表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/25

撤退


「御大将ー! 軒猿どもが越前一乗谷近辺にて、織田の軍勢を発見したっすよー」

「ふーん。案外早く着いたみたいね。それだけ織田が強いってことかしら?」

「そーでもないみたいっす。どうやら敦賀と手筒山、どっちも鬼が退却しちゃったらしいっすよ」

「退却ぅ? 鬼ってケダモノでしょ? 逃げるってんならともかく、退却するってどういうことよ?」

「そういう報告を受けたってだけで、よく分かんねっす」

「……頭がいるってことかしらね?」

「頭っすか?」

「そっ。ケダモノを制御する調教師。猿回しが居るって言うなら、動きも納得できるわ」

「なるほどっすー。けど厄介すねー」

「ホント、厄介だわ。あいつら大して強くもないし、すぐに逃げちゃうし」

「厄介といえば、織田の軍勢に雪月桜を背負った男が居たみたいっすよー」

「……アイツに間違いないの?」

「っすー。南蛮風の服に雪月桜を背負っているのはアイツしかいないっすし、みんな顔も服装も知ってるから間違いようないっす」

「そう、織田についたのね」

「それに織田、松平、浅井の連合軍の中に源氏の白旒旗が靡いていたらしいっす」

「なにそれ。公方が織田についたってこと?」

「っすかねー? 軒猿が言うには、白旒旗の横には二つ引両もあったらしいっすよ」

「一葉さまにアイツ……面白くなりそうね」

「御大将、早く帰らないと怒られるっすよー」

「この戦が終わったら帰るわよ」

「まあ、でも。確かに公方様とアイツが居るってなったら見逃せないっすよね」

「ええ。本当に面白い戦になりそうね」









「……」


 朝。

 陣太鼓の音が鳴り響いてから一乗谷を攻め込もうと森一家、松平、浅井の面々が攻め始めてからある程度の時間が経過した。先鋒の森家のお蔭でかなり押している状況で戦は順調に進んでいる。

 俺は剣丞からお願いされ、梅と転子に雫の三名と共に左翼の兵を纏めている。右翼は剣丞、ひよ子、詩乃が纏め、一葉と幽と八咫烏隊の面々は中央を陣取る。

 前日の軍議において、俺は中央に居たほうがいいのではという意見が出てきたが、軍師である詩乃の説明と隊全体の生存率を上げるには、俺が左翼の兵を纏めてもらったほうがいいと言うことで、先日の軍議は終了した。

 終了というより、なんか後半から違う路線の話になったから俺は先に帰っただけなのだが……。


 とにかくだ。

 兵たちはある程度バランスよく采配しているが、武将の采配に関しては左翼が少し薄いということで俺が入ることになった。剣丞には鞠が居るので、よほどのことがない限り心配はないだろう。


 どうやら剣丞が後ろ側の襲撃をかなり警戒している。まあ、歴史に詳しいならこの戦いはある意味重要な戦いであるから無理もない。今回の戦は歴史的にも有名な織田信長の撤退戦となる金ケ崎の戦いになる。


 俺も剣丞の警戒の理由を考えて思い出した。と言っても、浅井家が織田を裏切ったという内容しか知らないので、アテにならないというのが正直な話だ。

 それに、俺達の知識って外史では該当しないことが多いので、こんなことがあるかもしれないという感じにしかならない。それが三国の統一とか三国のほとんどの武将が生き残ってる外史から来た俺の意見である。


 周りを警戒しながら色々考えていると、ある程度の準備が終わったのだろうころが俺のもとにやってきた。

 ころの表情は少しばかり心配そうな顔をしている。


「涼平さん」

「ころ。どうした?」

「いえ。涼平さんもずいぶん警戒してるんだと思いまして」

「剣丞が昨日襲撃に備えろとは言っていたからな。だから、なるべく離れないように兵を配置しているしな」


 色々な話を聞く限り、鬼たちは連携ができるようになっているという話だ。本来であれば普通の戦のように苦戦を強いられる場面もあるはずなのにそれが一切なく、俺達はここまで来てしまっている。

