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諫早学園は音楽に特化した高校。
プロで仕事してるような奴らもいて、音楽関係の事を学べる。
オレは中学でギターいじってハマって、ギタリスト目指してる。
寧々が好きなHollyhockってバンド。ギタリストのSakuに憧れてたりすんだ。あんな技術を身につけたい。
「ねー、練習室行こうよ、練習室ー。」
まとわりついて来る寧々をあしらいながら、オレは歩いてる。
背中にギター。右に鞄。左に寧々をぶら下げてるオレ。歩き辛い。
寧々はどうしてもヒロインとの出会いイベントってやつをオレにやらせたいらしい。
諫早は、普段学ぶクラスは混合だけど、練習室は使う内容で校舎が別れてる。
第一は楽器。第二は歌。第三はダンス。あとは臨時用の第四校舎があって、校内の敷地は広い。
ギターの練習するオレが使えるのは第一校舎にある練習室。寧々の言うヒロインってやつは歌だから、使うのは第二校舎のはずなんだ。なんで第一の練習室に来るのか、マジ謎。
「寧々は歌の練習は?」
「するよー。でも出会いのイベントスチル見たいから隠れてる!だから、ね?行こ?」
くりくりの目で上目遣い。
これ、ヤバイ。ほんと可愛い。
寧々のお願いに弱いオレは、結局第一の練習室向かった。
ギターセッティングして、寧々はどうすんだって見てたら、掃除用具用のロッカーに入ってる。バカだ。
「ゆうくん、閉めて!隠れてるから、言った通りに頑張ってね!」
「そこ、汚ねぇだろ。」
「でもここしか隠れらんないもん!夢ちゃん来るから、閉めて!練習してて!」
放課後の練習室。いつもは人で埋まってるのに、今日は何故かここだけ空いてた。
「苦しくなったら、出て来いよ?」
「オッケーだよ!」
期待に顔輝かせてる寧々に溜息吐いて、オレは寧々が入った掃除用具入れのロッカー閉めた。
何弾こうかなって、適当に音出し。んで、指慣らしの後は流行りの歌のメロディを弾く。
少ししたら、美少女が練習室入って来た。多分これが寧々のいうヒロイン。愛野夢だ。
ギター弾いてるオレを見て申し訳なさそうな顔しながら、なんか探してる。
オレは寧々に聞いてるから彼女の探し物知ってる。場所も知ってる。
でもオレはギターを弾き続けた。
ほどなくして、ヒロインは筆箱を自力で見つけ出して、お邪魔しましたって頭下げて出て行った。
寧々はいつ文句言いに出て来るかなって、考えながらギターを弾く。
かたん、ロッカーの扉が開いて、困ったように眉を下げた寧々が出て来た。
「出会いイベント…失敗。天野勇、攻略不可になっちゃった…。」
「へー、そうなんだ。」
困ってる寧々に適当に返事して、寧々の好きな曲を弾き始める。
「歌の練習。」
促したら、寧々はふにゃって笑って、オレの隣来て歌い始めた。
寧々の可愛い高い声。
それに合う恋の歌。
オレの想い、自分の想いに気付いてよって、似たような歌詞の歌選んで寧々に歌わせた。