森家
お久しぶりです。
二ヶ月間が空きましたが五話目です
なんとか三の丸を制圧して、少し休憩してから最後の城門に向かっているのだが……。なんか母衣隊の兵たちが戻ってきている?
どうやら、二の丸から荒々しい今にも炸裂しそうな、こう、今にも獲物に襲いかかるような獣みたいな感じから逃げているような……?
少し集中して探って見ると似たような気配が2つあるが、一方の気配が尋常じゃない。
対面した時の壬月ですらこのような気配を発していなかったが、今感じている気配を少し懐かしく感じる。
どうやら、この2つの気配から巻き込まれないように逃げている感じだ。
「なんなんだ、一体」
しかし、状況を見るにこっち側が優勢で城門は既に開放されているようだ。
この懐かしい感覚はなんだろうか。つい最近まで身近に感じていたような気もするが……。
「うん、行ってみた方が早い」
こうやって悩むなら直接確認しに行く。俺の師匠も細かいことはぶっ殺してから考えろともいっていたしな。
念の為に刀を抜身の状態で城内を歩いて行く。城内は既にあらかた制圧されているようで歩く度に視界に倒れこんでいる敵兵が入ってくるのだが、それよりもかなり目立つものがある。
「……きったねぇな」
そう、城内が汚い。後々制圧しきったら織田家の城になるのに荒れ放題。
柱や襖、壁、床はボロボロで綺麗なのは天井位だ。
多分、この一番強い荒々しい気配を放っている人物が引き連れている兵が原因だろうな。
まだらだが、同じような荒々しい気配を放っている小さい気配が多いってか、手当たり次第じゃないかこれ。
「……ん、待てよ。こういう気配があるときは」
「ヒャッハー!!ココは通さねぇぜ!」
「……うわー」
なんか世紀末の地球に出演してそうなの出てきたんだけど。モヒカンじゃないのが唯一の違い?あ、あと毛皮か。
出てきた世紀末っぽい男は一人だけで、特に攻撃を仕掛けようとはしてこない。
「兄ちゃん!随分強そうだな!!斎藤に雇われた傭兵か!」
「剣丞隊だ。織田のもんだ」
「そうか、なら死……ぽげらっ!!!!!!!!!!!!!!」
「いや、意味わからんわ」
そうか、なら死ねって可笑しいだろ。味方じゃねぇのかよ、お前どう見ても斎藤兵じゃねぇだろ。明らかに織田の人間だろ……なんなの?バカなの?なんで切りかかってくるんだよ、条件反射で殴ってしまったじゃないか。
しかも、世紀末に出てくるような悲鳴出して気絶するし…。
「敵も味方も関係ない感じか……戦闘民族みたいな兵だな。しかも、増える」
「ここh……ぷげっ!」
「通さ……ポゥッ!?」
ぞろぞろと同じような格好の兵たちが現れる。
一応、斎藤兵じゃないし味方っぽいから殴って気絶させるだけにしている。後で何かあると久遠とかに何言われるかわからんし、視線合わせただけで切りかかってくるとかなんなんだ。
「……そうだ、ちょっと試してみるか」
こういう兵は自分たちよりも俺が強いというのをわからせてやればいいという言葉を聞いたのを思い出す。
ああいうタイプは本能で戦闘を避けるだろうし、自分の命をみすみす手放すような真似はしない……と友人が教えてくれた。
ものは試しということで、戦闘時……壬月と対面した時よりも殺気を込めて、なおかつ威圧するように周囲に放つ。
しかし、そこである問題点に気がついた。
「ああああああああ、肝心なこと聞いてなかったぁぁぁ!!!!」
周囲の威圧するやり方なんて聞いてねぇよ!
友人は戦闘中の俺なら大体の人間は近づかないとかいわれたことあるけど、戦闘中の自分なんて考えたことないからわからん。
やり方を壬月とかに聞いてみようかな……そういうの詳しそうだし。
「しねぇぇぇぇ!!!」
「麦穂でもいいかな?……いや、彼女はそういうタイプじゃなさそうだな」
何か頬を掠めてるが気のせいだろう。
いやぁ、俺もまだまだ未熟だな。だから詰めが甘いとか言われるんだろうなぁ。
「おい!お前!」
「それか久遠に相談して、誰かに教えてもらおうかな……でも、壬月が一番適任かな。実際にやってくれそうだし」
技術が自分で理解できれば剣丞の兵達に教えることもできるし、威圧で敵を怯ませられるなら無駄な戦いをしなくてすむ。一石二鳥である。
しかし、昔からそういうところは甘いと言われていたが、無駄な体力はなるべく使いたくない。
それとさっきから頬あたりにいるのはなんだ、虫かと思い視線を少し下に向けると何かちっさいのがいる。
「無視すんなぁ!」
「虫が喋った!?」
「虫じゃねーよ! ふざけてんのかテメェ! あと避けんな!」
「いや、んなこと言われても死にたくないし」
なんだ、さっきから感じてたのはこいつの槍の風圧か。
見た感じ……三若よりも若いか?
身長は俺の半分くらいしかないし、虎の帽子みたいなのがかわいい。あと文句を言いながら槍で突っついてくるのはどうかと思うよ、俺は。
「おとなしく斬られてその頸よこせ!!!」
「嫌だね。俺は天を守る剣っていう命がある。ていうか、お前織田のもんだろ?」
「おうよ!森の鶴紋なびかせて、尾張が一の悪ざむらい!森一家が小夜叉長可たぁオレのことだぁ!」
森一家……さっき殴り飛ばした兵たちって森家だったのか。でも、俺が一番に感じてた気配はこの子ではなさそうだが……近くには居るようだな。
ここは森一家に任せて、剣丞のところにもどるかな。
「そうか、じゃああとはよろしくな」
「おう、任せろ!……ってそうじゃねぇ!!!」
「うお、あぶねっ」
「見てねぇのに避けんな!」
この子の場合見てなくても気配っていうか、この辺突こうってのが思いっきりわかるから避けやすいんだよな。
しかも、まだ突いてくるし……森一家ってこんなのばっかなの?
