14話 「選択の真実」
20160226公開
俺は、幸女王に広めの会議室の用意をお願いした後で、自分達が得た身体能力に慣れようと一生懸命に身体を動かしているみんなの所に向かった。
ひらがなだらけのせいで読みつらいが、みんなのステータスがさっきまでの数値から大幅に向上していた。1桁だったり、多くても11~13だった数値が今では軒並み2桁の後半になっていた。
特に『さいだいMP』の増加が著しく、最大MPは4桁に突入していた。
これは生き残る為に重要な要素だったので、ちょっと安心した。
「そろそろ身体に慣れた頃だと思います。これから私たちの運命が決まる会議を行いたいと思います。皆様も関係する事なので、どうか一緒に参加して貰えませんか?」
「ふむ、そうだな。意見も言えずに運命を決められるのは敵わないからのう」
真っ先に富田さんが賛同してくれた。
みんなもその発言に誘導されて、頷いている。
部屋を出る頃には、失神していた『西の国』の兵士達も意識を取り戻していたが、全員が縄で縛られて無力化されていた。
≪俺が殴った時に殺させない様に何かしたな?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。肯定です。殺傷力を相殺しました≫
首がもげてもおかしくない威力だったのに、感触が柔らかかった事と、俺の拳自体にも損傷が発生し無かった為に(普通に素手で鉄兜を殴って無傷なんてさすがに有り得ない)何らかのバリアと云うか力場と云うか、その様なモノを展開したのだろうとは思っていた。
≪それを使って、威力を上げる事は可能か? もちろん俺の拳は無傷のままで≫
≪採集サンプルMale-3の要請を確認。肯定です。可能です≫
≪『敵獣』相手の時は基本はそれで頼む。それ以外はこのままで≫
≪採集サンプルMale-3の要求を確認。承認します≫
≪ついでに確認なんだが、ばあちゃんには『選択』の機会が有ったのか?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。肯定です。採集サンプルFemale-2は『封印』を選択しました≫
ばあちゃんらしいと言えばらしいが、あの穏やかな死に顔の理由が分からない。
≪何故殺した? お前たちの力なら殺さずに守る事が出来ただろうに≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。採集サンプルFemale-2の希望です。その際の音声記録の再生を希望しますか?≫
思わず、「え?」という声が出た。
後ろを歩いていた佐々木副店長が声を掛けて来るが、「いや、なんでもない」と言ってごまかした。
≪再生してくれ≫
≪採集サンプルMale-3の要請を確認。採集サンプルMale-3の要求により該当する音声ファイルをダウンロードします。アプリを起動します。再生が可能になりました≫
俺は思わず唾を飲み込み、周囲にばれない様に深呼吸した後で再生を『聞いた』。
【封印でいいよ・・・ 神様か悪魔か分からないけど、わしの事は見捨ててもらえんじゃろうか? 代わりに孫を頼んだよ・・・】
3回再生した後で、インターフェイスに訊ねた。
≪だから、見殺しにしたのか?≫
≪採集サンプルMale-3の質問を確認。我々は可能な限り、人類の希望を叶える事が存在する理由です≫
ああ、ばあちゃんらしい・・・・・・・
きっと、自分が生き残っても足手まといになると考えたのだろう。
それと、それまで明確な音声として聞こえなかった囁きが明瞭に聞こえ出したのも、タイミング的に考えてばあちゃんの要望に応えた結果なのかもしれない。
俺は、ばあちゃんに救われてばかりだ・・・・・・
お読み頂き誠に有難うございます m(_ _)m