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23話

20160303公開 1/2



20160303一部設定を修正

 荒廃した空気は、ナジド王が帰還した事に気付いた国民が歓声を上げる事で霧散して行った。

 俺は初めて、カリスマというものの力を知った気がした。

 ナジド王は馬車から『益獣』へ乗り換えた。

 歓声が更に大きくなった。

 ナジド王は自分に歓声を上げる国民に軽く手を振っている。その姿は立派に“国王”をしていた。


「やはりさまになっていますね。この歓声からすると国民にとっては希望なのでしょうね」

「良かった、殺さなくて」


 返事はプッという噴き出した声だった。

 いや、冗談じゃ無くて、ピコマシンが力場を展開していなければ、確実に俺の拳と引き換えに死んでいたんだが・・・


「でも考えれば、店長と自分と云う、えーと、なんと言っていましたっけ、チートでしたっけ? この世界の常識から外れた存在を連れ帰って来れたんですから、今回のナジド王の『中の国』訪問は無駄では無かったと思いますよ」

「確かに」


 ナジド王の一行はそのまま街を通り過ぎた。

 その後も幾つもの街を同じ様な事を繰り返しながら通り過ぎ、王都に着いた頃には夕闇が迫っていた。

 王城に辿り着いた途端に、周囲が慌ただしくなった。

 聞えて来る報告や会話などから、最前線よりも奥に在る砦の1つがかなり強い攻勢を受けていて、増援を要請して来たが、増援を送るかどうかで揉めているところだった。

 馬車を降りたナジド王に、将軍に見える50歳くらいの立派な鎧を着た武人が近付いた。


「動かせる中隊はどの隊だ?」

「341を直ぐに出せます。ですが、残りは数日掛かります」

「よし、それに近衛も加えろ。われも出る」

「王よ、さすがにそれはお止め下さいませ。王は今、帰着したばかり。疲労を抜いてからでないと危険です」

「構わぬ。それに・・・」


 ナジド王はこっちを見た。

 そして、ニヤっと笑った後で、出陣の取りやめを進言した部下に向かって言い切った。


「客人にわれが本気で戦うところを見せてやりたいのだ。こんなにたぎっている事は久しくなかったぞ」


 そう言うと、臣下達を後ろに引き連れて、先程降りたばかりの馬車に乗り込んだ。


「陣頭指揮っていう奴ですか。こりゃ、今夜は寝れそうにありませんね」

「出発と同時に寝ておこう」


≪周囲に異常が発生すれば起こしてくれるか?≫

≪採集サンプルMale-3の要請を確認。可能です≫

≪では、頼む≫


 俺たちはガタゴトと揺れる馬車の中でさっさと寝た。

 初めての実戦なのだが、不思議と恐怖を感じなかった。

 目覚めたのは体感で5時間ほどした頃だった。

 馬車はいつの間にか停まっていた。

 

 星明りを頼りに小高い丘の上から見た砦の周囲は多数の『害獣』で覆われていた。

 新たにインストールした暗視能力を使って見直したが、『敵獣』の割合は1割以下というところだろうか?


≪『害獣』と『敵獣』の正確な数は分かるか?≫

≪採集サンプルMale-3の要請を確認。視界外も含め『害獣』267頭、『敵獣』20頭です≫


 へえ、頭が単位なんだ・・・ と云うどうでもいいことを思ったが、すぐに思考を切り替える。

 ナジド王の姿を探す。

 幕僚らしき人間と打ち合わせをしている最中だった。

 邪魔をして悪いと思いながら、そっちに向かう。


「おお、信長殿、わざわざ悪いな。こっちの戦力が300ほどなので、どうするかを協議しておった。何か意見は有るか?」


 そのナジド王の言葉に周囲がざわめく。

 王が見せた配慮に驚いたのだろう。

 まあ、俺たちの装備は動き易さを重視した軽装なものだったので、強そうにも偉そうにも見えないから仕方ない。


「ナジド王よ、敵の数は『害獣』が267、『敵獣』が20らしい。良ければ露払いを務めるが?」


 あ、周囲の視線が痛い・・・

 これまでナジド王にそんな口をきいた人物は居なかったのだろう。


「ほう、いきなり最前線に立つか・・・ 任せた」

「我々が出発してから1時間後に出発してくれ。突破口を開いておく」


 そう言って、自衛隊の敬礼をした。

 一瞬ビックリした様な顔をしたが、ナジド王も胸に右手を水平に構えるこちらの敬礼らしき動作をした。


「さて、ああは言ったが、どれだけ出来るか未知数だな。危険と思ったら言って貰えるかい?」

「了解です。ま、乱戦に放り込まれるよりは、自分達で主導権を握れる方が良いという判断ですよね?」

「ああ。それに、こっちは流れ弾が発生し易いから、味方の被害を心配しなくていい分、やり易いしね。基本的にストーキング&キルで行こう。少なくとも100は削りたい」


 簡単なハンドサインを決めて、侵入を開始した。

 石井青年はかなり兵士としての素質が有る事がすぐに分かった。

 レンジャー徽章持ちの俺によく喰らい付いて来ている。

 お互いをカバーしながら、『害獣』の後方から接近して行った。


『前方、敵、5、俺、攻撃、貴官、カバー』


 遂に外縁部に到達した。ここまで15分ほどしか掛かっていない。

 運用上問題が有ったので、実銃通りに可動出来る様にしてもらったセレクターを『タ』に合わせて、これも実銃通りにしてもらった引金をゆっくりと引く。

 発砲炎も発砲音もしないが、確実に1発の小銃弾もどきが発射された。

 気分の問題も有って、発砲の衝撃も再現して貰っているので、右肩に反動が来る。

 小銃弾もどきは『害獣』の後頭部に吸い込まれて、そのまま顔面から血を吹き出させながら、前方に抜けた。その頃には俺は次の標的に次弾を叩き込んでいた。

 結局、5頭の『害獣』を無力化するのに要した時間は3秒程だった。特に最後の2頭は発砲音がしていたら連射音にしか聞こえなかっただろう程に一瞬の内に済ませていた。


 こうして、俺たちの蹂躙が始まった。


お読み頂き誠に有難うございます m(_ _)m

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