陛下よりお伺いしたのですが、朝食をご所望とか? 早速用意させますので、しばしお待ち下さい」

「ああ、世話になる」

「ノブナガ殿、われは『大型敵獣』との戦いを見ていないのだが、詳しく聞かせてくれんか?」

「ならば、食事の用意が出来るまで別室を用意しますので、そこをお使い下さい、陛下」

「ふむ、そうするとしよう」


 別室にはグミ隊長も同席した。

 彼が語る俺たち2人の活躍は、『なに、その異世界無双?』とでも言いたくなるものだった。


「『大型敵獣』がどの様に背後に回ったのかは、我々にも分からない程に巧妙でした。気付いた時にはノブナガ殿の背後に現れた感じでございました」

「店長、『大型敵獣』は、もしかすると背景に合わせて肌の色を変えられるのかも知れませんね。例えば森の中なら深緑に、土の土地なら茶色に変化するだけで効果は有るでしょうし」

「たしかに体毛の色は『敵獣』よりも濃い灰色だったな。次に遭う時に気を付けよう」

「『地球』には、その様な習性を持つ動物が居るのですか?」

「ああ。それも割と多く」

「なるほど。そうそう、それで気付いた我々が息を止めた瞬間には、ノブナガ殿が前方に飛び込んで腕の一撃を間一髪で直撃を免れたのですぞ、陛下。距離を取った途端に地面がボコボコと沈んだのですが、魔方陣は発現しておりませなんだが、あれは魔法では無いのでしょうか?」

「魔法だ。でも新しい魔法だから、多分魔法陣が出なかったんだろう。こちら側の人間にも使えるようになる頃には魔方陣も出来てるかもしれないな」

「なるほど、やはり魔法でしたか。使い様によっては役立ちそうな魔法ですな」

「だが、『魔素』を思ったよりも使うのが問題だ」


 ピコマシンの事をこちらの世界では『魔素』と呼んでいた。『魔力』では無い当たり、本能的に理解しているのかもしれない。


「そうですか・・ ですが、『大型敵獣』はそれさえも突破してノブナガ殿に迫って右腕を横薙ぎに叩き込んだのでございます。そして、ノブナガ殿は敢えて自ら突っ込んで、その腕を停めて見せたのでございます」

「いや、さすがにそれはおかしいのではないか?」

「陛下、自分の目で見たわたくしも、信じられませんでした。ですが、本当の事でございます」

まことか、ノブナガ殿?」

「腰が入っていなかったからな。まあ、それでも、これまで受け止められた事が無い筈だから、動揺でもしてくれれば一気にこっちの流れに出来ると踏んだんだ」

「まさしくその通りでございましたぞ、陛下。確かに一瞬ですが『大型敵獣』の動きが止まりました。その一瞬を突いて、目にも止まらぬ速さで突きを一閃したかと思えば、次は振るわれた左手を上から神器を叩き付けて、完全に死に体にしてしまいました。あの動き、まさに溜息が出るような見事さでございました」

「うーむ、われも見てみたかったな」

「そのお気持ち、お察しします。ですが、その後が本当の意味での凄まじき攻撃でございました。一瞬で魔方陣が発現したと思ったら、同時に10もの『炎弾』が出現し、『大型敵獣』を貫いたのでございます。もう、開いた口が塞がらないとは、あの時の事を指すのでしょう」

「待て! 炎弾は『敵獣』には効かない筈だ。いや、その前に10個もの『炎弾』を発現させた方に突っ込んだ方が良いのか? はたまた一瞬で魔法を発動させた事を突っ込むべきか?」


 遣り合っている最中は冷静だった気もするが、むしろ今の方が居心地が悪いのは何故なんだろう・・・


 

お読み頂き誠に有難うございます m(_ _)m

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