22話
20160302公開 2/2
魔法を習った翌日、俺と石井青年はナジド王に同行して『西の国』に行く事にした。
元々、自国がじり貧に陥っている現状を打破出来る『力』を求めて無茶をしたくらいだ。余り国許を空けたくないという気持ちも当然だ。
移動は馬車だった。
滅んだと推測される人類文明(まあ、少なくとも西暦2016年より数万年後の話なので実感は湧かない)は絶滅した動物を含め、かなり詳細なDNAマップを蓄積していた。その中でも人類に貢献してくれた牛と馬と鶏は最優先で改良されて、この惑星に生存している。
もっとも、馬車群の周りを警護している兵士たちが騎乗している動物は馬では無かった。
『益獣』と呼ばれる、人類に使わられるこの惑星土着の生物の1種であった。
『害獣』や『敵獣』とは遺伝的にはつながっているのだが、草食に近い雑食の為か、どこか可愛げがある。体高が2㍍ほど、体長4㍍強と大きいのだが、どこか馬に似た愛嬌がある顔をしている。
目が4つ在る点は一緒だが、『害獣』など違い、聴覚も発達しており、ウサギの耳に似た大きな耳をしきりに動かしていた。
「やはり『炎弾』は速度が問題ですね。あの速度では的に当てる事は至難の業でしょう。威嚇や牽制が主な用途と云う事もそれを裏付けています」
馬車に揺られるだけで暇だった俺と石井青年は、昨日習った魔法の改良点を話し合っていた。
≪これまでの魔法のカスタマイズは可能か?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。肯定です≫
≪では、どうしてこっち側の人類は改良なり進化なりをさせなかったんだ?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。魔法自体が神からの贈り物と捉えている為に、改良を加える事は禁忌に触れるという告知が行われた歴史が有ります≫
≪律儀と云うか、何と云うか・・・。ならば、俺たちが改良した魔法はコッチの人間でも使えるようになるのか?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。一部を除き、可能です≫
≪その一部とは?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。経験していないモノは使えません。1例を上げると、『マッチ』という道具はこちらには存在しません。故に再現可能な炎の温度はこれまで通りです≫
≪一応、筋は通っているのかな。分かった≫
俺は今の会話を石井青年に伝えた。
実は、俺がインターフェイスと常にやり取りしていた事を知っている人間は石井青年だけだった。
これから長い付き合いになるだろうし、お互いに命を預け合うのだから、これくらいは教えておく方が信頼感の醸成にも繋がるからだ。
「なるほど。確かに有り得る話ですね。となれば『炎弾』を『小弓』の速度で撃てるかを、次の休憩時に
試してみましょう」
結論としては可能だった。
消費される体内のピコマシンは7割くらい増えるが、それでも実用性は一気に上がった。
問題は、ただでさえ消費されるピコマシンの数が多い『炎弾』を改良する事で、『大弓』の2倍以上もピコマシンを失ってしまう事だった。
こっちの平均的な“魔法兵”であれば『大弓』なら120発以上打てるのに、改良型の『炎弾』では60発を切る計算だ。
だが、俺たちは遥かに多いピコマシンを抱えているし、温度のアドバンテージも有る。実際の所、200発を軽く超える数を撃てるキャパは有る。
実際に『害獣』と『敵獣』に撃って威力とコストパフォーマンスを摺合せしてから、どちらをみんなにメインで使ってもらうのかを決めよう。
もっとも、俺と石井青年は基本的に89式小銃もどきをメインに使う事は確定している。
なにせ、『小弓』並みのピコマシン消費なのだ。そのままで撃てば、1000発は撃てる。20発入り弾倉を50個も持っている計算になるのだから、夢の様な話だ。
もっとも、状況や相手次第では小銃弾もどきでは通用しない事も考えられたので、『炎弾』の要素を取り入れた特別製も開発していた。こちらは400発くらいで撃ち止めになるが、それでもいざという時の事を考えると頼もしい。
あと1つ、消費ピコマシンが多い為に、あまり使いたくない魔法も発現出来る。こっちは本当に追い詰められた状況でしか使わないと思う。
到着した『西の国』は混乱こそしていなかったが、空気は荒廃一歩手前だった。
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