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出会

将軍に出会う前になんか厄介事に巻き込まれた by涼平

 あの後、五日間滞在して堺を出た。その間に海外の商人や外貨に関してを学んだ久遠はごきげんだった。

 あの時の久遠はまさに好奇心にあふれる子供のような目をしていた。

 ……外見年齢ではまだ子供に部類されるから、歳相応といったところか?


 まあ、そんなこんなで京についたのだが……。


「京って割には……寂れてるな」

「優雅なところのはずなのにね」


 京と呼ばれるほどだから堺より賑わっているのかと思えば、その逆だった。剣丞も京の現状を見て驚いているようだ。

 そんな目の前の光景に驚いている俺と剣丞にころが説明をしてくれた。


「応仁の乱以降、京は寂れる一方なんですよ。なんでも公方様は言うに及ばず、

畏き所でさえ、その日の食べ物にご苦労なさっていると聞きます」

「戦乱の世とはいえ、お労しい限りですね……」


 お偉いさんですら飯が食えんとは……困り者だな。

 まあ、偉いからこそ畑も耕せないし、交渉なんかもできないんだろうなぁ。農民出身な偉い人でも出てくれば、そういったことも起きないのかもしれない。


 と、後ろから人の気配を感じた。

 その気配が剣丞にぶつかりそうだったので、剣丞をこちら側に寄せようと手を伸ばす。


「お頭!危ない!」

「え……うおっ!」


 が、間に合わず、剣丞は走ってきた人物とぶつかってしまう。剣丞は反射的にその人物を庇って倒れた。

 剣丞に一番近かった俺の鼻に綺麗な銀髪の女性の香りがした。

 なんだ?この匂い……。


「い、いってぇ……」

「この匂い、どこかで……っ!」


 この匂い、一度どこかで嗅いだ覚えがあるのだが、その考えに没頭する前に剣丞にのしかかっていた女性が剣丞の腰から刀を抜き放ち一言。

 剣丞は何が起きたのかわかっていないのかかなり困惑している。


「借りるぞ」

「え?え?」


 どうやら彼女は追われているようで、彼女が向かってきた方向からかなりの数の足音が聞こえる。

 というか、剣丞よ。刀をすぐにとられるのはまずいぞ……なんだ、美人が居ると見惚れるのは血なのか? 血なんだろうなぁ……。


「剣丞は下がって三郎様を守れ。俺がやる」

「うん、わかった」

「要らん」


 剣丞の刀を取った女が俺に鋭い視線を向ける。無防備に構えているようで、その実、彼女には隙がない。

 かなりデキる人のようだが……そんな人なら忘れないと思うが。


「あんた何処かで会ったことないか?」

「……知らんな、貴様のような野蛮な輩は」

「……そうか」


 絶対どっかで会っていると思うんだが……もしくは何処かですれ違ったのか?

 多分、剣丞と出会う前に彼女から香る匂いを嗅いだことがあるはず。

 でも、中々思い出せない……。


 と、いかにも俺たちはゴロツキですって感じの人間が数人やってきた。


「お、なんや兄ちゃん!そのアバズレの仲間かぁ!」

「いや、単に通りかかりだ。……事情はよくわからんが、ちょっと体動かしたいのでな」


 女性は完全に足軽たちを斬るつもりなのか、殺気が少し感じ取れる。あんまり殺してしまうのは勘弁してほしいのだがな……後処理めんどいし。


「おう、兄ちゃん!素手で刀持ちとやろうってのかい!」

「なめとんか、ワレェ!!」

「……ふぅ」


 こちらに向かってくる足軽を迎撃しようと一歩前に出ると、隣に居る女性がため息を一つ。

 すると足軽の持っていた槍が細切れになった。


「……まじかよ」


 始動は見えたがその後が一切見えず、つい言葉を漏らしてしまった。

 あれほど動作が見えない相手は初めてだ。向こうは膂力があるやつが多かったが、こちらでは技が洗練されている人物が多いような気がする。剣術が浸透してきているのが関係しているのだろうか。時代的にはこっちのほうが後になるからな。