 これで警戒するなというのが無理な話だな。


 剣丞からの警告もあり、今回の配置では兵がある程度密集するような配置にしている。


 色々考えが回ってしまう中、俺の前に覆面をした一人の女性が現れる。


「副長、失礼いたします」

「きゃっ!? ああ、霞さんかー。びっくりしたー」

「おう、霞か。どうした?」


 突如現れた霞にころが驚く。

 彼女は俺に報告などをしてくれる剣丞隊が抱えている草の一人だ。


「先鋒が一乗谷内部に侵入を開始しました」

「森一家が前を貼ってるにしても早いな」

「さらに、小波と共に周辺を散策しましたが、何も気配がありません」

「……ほう」


 この状況下で何も居ないか。何かありそうだが、その何かがわかりにくい。だが、いつでも対応できるように臨戦態勢にはしておく。

 その俺の気配を感じ取ったのか近くにいた梅や他の兵も同じように臨戦態勢に入った。


「わかった。何かあればまた報告してくれ」

「はっ。失礼いたします」


 そういって霞は再び俺から離れて周囲の警戒に戻っていった。

 少し相談してみようと思い、梅と一緒に居る雫のもとに向かう。


「雫、梅」

「はい、なんでしょう?」

「どうかしまして?」

「ああ、実は……」


 雫と梅に霞からの報告を伝えつつ、俺も感じ取っていることを話してみる。詩乃が認めている彼女であれば何かしら思いつくかもしれない。

 俺の話を聞いた雫は悩んでいるのか微妙な表情になり、梅は気味悪そうな表情を浮かべていた。


「どう思う?」

「確かに妙ですわね。この状況で周囲に何も居ないというのが引っかかりますわ」

「私達の作戦が活きているのでは?」

「それでも順調すぎるだろう?」

「確かにそうです。もしかしたら私達が思いつかない策でもあるのではないでしょうか?」

「詩乃や雫が追いつかない策ねぇ……」


 ふと、俺は空を見上げる。快晴だ。雲ひとつ見えないレベルで快晴だった。

 その後、地面に視線を落とす。

 人が思いつかない策……? いや、まさかと思いつつも、一応……一応確認しておこう。


「涼平さん? 何してますの?」

「静かに」


 俺はその場に四つん這いになってから耳を地面に当てた。

 そして、俺のまさかが現実になった。急いで身を起こして、抜刀。俺が出せる最大の声量で叫んだ。


「敵だ!! 構えろ!」


 俺の声が戦場に響いた。持ちうる最大の声量での掛け声で、周囲にいる全兵が臨戦態勢から戦闘態勢に切り替わる。周囲には何も居ないが、皆が構えた瞬間だった。

 地面が少しずつ揺れ始める。最初はかすかな揺れであったが、徐々に揺れ幅は大きくなっていく。


 確かにこれは人では思いつかない奇襲方法だ。敵ながらこれは見事と言わざるを得ないぞ!


「涼平さん、これは!」

「雫に言われてまさかと思って地面に耳当ててみたらこれだ!! くそったれ!」

「まさか!」

「ああ、そのまさかだよ! 奴ら、地中から攻めてきやがった!」


 そして周囲を囲むように鬼たちが咆哮を上げながら、地面から飛び出してくる。


 まずは届く範囲で出てきた鬼を速攻で叩き切る。

 恐らくコチラだけではなく剣丞たちの方にも同じような状況で鬼たちが現れているだろう。

 こんな地面から出てくるなんて三国でも経験したことねぇぞ、くそったれ!


 ここは攻めずに守りに入る!

 第一優先は雫だ。彼女の安全がこの場所で一番気をつけておかないといけないことだ。彼女がいなければ皆が動けなくなる。軍師居なくなったら詰むからな。


「雫!」

「はい! 恐らく、詩乃はこの混乱状態ではこちらを見捨てると思います」

「この状況で久遠と剣丞の命は絶対だ! 詩乃ならそうするだろうな!」

「……なので私達も独自に撤退戦を行うのが良いと判断します」


 退路に関しては昨日の打ち合わせで詩乃から聞いていたので目指す場所はわかっている。

 久遠とは逆方向の北へ逃げる。


「わかった! てめぇら! よく聞けよ! 俺たちは独自に撤退戦を行う!」

「副長! いいんですか! 頭たちに合流したほうが!」

「ここは別に逃げたほうがいいです! 合流をする場合、こちらと剣丞さま側にいる鬼も合流して戦況は尚更劣勢になります!」

「雫の言うとおりだ! むしろ、てめぇらは生き抜くことを考えろ! だが、雫や梅、ころはオレたちの命よりも重いぞ!」


 雫たちの命は足軽たちに比べれば優先されるものだ。もちろん、俺の命も立場的には優先されるだろうが、俺はこの隊の生存率を上げるために采配されている。

 恐らく、兵たちもそれを理解しているのだろう。鬼を食い止めながら声を上げている。


「そりゃそうだ!」

「姐さんたちは頭の女房なんだからな! 死なせるわけにゃいかないっすよ!」

「副長も損してますよね!」

「うるせぇ! お前ら撤退戦終わったら覚悟しておけよ!」


 刀身に気を集中し、道を開くために俺の前方に居る敵を蹴散らす。それを好機と見た雫が指示を飛ばす。


「剣丞隊の旗の元へ!」

「殿は俺がやる! 生きて剣丞たちに会うぞてめぇら!」

『応!!』

「雫さんに続いてください!」


 ころの合図で雫を先頭に切り開いた道を走り始める。


「おまけだ! もらっておけ!」


 俺も殿として走り始める前にもう一度、衝撃波を飛ばして数を減らしておく。雀の涙にしかならないだろうが、やらないよりはマシだろう。

 これから長い撤退戦が始まる。


 だが、未だに残っている。


「こりゃ、まだ何かありそうだな」


 隊の一番後ろで追ってくる鬼たちを眺めながら、馬を走らせる。

次の話を書いてる途中にパソコンフリーズして、全部消えました。悲しみ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