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12話 「張本人」

20160224公開

 インターフェイスは俺の前まで来ると、じっと俺の顔を見詰めた。

 目の前の無表情な女性が、素粒子並みのサイズのマシンの集合体だと知っていても、人間そのものに見える。まあ、人間も突き詰めると素粒子の塊なんだが。

 元となったモデルの人種は微妙に分からない。何か白人や黒人、黄色人種を均等に混ぜた様な感じがする。もしかしたら全人種の平均値が元となっているのかも知れない。


「採集サンプルMale-3を今回の採集サンプルグループのリーダーと認識しますが、訂正の必要性を認めますか?」


 美人と言える顔なんだが、無表情で喋られると一気に人間離れして来る。

 ちょっと怖い。不気味の谷現象だったっけ?


「リーダーではないが・・・ だが、交渉する際にリーダーと認めておいた方が有利なんだろ?」

「その通りです。我々の観測の結果、人間は群れていないと制御が利かない事を掴んでいます。お互いの効率化の為にも、リーダーであることを認めて下さい」

「分かった」


 少なくともこいつらは人間を操れるほど人間の内面を理解していない事がよく分かった。

 その気になれば、無数の人間をその囁きを使って個々に操れる筈なのに、その様な発想も無いのだろう。


「採集サンプルMale-3のインターフェイスをアクティブ化します」

≪こちらの呼び掛けが聞こえていますか?≫

「ああ」


 なんだろう、この感覚は?

 直接音声を聞いているかのように聞こえながらも、外の音とは違うと分かる感じがする。


≪声に出さずに喋る意志を持つ事で発言出来ます。試して下さい≫


 思わず、声だけを出さずに口をパクパクさせた。


≪こうか?≫

≪相互の交信の確立を確認。以後、インターフェイス経由の交信に移行します≫


 そう言った途端に、目の前のインターフェイスが霧散する。

 また、呻き声が聞こえた。

 今度は起き上がろうとしていた。

 俺はそいつの真正面に腰を下ろした。

 もっともすぐに動ける様に片膝を地面に付けて、距離も2㍍離れた場所だった。

 そいつは頭を振ると、金属製の兜を脱ごうとして両手を掛けた。

 現れた顔もさっきのインターフェイスと同じく、人種が分からない。

 年齢は40歳を超えたところ云う感じか?

 現代の日本人には少ない武人的な顔立ちで、精悍と言ってもいい。


≪通訳アプリを起動します≫


 完全にスマホだな。

 身体能力といい、インターフェイスといい、アプリといい、どんだけ俺の身体を改造したんだ?

 変身の1つも出来そうな気がして来た。

 もちろんイメージは首にマフラーを巻いたバイク乗りヤローだ。意味も無くベルトを巻いていないか確認したくなって手を伸ばしたが、触ったのは斬られたせいで中身が無くなったエプロンのポケットだった。

 そう言えばずっと持っているハサミをどこに仕舞おう・・・


 兜を脱ぎ終わった男と目が合った。


「何故いきなり殺そうとした?」


 驚愕に見開かれる目の色はブラウン。

 スっと視線を鋭いものに変えた後でそいつが答えた。


「“力”の召喚に失敗した上に、これ以上の厄介事をもたらすような人間は不要だ」

「力? どんなのを想像していたのだ?」

「“それ”さえ手に入れば、我が国の苦境を覆すほどの“力”だ」

 

 どんなモノかさえ分からずに暴挙に出たって事か? どれだけ追い詰められているんだ?

 まあ、その焦りも分からないでも無いが。


「今、お前の前に居る俺やみんなが、その力なんだがな」


 奴の視線が身体を慣らしているみんなの方に向いた。


「確かに、さっきの攻撃を見れば、われの考えが間違っていたのだろう。それでどうする? 我らを殺すか?」

「まさか。あんたを殺せば『西の国』が確実に崩壊する。そうなると、残りの2カ国ももたない。かと言って、このままではいずれそうなる。この国のトップを交えて、人類側の戦略を練り直さなきゃならん。となれば、やる事は1つだ、『西の国』の王、ナジドよ」


 ほんと、王自ら突っ走るって、どれだけ精神的に追い詰められているんだ・・・・・

 だが、そういう王だからこそ、残された3国で1番の武闘派の『西の国』を率いるのにふさわしいのかも知れない。

 ちょうどその時に、この部屋に向かって走って来る足音が聞えた。

 数人程度だが、その中に子供のものと分かる足音も混じっていた。



 まさかの出会いが近付いて来た。

 どんな顔で会えばいいんだろう?

 

お読み頂き誠に有難うございます m(_ _)m

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