 んー、こういう相手多いとなると色々まずいなぁ。


「よそ見してんなや!にいちゃ……ぎゃっ!?ぬぉっ!?がっ!?」


 こっちに向かってきた足軽の顔面を殴ってから、足払い掛けて転ばした後に追撃で倒れた足軽の腹部に蹴りを落とす。足軽の骨が折れない程度に蹴りを放たないと肋骨が折れてしまえば、この時代では治せない。

 ……早く外科手術とか浸透すればいいのだがねぇ。


「畜生がっ!」

「おっと」


 足軽が振り下ろしてくる刀に合わせて、刀の側面に捻りきった拳を捻り上げて顔面に叩き込む。足軽は何が起こったのかわかっていないのか、困惑した表情をしている。

 この技、便利だぞ。最小で最速の払いと突きを瞬時に叩き込める古式空手の一つだ。


「がっ!!……何だ今のは!!」

「教えるかっつーの」

「むぐぅお!?」


 手刀で足軽の顔面を打ち、気絶させる。女性の方はどうなっているのか気になって視線を向ける。

 どうやら、その心配はないようだった。


「す、すごい」

「ええ、まるで舞のような……」


 久遠から刀を借りて、久遠を守っていた剣丞が呟く。女性の戦いを見ていたエーリカも言葉を漏らす。

 俺は状況を見ていないからなんともいえないが、気配でわかっている。


 こっちが二人相手にしていたのに対し、女性は数人を一瞬で倒していた。

 どうやら、殺す気はなかったのか峰打ちで対応しているようで……。

 しかし、こちらが二人倒してる間に数人倒せるとか強すぎだろ。


「こ、この兄ちゃんこっち見てねぇのになんd……んぎゃっ!?」


 すると、剣丞が突如こちら……というより女性の方に向かって来るのが見えたが、女性に見惚れていたせいか初動が遅れている。

 この状況で危ないのは彼女ではなく、ゴロツキの兄ちゃんなんだよな。


「えい」

「んぎゃ!?」


 女性の後ろから斬りつけようとしている足軽を蹴り飛ばしてから、篭手を先ほどいたゴロツキの頭辺りに構える。

 確かこの辺りに……。

 その直後だった。


「うおっ!?」


 どこからか聞こえてきた銃声と共に銃弾が俺の手につけている篭手に弾かれ、そのまま銃弾は地面にめり込む。さっきから妙に視線を感じると思っていたが、どうやらその原因は撃った人物がこちらを見ていたからだろう。大雑把な観測だが結構な距離があるな……視線だけは感じ取れる。


