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19話

20160229公開

 こうして、会議の流れは人類側の防衛線を縮小する事で時間を稼ぎ、戦力の立て直しを図る方向に向かった。この辺りは王政の利点だろう。トップダウンだから話が決まるのが早い。

 その後、会議は『北の国』とも連絡を密に取る事を決めて、一旦閉会する事となった。

 詳しい計画は、週から月単位で調整するしかない。


「『客人』、そういえばおぬしの名を訊いておらなんだな」


 会議の終了後に『西の国』のナジド王が『中の国』の幸女王みゆきと一緒に俺の所にやって来た。


「そういえば、『てんちょー』様という姓しか聞いておりませんでしたね。下のお名前は何と言うのでしょうか?」


 幸女王みゆきが笑顔を浮かべて純粋な疑問だけで言葉を発した。

 俺は、ついにこの瞬間がやって来たと思いながら、2人に向かって答えた。


「名を名乗らずに失礼しました。織田信長と言います。ちなみに『てんちょー』は役職名です」


 幸女王みゆきの顔が驚愕の余り、笑顔のまま凍りつく。


「両親の名は、智久と幸代。そう、みゆき女王の両親ですね。ここまで言えばもうお分かりでしょうが、自分はみゆき女王の兄に当たります」


 俺がこの世界の人類に肩入れする決心をしたのは、勿論お客様や店員の安全を確保する為にはこっちの人類が頑張って貰わねばならない事が一番の理由だ。

 だが、天涯孤独になったと思った直後に、実は歳の離れた妹が居ると分かった時はさすがに引いた。

 まあ、両親がこちらの世界に連れて来られた時の召喚システムのバージョン(Ver8)には肉体年齢の加工が有ったので、若返ったせいも有るのだろうが・・・ だが、その副作用で2人は同時に死ぬ事になった。

 唯一の肉親を再び失う事はさすがにきつい。

 ましてや、女王と云う重責を担っている歳の離れた妹だ。

 見捨てる事は出来なかった。


「のぶなが・・おにいちゃん・・?」


 幸女王みゆきが笑顔と泣き顔の真ん中あたりの表情を浮かべ、日本語で言った。


≪言語を日本語のままにしてくれ≫

≪採集サンプルMale-3の要請を確認。言語を日本語に固定しました≫


「ええ。両親がどんな風に自分を説明していたかは分かりませんが、確かにみゆき女王の兄になります」


≪言語をこっちの言葉に戻してくれ≫

≪採集サンプルMale-3の要請を確認。言語をフロンティーナ語に変換しました≫


「今となってはどうする事は出来ないが、あの最初の部屋で唯一殺された女性は自分たちの祖母だ」


 この発言に対しては、ナジド王が声を上げた。


「それはまことか? なれば、われは取り返しの尽かん事をしてしまった・・・」

「別に責めている訳では無い。国を思う故に起こした行動で発生した不幸だ。祖母も穏やかな顔で逝ってくれた」 

「だが、おぬしの祖母殿をあやめたのは事実だ。詫びのしようも無いが、謝罪だけはさせてくれ」


 そう言って、ナジド王が俺に向かって膝を折った。

 俺たちの会話を遠目で見ていたこちら側の人間が、その光景に驚きの声を上げるのが聞こえた。

 インストールした知識では、ナジド王はかなり傲岸な武人肌の人間だ。

 その様な人物が得体も知れない人物に膝を折るという事は、衝撃以外何物でも無いのだろう。

 あまり関係を歪めない為にも、真正面から俺も膝を折った。

 彼とは戦友と云う立場の関係になりたいから。


「謝罪を受け入れ、今後のしこりにしない事を誓おう」


 ナジド王が真正面から俺の目を見詰めた。

 

「最優先すべきは人類の存続だ。その為には自分の全てを捧げる事も誓おう。ナジド王も同じ誓いをしてくれると自分は嬉しいのだが」

「おお、勿論、誓うぞ!」

「分かった。そうと決まれば、1つ頼みが有るのだが?」

「何でも言ってくれ」

「そろそろお腹が空いたので、みゆき女王に食事の用意を頼んで貰えないか?」

「お安い御用だ」


 俺は笑顔を浮かべながら立ち上がった。

 目の前で行われた出来事に口を挟めずにいた幸女王みゆきに向かって、ナジド王も立ち上がりながら声を掛けた。


「女王よ、済まなかった。知らぬ事とはいえ、そちの祖母君を殺してしまった」


 やっと女王としての表情を取り戻した幸女王みゆきも謝罪を受け入れた。



 みんなと一緒に食べた料理は豪華で美味しかったが、俺の店の精肉部門のチーフも、水産部門のチーフも、野菜部門のチーフも、出された料理の半分以上の材料が未知のものだと言って、首を捻っていた。

お読み頂き誠に有難うございます m(_ _)m

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