二条館へ
涼平の単独編。
剣丞達は本筋通り進んでいます。
観音寺城を落としてから数日。
壬月たちも無事に合流した。その後、兵糧の確認と部隊の再編成に時間を費やしたが、ようやく京へと出発出来た。
しかし、その道中に松永弾正少弼が降伏を申し入れたということで剣丞達は瀬田に向かっていた。
その間、俺は一人で直接一葉たちのいる二条館へ向かっていた。
事の起こりは瀬田に向かうための道中で休憩中に久遠が提案してきたからだ。
『涼平、すまないが頼みたいことがある』
『どうした?』
『先行して一葉の元へ行って貰いたい』
『それは構わないが……大丈夫なのか』
『時間が惜しい。それに例の件に関して一葉に渡してほしいものもある。無論、剣丞には涼平を伝令として向かわせる許可は貰っている』
『……わかった。最速で届けてやろう』
『書状に関しての内容は今は伏せるが、お前に話すかは一葉に任す』
そうして、久遠から書状を受取ってから今に至るまで二条館を目指して走り続けている。馬は目立つので自分の足だけで、何度か水分補給などで休憩を挟んだが道中に何事も無く普通に到着。
すると正門前で出迎えてくれたのは幽だった。
「おや、涼平どの」
「お前、なんで此処に居るんだよ」
「一葉さまがそろそろ涼平どのが来るとおっしゃって降りましたのでお待ちしてました」
「そっか。一葉は?」
「寝所に在らせられますが、涼平どのがお越しになるとまだ起きておられます」
「寝所まで行って大丈夫なのか?」
一応女性のプライベートなお部屋ですからな。
「ええ、涼平どのが来たらすぐに通せと」
「わかった。案内してくれ」
「こちらです」
そういって先導する幽の後について歩く。
「随分とお早い到着でしたな。馬の扱いもお手の物で?」
「いや? 走ってきたぞ」
「……はい?」
「自分の足で最短で真っ直ぐに」
「……本当に人間ですか、あなたは」
「失礼な」
むしろ、この世界の武将に比べたら俺なんて普通すぎるような気がするんだが……人より体力がある自信はあるが。
「一緒に旅をしているときも思いましたが、涼平どのは中々に体力バカなようですな」
「おう、お前を抱えながら色々逃げることになった時は、自分の体力に感謝したな」
「お陰で楽でしたな」
「……」
こいつむかつくんですけどぉ。大体抱える原因この子なんですけどぉ。と少しばかりのイラつきを覚えたところで、幽の歩みが止まった。
おそらく寝室とやらについたのだろう。襖の奥には一葉の気配もするので間違いないようだ。
「公方様、涼平どのがいらっしゃいました」
「入れ」
「御意。涼平どのもどうぞ」
「ああ、ありがとう」
そう言われて、幽が開いた襖を抜けると、寝室の真ん中で静かに座っている一葉がいた。
「来たか、涼平」
「ああ……とりあえず、久遠からの書状がある。目を通してくれ」
「うむ」
久遠から受け取った書状を一葉に渡す。しばらく書状を静かに読み始める一葉とそれを見守る俺と幽。
そして、書状を一通り読み終えた一葉は遠くを見つめ、ポツリと漏らす。
「そうか……決めたのだな、久遠」
「?」
何を決めたのだろうか? 確か、書状を貰う前にあの件と言っていたな。俺が久遠から聞いてた話……。
もしかして、この前呼ばれた時に少しだけ言っていたアレか?
「涼平、私は次の戦いを終えたら剣丞を私の良人とし、鬼に立ち向かう意志のあるものは剣丞を良人とする」
「ふむ、そうか」
「むっ、反応が薄いな」
俺の反応に不服そうな表情をする一葉。
「久遠から少し前に話だけは聞いていたからな。どうしてそうしたかは予想はつく」
「涼平どのにしては冴えてますな」
「そりゃどうも」
似たような経験があるとは言えない。剣丞を良人にすることにより、やる気が出る子もいるだろうしな。
恋する乙女ってのは強いって貂蝉が言ってた。
「まあ、これにより剣丞は国が認めた誑しとなるわけだ。なぜ、此処に涼平の名がないのかが気になるところであるが」
「俺?」
「もしかしたら、涼平と添い遂げようとする者もいるかも知れぬだろう?」
「いやー、ないだろ」
「世の中というのは何があるのかわからんぞ」
「それはそうなんだろうが……それはそっちが落ち着いたらゆっくり考えようじゃないか」
今は俺の話よりも剣丞の方だろう。そのお触れが出たのであれば、剣丞の側室関係がややこしくなる。結菜が苦労する光景が目に浮かぶぞ。
それに俺は剣丞のようにこの世界に留まれるという保証がない。役目を終えれば、俺は元の外史に戻るかもしれないし、戻れないかもしれない。そんな状況なのにやれ婚約だのとは言っていられないのである。それに俺は既婚者だし、そういうのは出来ないと思うのだが……。
少し悩んでいると、
「まあ、それは久遠が居るときにでも話そう。涼平。剣丞や久遠はどれほどで到着するのだ?」
「ん? 少なくとも一日はかかると思うぞ。久遠が時間が惜しいって言って俺を先に行かせるくらいだからな」
「ふむ、そうか」
「んで、これから剣丞が来るまでの間……まあ、短い時間であるが俺は一葉と双葉の護衛をする」
「良いのか?」
「幽が居るとは言え、いつ襲撃が来るのかもわからないからな」
心配はないとは思うが念のために。多分、一葉って俺より強いと思うけどな。鞠の姉弟子だし……。
とにかく俺は剣丞が来るまで護衛として二条館に泊まり込むことになった。
しかし、護衛といったが特に何も起こる事はなく、鍛錬と一葉から多少のアドバイスを貰った位だろう。少しだけ動きが良くなった気がする。この歳でも成長ってのはできるようだな。これからも訓練は怠らないようにしよう。
剣丞達がやってきたのは次の日の夜であった。
次回、キングクリムゾンして戦います
今年最後となります。25分前です。
来年もよろしくお願いします




