過去
誰得過去話です。
涼平が語っている風に書いてみたので、説明っぽい感じになってます。
端折ってる感がすさまじいですが、涼平の過去と彼と剣丞の共通点が
というわけで、どうぞー
稲葉山城を制圧してからしばらく経った頃。燃やされた家もある程度立て直しが完了し、新しい母屋への引っ越し作業が終了した夜。
なんとなく近場の酒屋で入手した酒を一人で飲んでいるところだ。
皆で宴として飲むのもいいが、こういう風に一人で月を見ながら酒を飲むのもまた楽しみの一つだ。
ふと酒を飲んでいて、次を注ごうとしたら部屋の入口から気配が一人。
微妙に気配消すのが上手いから多分これは剣丞だな。
「剣丞、どうした?」
「あれ、気がついた?ちょっと話したいことがあるんだ」
「いいぞ、入って来い」
「お邪魔しまーす……あれ、涼平ってお酒飲めるんだ」
「……これでも俺は27だ」
「えっ?!涼平、そんな歳なの!?」
「おう、そんな歳だ」
どうも童顔っぽいらしく、よく友人から見た目変わらないよなぁと言われる。
まあ、気の運用やらそういうのをある程度習得すると多少なりとも延寿やらそういうのが出来るようになる。自然エネルギーを取り込んでいれば意識しなくてもそういう風になるもんだ。
剣丞は俺の年齢を聞いて二歳くらいしか離れてないと思っていたと零している。
「まあ、そんなんでも壬月や桐琴に孺子って言われてしまったけどな……ああ、でも今更年齢を気にすることはない。俺も今の剣丞の応対が一番気楽だから、そのままで構わないぞ」
「うん……じゃあ、そのままで」
「で、なんのようだ?」
「うん、涼平は俺に会うまでどうしてたのかなって……詩乃から聞いた話だと風雲としては一年位前から広まったって」
「あー、うん。ちょうどいい機会だし話しておくか……えっとだな」
俺は剣丞にこれまでの出来事を話した。
まず、俺がこの日本にやってきたのはお前に会う大体二年前だ。気がついたら森のなかに居た。
ちょうど朝の鍛錬をしようと思って着替えて、武器を取りに行こうと部屋を出た瞬間に森の中。振り向いても俺の部屋はないし、あるのは木々だけ。
幸い、近くに野生の動物も居なかったし、木々といってもそんなに生い茂ってなかったし、時間は昼間だったから暗くは無かった。
……まあ、いきなり目の前が違う景色になってるっていう経験は昔したことがあったからそんなに焦らなかったよ。
しばらく森を歩いてると煙が上がってるのが見えた。近くに集落か人が居るのかと思ってその場に向かったら、その場所は鍛冶屋の集落だった。小さな集落で刀を作る家、その鞘を作る家、鍔を作る家、材料となる鉱石、鉄を取る家が主な集落だったよ。
ああ、もちろん炭屋とかもあったが、城までの途中にある炭屋ほど大きい店じゃなかったがね。
その集落の代表っぽい人に会って、浪人として彷徨っていたら道に迷ってしまいしばらく厄介になれないかと相談した。厄介になるのは別に構わないが、集落の方針は働かざるもの食うべからず。
要するに鍛冶仕事の手伝いだな。助手みたいな感じでしばらく生活していたよ。
んで、半年位たった時かな。俺の家にある差出人不明の手紙が届いた。
手紙には短く書いてあったのは『お前と同じ天の御遣いを探し、守れ』っていうもんだった。俺と同じってことは同じ場所……未来の日本からやってくる人間がいるってことだしな。
世話になってた鍛冶屋の主人に旅に出ることを告げて、その集落を出た。
ちなみに今持ってる刀はその旅の選別に鍛冶屋の主人から貰った刀でな。今まで働いた分と俺が気に入ったと理由でその刀を譲ってくれた。
そこを出てから簡単な手入れだけで斬れ味は落ちないから結構な業物だと思うぞ。壬月もこの刀を褒めるくらいだったしな。
ん? 集落の場所? えっと下野だな。俺らの時代だと栃木あたりだったはずだ。
その間、途中にある市場とか戦ってそうな武家に入ったりとかだな。下野、甲斐、三河が主な資金稼ぎ場だ。
一番長く居たのは甲斐だったかな。半年位は世話になっていたからな。というか、大体の生活が移動って言う感じだったが、俺らの時代と違って野草やらそういうのは豊富だから、住にだけ困るくらいで後は特に問題なかったな。
三河で珍しい服を来た男が空からやってきたって言う嬢ちゃんから話を聞いて、尾張に来たら剣丞に会ったってわけだ。
「とまあ、剣丞に会うまでの二年間はこんな感じだな」
「じゃあ、実質涼平は一年はずっと歩きっぱなしだったんだ」
「そういうこったな。山道とか馬が通れない場所を通って近道とかしてたからな」
甲斐では馬をやろうみたいなことを言われたが、基本的に山道やら崖を登ったりと無茶な移動をしていたから馬を貰っても非常食にしかならない。