「ちっくしょー!!」
「やめとけ、クソガキ」
「母!」
「げっ」
次に現れた人物を見て、つい言葉を漏らしてしまう。しかも、この子の母親かよ……露出度たけぇよ。先端とか隠す程度の布しかないじゃないか。
おっぱいデカすぎだよ……ぜってぇ麦穂よりあるぞこの人。
昔の知り合いでもこんなに露出させてたの………居たわ。海パンっぽいの一枚だけの人居た。
「おえっ」
ちょっとその姿思い出して吐き気が……。良い奴なんだけどインパクトてか見た目がすごいからなぁ。
あいつの子供達も最初泣いてたなぁ……懐かしい。まあ、しばらくしたらお母さんとかいってたな。そいつ男だったけど。
ああ、俺が昔を思い出して現実逃避してたのは目の前の親子らしい二人は俺の目の前で喧嘩してるからだ。今のうちに逃げたい。
すごいにげたい。
「母!邪魔するんじゃねぇぞ!こいつの頸はオレのもんだ!」
「今の実力じゃ勝てねぇつってんだ、ガキ。ソレにそこの孺子はガキより強い。下がってな」
「……ちぇ」
そういって小さい方は獲物を俺に向けるのをやめて後ろに下がる。多分、アイツ自身が自分よりも俺のほうが強いというのを感じ取っていたのだろう。
母と呼ばれた女性は俺を見つめる……うわー、狩人の目だ。この人、俺のこと超狙ってるよー。野獣の目だよ~。
「さっきの気配は孺子だな。久しぶりに強そうなのが居ると思ったが……」
「俺は織田のもんだ。俺なんかの相手するよりは斎藤を追いかけたほうがいいんじゃないか?」
「目の前に生きのいい奴がいる。逃がすわけにはいかんだろう」
うわー、めんどくせぇ。この人、マジで壬月並かそれ以上の実力者だから逃がしてくれなさそうだし……。
うおー、どうしよう。マジでどうしよう。
「行くぞ!孺子!!」
「!!!」
突如襲ってきた女性の槍をギリギリでずらして、詰められた間合いを戻す。
女性の武器は三又の矛……意外と攻撃範囲は広く面倒だ。正面を避けても左右に分かれた矛が襲いかかってくる。でも、ココで俺の今までの経験が生きる。
俺がもうちょい若い頃はこう云うのばっかで刀とかよりもソッチのほうが多かったから対応がし易い。
次の攻撃が来ると思ったのだが、女性は槍を降ろして俺を見つめている。
「ほう、今のを逸らすか。孺子の割にやるじゃないか」
「そりゃどうも……森可成殿に褒められるのは光栄だね」
「孺子。ワシと戦う気は無いようだな」
「そりゃ、森一家は織田についてるって話は聞いているし、今はココを制圧するほうが大事だからな」
「……なら、すぐに消えい。数秒だけなら見逃してやる」
「……おう」
どうやら数秒の間に消えればこのまま見逃すということらしい。俺としてもこのまま戦うのもあれだし、本気でこの人と斬り合ったらどちらか……いや、確実に俺が死ぬ。
お言葉に甘えさせてとっとととんずらこかせてもらいますか。
「孺子、名だけ聞いといてやる」
「切銀涼平」
「…覚えておいてやろう、涼平。ワシは桐琴」
「さんきゅ、桐琴。じゃあな」
とりあえず、視界に入らない位置まで移動する。森親子が何か言ってるけど、もう聞こえん。
うーん、どうやら桐琴はあの嬢ちゃんに比べたら、冷静なタイプなんだろう。敵をよく見て、周りも見て判断しているし、敵意を向けなければそこまでって感じだった。
でも、森の兵を殴ってすまん……。
涼平が視界から消え、桐琴が捉えられる範囲から離脱したころ。
小夜叉は桐琴に対して不満を漏らす。涼平をあっさりと返してしまったことだ。
明らかにあっさりと倒されてしまう城内の兵に飽きていた頃、とてつもない殺気を感じ取って来てみれば強そうな男が居た。それも自分よりもかなりの手練で一撃も入れることも出来なかった。
そんな母親に小夜叉は文句を言うが、その桐琴自身は楽しそうな笑みを浮かべながら懐かしそうな顔を浮かべていた。
「母ー!なんで逃がすんだよー」
「黙れクソガキ。この場であの孺子と戦うのは勿体無い」
「えー、どういうことだよ」
「あの孺子、ワシの槍を避けながらしっかりと置き土産を置いていきおった」
「!」
桐琴の視線を追えば、腰にぶら下げている刀の鞘に亀裂が入っているではないか。小夜叉はいつの間にと驚くが、桐琴はいつ亀裂を入れたのかを把握していた。
涼平は先程の桐琴の一撃を避けながら鞘に向かって蹴りを入れてから距離を空けた。
「あの孺子、まだまだ手の内を隠してる……というよりも出し切れてない感じだろう」
「出し切れてない?」
「ああ……なんで出し切れていないのかはわからんがな」
「……変なやつ」
小夜叉とっては変な奴、桐琴にとっては底が見えない奴として涼平は認識されたのであった。
今月末には戦国恋姫X発売ですね。楽しみです
次回は日常的な話入れつつ、久遠、剣丞と遠征話と行こうかと思います