18話
20160228公開
誰もが、薄々は気付いていた結末を目に見える形で突き付けられたせいで、会議室は重苦しい空気に満たされた。
「この結末に何か異議が有りますか、ナジド王よ?」
「我の国はここまで脆弱では無いと言いたいところだが、それは虚勢と云うものであろうな」
「有り難う御座います。そこまで率直に言って頂けると、この後に提案する作戦案に希望が持てます」
俺はそう言った後で、インターフェイスに次の指示を出した。
≪修正シミュレーションを走らせてくれ≫
≪採集サンプルMale-3の要請を確認。修正シミュレーションを開始します≫
1度、現状まで戻った赤と青の点は、今度は全く違う動きを示した。
『西の国』に在った青い点の半分以上がドンドンと『中の国』に吸収されて行く。
それを包む様に薄い青い膜が徐々に萎んで行く。
しばらくすると、『西の国』は赤い点に覆い尽くされたが、『中の国』には入れ込めずに均衡状態に陥った。
「現在人類最大の戦力は『西の国』だという事は皆様も異議の無い所でしょう。ですが、その人類の最大戦力でさえも『敵獣』の集中的な攻勢を受ければ、戦線の維持は叶いません。結果として壊滅に至ります。そして、その戦力を失った人類は一気に滅亡へ突き進みます」
俺はここで一旦言葉を切った。
『西の国』の戦力を失う事がどれほど致命的で重大な結果を齎すかを沁み込ませる為だ。
「先ほどの『プラント』殿の御言葉に【我は常に見守っておる故に汝らの全てを賭けよ】という件が有った事は皆様も覚えているでしょう。その意味するところは、国さえも捨てて全力を尽くせ、という事ではないでしょうか? 人類が一致団結しなければならないと、暗に言ってくれたのではないでしょうか?」
更に俺は畳み掛けた。
「『西の国』のナジド王よ、貴方の国の国土と、熟練の兵士はどちらが価値が有るとお思いか? 私は兵士の方が価値が有ると考えますが、どの様にお考えか? 国土は後で取り返す事は可能です。ですが、1度失った熟練の兵士は並大抵な事では補充出来ません。もう一度、問いましょう。国土と兵士、どちらを取るのかと!」
「しれた事。兵に決まっておるわ!」
「ならば、言わざるを得ません。『西の国』は人類最後の砦たる『中の国』で反抗の力を蓄えるべきだと。そして、『中の国』はその全ての力を以って、人類最後の砦たるに得る『威』を示すべきだと」
俺の問い掛けと、応えたナジド王の返答はある意味『売り言葉に買い言葉』とも言える。
だが、その先に在るものには、もしかすれば何とかなるのかもしれないという希望が含まれていた。
こうしてこの惑星の人類は、国家と云うしがらみを捨てて、生き残る為に一致団結する血路を進む事になった・・・・・
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