「久遠と詩乃を守って!」

「「はい!!」」


 剣丞が銃声を聞いてから、ひよところに久遠、詩乃を守るように指示する。女性は対照的にやる気を一気に削がれたのか俺を見ながらため息をつく。


「…余計なことを」

「……」

「返す」


 そういって興が削がれた女性は俺に剣丞の刀を投げてよこす。俺はそれを普通に受け取り、刀が壊れていないかをチェックすしている横で、女性はそのまま走り去ってしまった。


 剣丞が俺の方に寄ってくる。


「涼平、大丈夫?」

「え?何がだ?」

「何って、手に弾が当たってたじゃないか」

「……ああ、篭手に当たっただけだし問題ない。ほい、剣丞」

「ありがとう。……怪我がないならいいけどさ」


 一応、銃弾が当たった場所を確認するが特に損傷はないため問題ない。

 この篭手はかなり頑丈に作られており、俺が持っている刀と同じ素材でない限りは壊れない。堺で世話になった爺さんがそう言ってた。


 すると久遠が感心するように


「中々いいものを見たな」

「良いものどころか。……そこいらの達人以上に達人だよ、あの子」

「ほお。そこまでか。……剣丞の姉さんたちとやらと比べるとどうなのだ?」

「同じ位じゃないかな?……俺じゃ絶対に勝てないと思うよ。多分、あの子の強さは近くに居た涼平が一番わかってそうだけど」

「ん?ああ……俺の今まで出会ったやつの中ではかなり上位に入る実力者だな」


 恋と同じレベルじゃないかね。技量ではあの子、膂力で恋みたいな感じだろうが……。

 多分、この世界ではかなり上位……というよりは、一番じゃないか?初動見えなかったもんなぁ……。


「先ほどの鉄砲……気になりますね」

「周囲を探ってみましたが、鉄砲を撃った人物は見当たりませんでした。よほど上手く隠れているか……」

「鉄砲の物真似がすごく上手い人か!」

「なるほど。その可能性もあります」

「……おいおい」


 俺の篭手に銃弾当たってるからね。ひよ、流石にそのボケはないぞ、うん。


「俺たちには見つけられない距離からの長距離狙撃じゃないかな?」

「詩乃、鉄砲の射程ってどのくらいなんだ?」

「国内に流通している鉄砲は国友筒と堺筒が主なものですが、射程はおよそ二十間から三十軒ほどですね」


 大体の換算で最大60メートル程度。

 でも、視線の距離と俺が気配を感じ取れないほどの長距離ってなると200メートル程度か。


 少し周りを見渡してからその場所に指を示す。


「多分、俺の篭手に当たった角度から計算して、あそこら辺だな」

「……あそこっぽいね」


 大体目測の距離に合致する場所に警鐘がぶら下げられてる櫓がある。


「ここから百間ぐらい離れてますよ、あそこ。……そんな距離から涼平さんを狙撃するなんて、できるんでしょうか?」

「出来るというか出来てるんだよね。世の中には怖い人がいるもんだ」

「かなり強力な玉薬を使ったのでしょう」

「それでも火縄銃で長距離……それを当てるなんて人間業じゃないですね」

「……一発ではないし、狙ったのは涼平ではない」

「へ?」

「そうだろう、涼平?」


 久遠が悪戯を思いついた子供かのように


「おお、流石だな。気がついてたか」

「え?どういうこと?」

「涼平が足軽を蹴り飛ばしてから銃弾が飛んできたろう? 蹴り飛ばして無ければあの足軽は死んでおった」

「え?そうなの!?」

「それに涼平は戦いの中、何度かあの櫓の方向を見ていたからな」


 うわっ、そこまで見られてたのか。

 確かに、久遠の言うとおり俺はたまに視線が気になってそちらの方向を何度か見ていた。視線感じたらそっち向いてしまうだろ?

 そういうことなのだ。


「涼平、さっき驚いたのは一発では無かったからではないか?」

「……正解。一発だけかと思ったら篭手に二発あたっていたからな」

「でも、銃声は一発分でしたよね?」

「多分、二人で同時に撃ってきたんだろう。いやはや、この篭手じゃなかったら怪我してたぞ」


 ころの言うとおり、銃声は一発分だったが実際には二発だった。正確に撃ってくれたから無事だったと考えると複雑だが……。


「恐らく根来ねごうか雑賀の手のものでしょう」

「だろうな。……詮索は後にしろ」

「……久遠、俺が少し時間を稼ぐ。将軍が居る館で会おう」

「頼んだぞ、涼平」

「任せておけ」


 一応、久遠とはこういう場合を想定して話し合っておいた。場所さえわかれば迎えるし、大勢で行動するよりは一人でオトリになる方が時間を稼げる。

 それに、ここでやりあったのは俺だから目撃した人が居ても俺だけが追われる……はず。


「久遠さま、剣丞さま!こちらです!」

「苦労。行くぞ!」

「涼平、気をつけてね!」

「涼平どの、お気をつけて」

「後で会いましょうね、涼平さん!」

「お待ちしてますね!」

「あー、分かったから早く行け」


 剣丞達は俺に一言言い残してその場から走り去っていく。将軍が居るって場所は二条館だったな。


「居たぞ!!」

「っと、やっべ」


 剣丞たちの姿が見えなくなったのと同時に岡っ引きっぽい人たちが俺の方に向かって走ってきているのが見えた。

 さて、鬼ごっこでも初めますかねぇ……。

番外から一ヶ月とか筆進まなすぎですね。

次は涼平は別行動となります。

なお、涼平がいない場合、剣丞くん達は原作通り進んでいるという感じです。


次回をお待ち下さい

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