観音寺城攻め前
2000文字ないです。短いです。
お久しぶりです。
美濃を出発して、関が原を抜けて近江路を行軍する。
途中で壬月、和奏、犬子と別れ、軍を再編成して更に西に向かった。
道中、幾つかの小城が行軍を阻んだが、織田木瓜が見えた途端に城門を開いて降伏してくる豪族ばかりだった。
これはひよやころ達による調略のお陰だろう。
現在、剣丞隊は丹羽衆、滝川衆と分かれ、俺たちは琵琶湖を望みながら西進して観音寺城の麓に到着した。
剣丞たちは崖の方で観音寺城の全体を眺めている。
いつものように俺たちは城内に忍び込んで、本丸を攻めやすいようにしていくと思っているので俺は離れた位置でのんびりと空を眺めている。
今日も晴天。いい天気だなぁ。
「あー!涼平です!」
「ん?」
不意に声を掛けられ振り返れば鹿の角をあしらったパーカーのような物を着込んだ小柄の少女がいた。
その人物は俺が短い間であるが世話になった武将の一人であった。
そっか、松平がいるならこの子もいるよな……。てか、今まで会わなかったのがすごいな。
しばらく剣丞隊の訓練に付きっきりだったし、裏方が多かったからか?
とにかく、返事を返しておこう。
「よう、綾那」
「涼平、今度は織田に入ったです?」
「ああ。傭兵じゃなくて正規兵としてな。お前が見たっていう空から来た人が俺の探し人だったわけだ」
「涼平は剣丞さまを探してたですね!」
「そんなところだ」
この小さい子は綾那。武将としての名前は本多忠勝。
日本史を題材にしたゲームなどでは恐ろしい性能を持っている武将だ。向こうの世界で言うところの呂布みたいなものである。
見た目に騙されてはいけないといういい例だろう。
こんな見た目でも彼女の膂力は俺以上だったりするので、本当に見かけじゃ判断できない。
綾那が剣丞を見たという話を聞いた俺はすぐに尾張に向かい、出会うことが出来た。
思えば、綾那が居なければ剣丞に会うこともこうして織田に身をおくことも無かったのだろう。
ふと、いつも大体一緒に居るもう一人の武将の姿が見えないことに気がついたので、綾那に訪ねてみる。
「歌夜は居ないのか?」
「歌夜なら殿様と一緒なのです」
「ほう……」
綾那がいう場所に視線を向ければ、見覚えのある人物がちらほらと見える。松平兵の集まりだな……。
その中に綾那と同じくらいに世話になった武将もいた。
「あとで挨拶にでもいくかな。俺もそろそろ戦の準備をしないといけないし、そっちもだろう?」
「そうですね。じゃあ、全部ぶち殺したら会いに行くです!」
「ああ、待ってるよ」
ぶち殺すって物騒過ぎるがこの子に取っては普通なのである。
彼女も桐琴達と似たような戦闘民族なんだと思う。そのうち、ワクワクしてきたです! とかいい始めるのだろうか?
とりあえず、綾那とは別れて俺はどうするかなぁ。
「涼平」
「久遠……?」
綾那の次に声を掛けられて振り向けば不安そうな表情の久遠が居た。
まあ、彼女が不安な顔をする時は決まって剣丞が絡んでいるので、今回もそれだろう。
それでも俺のところに来るのは珍しい。
「大将がそんな顔するんじゃない。不安なのはわかるが士気に関わるぞ?」
「そんなに、顔に出ていたか?」
「ああ。久遠がそういう顔の時は基本的に剣丞が絡んでる。付き合いが短くてもそれはわかるさ」
「ふふっ、そうか」
「まあ、剣丞は任せておけ。俺は天の剣だ」
「心強い……しかし、涼平も私の兵だ」
「わーってるよ。任せておけ」
それに、久遠の不安そうな表情が少し落ち着いたようにみえる。
久遠は身内には相当甘いみたいだ。まあ、自分の夫が危ない目に合って心配にならないほうがおかしいか。
うちの人もこのくらい心配してくれればいいんだけどなぁ。
昔の事を色々思い出していると、迷いのない久遠の号令により観音寺攻めが開始された。
相変わらずの押せ押せな三河の攻めを眺める。
しばらく、懐かしい攻めを眺めていると、話し合いが終わったらしい剣丞が俺を呼びに来たようだ。
「涼平ー!! そろそろ」
「おう、待ってたぜ。どういう感じだ?」
「うん、俺と小波、鞠、涼平、あと二人くらいで獣道を通って本丸に行こうと思うんだ。申し訳ないけど、残り二人を見繕ってくれないかな?」
「身軽なやつを呼んでくる」
「その間に準備しておくからよろしくね」
「了解」
一旦、剣丞と別れてから待機している兵たちの中から潜入に向いてそうな二人を呼ぶ。
二人は自分たちが呼ばれたことですぐに裏から潜入することを察してくれたので準備に取り掛かってくれた。
大体の流れは移動しながら剣丞に説明してもらうことにして、出立といきますか。
攻め込み前。短めでお送りしました。
涼平、綾那と再会するの巻。




