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15話 「選択して得たもの」

20160226公開



20160227一部修正

20160304『敵獣』関係修正

 案内された部屋は俺のスーパー位の面積が有った。

 大慌てで用意されたのか、未だ配列され終わっていない椅子の種類が結構ばらけている。

 そこで今更のように思い出したが、みんなはこちらの言葉が分からない筈だ。

 用意が出来る間にみんなにも通訳アプリを起動して貰わなければ意味が無い。


≪全員の通訳アプリを起動してもらっていいか?≫

≪採集サンプルMale-3の要請を確認。起動終りました≫


「えー、たった今、何か聞こえたと思いますが、こちらの言語の通訳をしてくれる機能が働いている筈です。もし起動のメッセージが聞こえなかった方がられましたらお教え下さいませ」


 全員が首を振った。無事に全員の通訳アプリが機能しだしたようだった。


≪こっちの言葉を日本語に通訳する一方、要求しない限り日本語の発言をこっちの言葉に通訳しないでくれ≫

≪採集サンプルMale-3の要請を確認。設定が終了しました≫


「現在、日本語をこちら側の言葉に通訳しない様にしています。ですからこちら側の人間には我々の会話や発言は通じません。ただし、この国の女王のみは日本人の両親から生まれた為にそれなりに日本語が分かりますのでご注意下さい。それとこちら側の人間に発言したい場合は、その旨を先に発言すると通訳アプリが機能します。ただし、日本語モードに戻す事を必ず宣言して下さい。でなければ、我々の会話の中身が推察されてしまいます。何か質問は有りますでしょうか?」


 富田さんが手を上げた。


「はい、富田様」

「良かったら、店長が考えているプランを先に言っておいて欲しい。その方が我々も自分で考える際に参考になる」

「そうですね、確かにその通りです」


 俺は幸王女みゆきがこの部屋に来ていない事を確認した上で、みんなに説明した。

 その内容は俺だけがインストールしたデータが基となっている。


「最初に結論を言います。自分はこっちの世界の人類に肩入れをします。理由は簡単です。このままでは人類は絶滅する可能性が非常に高いからです」


 俺の言葉を聞いたみんながざわめいた。


「あの女性の説明にも在った通り、この惑星の人類は追い詰められています。比較的安全と見られていたこの島に移住した人類ですが、15年前に141万人居た人口は現在102万人に激減しています。切っ掛けは偶々人間を食べた1匹の『敵獣』が爆発的な成長をした事でした。それからは奴らは人類を食べる事を最優先にしています」


 どうして人間を食べれば『敵獣』が爆発的な成長をするのかは『プラント』によって理由が確定されていた。人類側の軍によって殺された『敵獣』(生きている間は『プラント』は手出し出来ない)を分析した結果だから確実だろう。

 この惑星で生きて行けるように人類に埋め込まれたピコマシンを直接取り込んだ場合、奴らはその恩恵をもろに受けてしまうのだ。

 ならば、そのピコマシンを強制的に排出すれば問題は解決するが、それは不可能だった。

 ピコマシンの摂取も大自然の食物連鎖に当たるとされて、『プラント』には手を出せない項目なのだ。


「このまま人類が負け続けると、我々の保護どころではないでしょう。最終的には我々も彼らと同じ様に『敵獣』に喰われる運命となります」


 みんなの反応は信じられないというものだった。

 どこか他人事ひとごとだった話が、気が付けば自分も巻き込まれる可能性が高いと断言されたのだ。


≪『敵獣』の映像を空間に投影する事は可能か?≫

≪採集サンプルMale-3の要請を確認。可能です≫

≪最初に『害獣』時の映像を。次に『敵獣』となった映像を出してくれ≫


 敢えて、俺はこれからの運命を左右する賭けに出る事にした。

 その為に、更にショックを与える事を選んだ。

 いきなり俺とみんなの間に体長2㍍ほどの、見るからに敏捷で獰猛そうな生き物が現れた。

 第一印象はジェラシックな公園で見かけるラプトルそっくりな感じだ。違いは、如何にも爬虫類ですというラプトルと違って、全身に短い毛が生えている点だ。そのせいも有り、恐竜と哺乳類の中間的な感じがする。

 だが、顔の部分をよく見ると目が4つ在る。

 耳は見当たらないが、存在は確認されている。聴覚としての性能は人間よりも遥かに劣るそうだ。多分、退化しつつある機能なのだろう。まあ、視覚の機能と性能がかなり良いからだろう。

 恐竜と同じく変温動物だが、この島の気候が温暖帯の為に弱点と云う程では無いらしい。

 その横に突然体長4㍍ほどの生き物が現れた。

 全員が思わず後ずさりした程に怖い印象だった。

 

「最初に現れた生き物が『害獣』時の姿ですが、後で現れた生き物が『敵獣』となった状態です。こっちの軍隊では、『害獣』時には複数の兵で対処可能、慣れていれば単独での対処も可能とされています。ですが、『敵獣』になった途端に単位が変わります。1個小隊、そうですね、20人以上のチームで当たるべし、更にこれ以上に成長した個体ならば最低でも2個小隊で当たるべしとなっています」


 俺は、一旦、間を置いた。

 俺の言葉がみんなに沁み渡ったところで質問をした。


「何故か分かりますか?」


 誰も答えられなかった。


「人間のピコマシンが彼らの成長を促してしまうからです。そして、その作用は分析されて、遺伝子レベルで我々にも植え付けられています。目が覚めた時の異常はその副作用です」


 みんなは呆然としていた・・・・・


「皆様に『解放』を選択して頂きましたが、その『解放』こそが超人的な力を得る選択です。もし、『封印』を選択した場合、その能力は目覚めません。日本で居た頃と変らない身体能力のままで、1匹で兵士20人掛かり、下手すれば40人で対峙しなければならない化け物と向かい合う事となります。これが私が皆様に【生き残る為に『解放』を選択する事をお勧めします。もし『封印』を選んだ場合、生き残る事が非常に困難になると思って下さい】と説明した理由です」


 果たして、俺の賭けはどっちに転ぶのだろう・・・・・・

 


お読み頂き誠に有難うございます m(_ _)m

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