いい馬であったが、今思えば馬をもらってなくて正解だった。この時代じゃ高速道路も無ければ整備された道もないから、日の傾きと村での情報だけで尾張に行くのは大変だった。途中で道間違えて変なところ出たりもして一年近く移動時間になってしまったわけで……。
資金関係は甲斐で稼いだ分で、野宿とその辺の草やら動物を頂いて居たので十分足りていた。
むしろ、剣丞に会ってここで使うことが多くなったし、稲葉山城で結構な稼ぎを貰ったので十分すぎるくらいだ。
「野宿とか熊とか居て大変だったんじゃない?」
「いや、動物は食料だからこっちに喧嘩売ってきたのは胃の中に収めたぞ」
「……熊倒せるんだ、涼平」
「これでも壬月や桐琴ほどじゃないが鍛えてるからな」
この世界の武将とかに比べたら熊なんて優しく感じてしまう。野生の動物よりも強い武将が一杯居るとか彼処だけかと思っていたんだがねぇ。
外史ってのは面白いもんだ。
そういえば気になっていたのことがあったので話のついでに聞いてみるか。
「剣丞、この前言ってた師匠みたいな人ってなんだ?」
「あ、そういえば話せて無かったね。えっと、姉ちゃんなんだけど……おじさんのお嫁さんなんだ」
「おじさんの嫁さん?」
「しかも、五十人いるよ」
「……なんだって?」
五十人の嫁……なんか親近感があるというか身近に居たっていうか。ちょっとびっくりして素で聞き返してしまった。
「五十人のお嫁さんがいるんだって」
「あー、いいや。続けてくれ」
「うん、その姉ちゃんたちから………」
剣丞からの話を要約すると、剣丞は小さいころ、剣丞の両親は自分と妹を残して交通事故で他界。母親の兄である伯父が自分たち兄妹を引き取り、育ててくれたらしい。
あと、剣丞の伯父夫婦は一夫多妻という都合上、日本の山奥に住んでいる。
んで、その嫁さんたちがココの武将たちに引けを取らないレベルらしく、そんな嫁さんたちから剣丞は英才教育の如く仕込まれたらしい。
気配の殺し方が上手いのも兵法を知っているのもその嫁さんたちのおかげ……。剣丞がこの世界に呼ばれたのは修行のために腰に下げていた刀を持った瞬間、気がついたらこの世界にやってきたという話だ。剣丞自身、そういった話を伯父夫婦から聞いていたため、特に取り乱すことはなかったそうだ。
すると剣丞があくびをして話が中断される。
そういえばずっと話していたが結構な時間になってしまった。剣丞は眠そうにしながら、立ち上がって苦笑を浮かべていた。
「っと、そろそろ寝ないとまずいかな」
「この時代は時計がないからな。でも、月の位置からして真夜中なのは間違いないな」
「とりあえず、俺は部屋に戻って寝るね」
「ん、また明日な剣丞」
「うん、おやすみ涼平」
そういって剣丞は俺の部屋を出て自室へと戻っていった。
とりあえず、お猪口に酒を注いでから、一口で飲み干す。剣丞がたまにいう姉ちゃんと呼ばれる伯父さんの嫁の名前。五十人という嫁を持つ伯父。この時代の武将に劣らない実力者。
そして、剣丞自身の性格……というか女たらしっぷり。ここから導き出された答えがある。
「すげぇな、外史ってのは……」
集落で俺が見た手紙。それは今も俺の上着の中に忍ばせてあるもんだ。外史を知っている人間、俺が剣丞と同じ世界の出身……。
「外史だからこそ、ズレが微妙に生じているってことなのか?」
俺の知っているあいつは結婚しているがそんなに人数はいない。それにそれなら俺の情報を少しでも話しているだろうし、もし同じって言うなら剣丞は俺と面識があるはずだ。
だが、剣丞とは初めて会ったし、剣丞も俺に会うのは初めてだった。あいつは自分の時代に戻らず、その場に留まったってことが違いなのかもしれない。外史ってのはいくつもあるものだと聞いたことがある。
「まあ、あれだ。たとえ世界が違ってもお前の親戚なら守ってやるさ」
そう、剣丞にはまだ未来がある。更に剣丞が外史に呼ばれたというのはこの世界が剣丞を必要としているからだ。
同時に俺もこの世界に必要とされて呼ばれた。だから、守るから見ててくれよー。
「女たらしなのはどの外史でも変わらないんだな、一刀って」
今日はいい夢が見れそうだ。
というわけで、涼平の年齢、過去と剣丞との繋がりを出しました。
ちょっと急ぎ足の感じはありますが、涼平の独白でのネタばらし。
涼平はまた違う外史から戦国の外史へと召喚されたわけです。
たとえ違う外史にいる親友の甥っ子でも一刀くんの甥なのでという感じです。
次回は遠出です。
剣丞が行くなら涼平も行かないとねという感じで
次回、お待ち下さい