13話 「幸女王」
20160225公開
短いですが書き上がった分だけ公開します。
足音が部屋の中に入って来た。
剣で武装した数人の兵士に囲まれて現れたのは中学生くらいの女の子だった。
「ナジド王よ、この様な狼藉を行うとはどの様な料簡だ? まさか儀式をおこ・・・」
部屋の中を見た女の子は絶句していた。
そりゃあそうだ。あちらこちらで倒れているのは『西の国』の兵士達で、部屋の奥では見慣れない服装をした集団が走ったり、体操をしているのだから。
部屋の中を見渡して、ナジド王を発見した彼女はこちらに歩いて来た。
確かに母親の面影が有る。
周りの兵士も人種が混ざっているのに対して、彼女だけは明らかに日本人だ。
「答えてもらお・・・」
そこで初めて俺に視線を向けた彼女が言葉を途切れさせた。
「ああ、そこにいる男と奥に居る集団が儀式で召喚された者どもだ」
「なんて事を・・・ 我が国の始祖と父上と母上が封印したのに、何故、その様な事を・・・」
「痴れた事。何もしなければ我が国が滅びる、それ以外に理由など無かろう。まあ、我の想像と違い、人間が現れたのは予想外だったがな」
少女は探る様な目で俺を見詰めた。
何かに気付いた気がするが、その何かが言葉に纏まらない様なもどかしい表情をしている。
「言葉は分かるか? 身体は大丈夫か?」
年上の俺に向かって気遣う言葉が出て来るとは思わなかった。
俺は、居住まいを正して答えた。
「言葉も身体も大丈夫ですよ、幸様」
少女は驚いた表情を浮かべた。
≪日本語のままで相手に聞こえるように出来るか?≫
≪要請を確認。可能です≫
≪では、頼む≫
「お父上とお母上の事は残念でした。2人とも苦しまずに逝かれた事だけが幸いでしたが」
少女の唇が驚きで開く。
そして、日本語で呟いた。
「どうして、それを?」
≪こっちの言葉に戻してくれ≫
俺はそれに答えずに、2人の会話を見詰めているナジド王に向かって言った。
「詳しい話は席を設けて話し合おう」
そして、それは、俺たちの運命を決める会議になるだろう。
いや、この惑星の人類の運命も決まる会議になる・・・・・
お読み頂き誠に有難うございます m(_ _)m




