出陣
まだまだ原作通りの展開ですが、どうぞ
もうちょい長めに作ればよかったと思いつつ
「涼平」
「ああ、お前か……なんだ?」
「元気ないみたいだけど大丈夫?」
「んー、なんか風邪みたいだな」
「あんまり無茶して迷惑かけたらダメだよ?」
「わぁーってるよ。心配するなって」
「それならいいけどさ……」
「大丈夫だって」
「……夢か」
どうやら気がついたら寝落ちていたようだ。寝る前は夕暮れ時だったが、今はすっかり暗くなっている。
しかし、随分と懐かしい夢だ。
「元気にしてるかなぁ、あいつ」
ふと友人である男を思い出す。剣丞と話していると何故かアイツを思い出す。
なんか、妙にそっくりというか親しい物を感じる。特に無自覚に女性褒める部分とか誑しっぽいところが似てる。
「もう一度寝直すか……ん?」
静かで虫の音しか聞こえない状態から唐突にほら貝の音が響く。なんだ、この聞いたことない音……。
それにいきなり周りがどよめき、騒がしくなった。
「なんか騒がしいな」
「涼平さん!」
「うおっ!?」
そんなことを考えていたら俺の部屋の襖が勢い良く開かれ、焦った表情を浮かべたひよが現れる。
びっくりなんてしてないからな、念の為に言うけど。
「出陣です!既に久遠さま、お頭は出陣しています!」
「わかった。ひよ、ころの二人は出陣の準備をしてる感じか?」
「え、はい……そうですけど」
「織田の兵が最近ピリピリしていたのはそういうことか」
演習後も兵たちが緊張しているような面持ちだったのはそういうことだったか。久遠はきっと斎藤家の勢力が落ちていると確信して、出陣。
おそらく、すぐに出ても皆がすぐに追いかけてくるということもわかっているのだろう。
「ひよはころと一緒にそのまま出陣の準備をしていてくれ。俺は詩乃と荷駄を」
「わかりました!」
ひよは慌ただしく俺の部屋を後にして出陣の準備に戻った。すぐ脇に置いてある刀を手に取り腰に挿して、上着を羽織る。
出遅れたが、久遠と剣丞がいるなら壬月レベルの将や数の暴力がない限りはないだろう。
「涼平どの、ほぼ準備はできています」
「やけに早いな……近々陣触れがあると準備してたのか」
「その通りです」
「なら、ひよところが準備出来次第すぐに出よう。後方は俺がつこう」
「お願いします」
近くにいる馬にまたがり、ひよところが剣丞隊の兵を引き連れてやってくるのを待つ。
結構待つのだろうかと思ったがひよころコンビは詩乃に言われて、すぐに出陣出来るような準備はしていたようだ。ざっと現状の剣丞隊の兵を見渡すと人数はおよそ百人。
「では稲葉山に向かいましょう!」
いざ、稲葉山ってね。
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稲葉山に建設された仮屋で主立った物が集まり、軍議を行っている。軍議の間に向かっているのは剣丞、ひよ、ころで俺と詩乃は留守番だ。
その間に、俺は詩乃から大まかな今までの流れとこれから行われると予想される話をされた。
「なるほど……獣道か」
「はい。裏から三の丸に潜入。内部から閂を開いてから本陣と合流に一気に攻め落とす。というのが剣丞さまのお考えです」
うーん、詩乃を攫ってくるとは中々やるな。
それに剣丞を呼ぶ時の詩乃は俺に対してやひよやころに対しても違う表情を浮かべている。
つまり、何が言いたいかといえば、詩乃は確実に剣丞に惚れているということだ。そういう女性ってのは相手をは結構見ているからなぁ。
まあ、そういうのは当人たちの問題だから俺は何もしないけど。
「少人数で進入することになるので、涼平どのにも参加してもらうことになるかと思います」
「それは別に問題ない。むしろ、剣丞を守るためにここに世話になっているからな。一緒に行かせてもらわないと困る」
「まずは剣丞さまが久遠さまから許可を貰わなければ実行できないのですが」
「それもそうか……っと、噂をすれば剣丞だ」
ひよところを連れた剣丞がこちらに戻ってくる姿が見えてきた。
剣丞は真っ直ぐ俺と詩乃の方に来たがひよころは剣丞から離れて兵を数人集めているようだ。
「詩乃。久遠から許可を貰った。作戦決行だ。それと涼平、久遠から伝言」
「ん?」
久遠から伝言か。なんだ?
「天の剣よ、頼むぞ……だって」
「……っ」
ああ、久遠……お前は本当に面白い子だ。この伝言は色んな意味を含んでいる。
剣丞のこと、城のこと……そういう意味だろう。剣丞は気がついていないだろうけど……こりゃ剣丞に何かあったら俺がヤバイな。
「任せろ」
「頼もしいなぁ」
「よろしくお願いしますね、涼平さん!」
「お頭早く行きましょう!時間との勝負です!」
「っと、そうだった。行こう」
でも、隠密って苦手なんだよな、俺。
稲葉山攻略したら日常回とかやりたいところ。
次回までお待ち下さい