表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽善者と魔法のカラクリ  作者: 現夢中
旅の始まり
2/13

旅の始まり(1)

 痛い、たぶんすっげえ痛かったんだと思う。

でっかいトラックに頭をトマトみたいに潰されて、身体の骨はバキバキで。

あーもうだめだってなったはずだ。

 だけど意識はある。

 つまり……死後の世界ってのはあったってことか?


「俺は死んだらそれで終わりだと思ってたが……宗教信じてないし……」


 むくりと身体を起こす。

 周囲を見渡すと、草原だった。風が気持ちいい。


「天国? 綺麗なところだな」


 すうと空気を吸う。

すごく美味しい、コンクリートジャングルとは比べ物にならない。


「……で、結局ここはどこで俺はどうすればいいわけだ?」


 一応立ち上がって、パンパンと砂埃をはらう。

 どうやら、衣服は生前のものらしい、学生服を着ていた。


「こう言う場合、とりあえず案内人とかでてこないもんなんですかねぇ……」


 じゃないとわからないじゃないかと思う。

 だが次に聞こえた声は、案内人のそれではなく。


「いやぁぁーー!! 変態! 変態! 近寄るな!」


 ……誰かの助けを求める叫び声だった。


「天国にも変態っているのかよ……絶対神様の選別間違ってるわこれ」


 といいつつも、声のしている方向に走り始める。



 草原を抜けて、少し暗い森の中。

声の主は、そこにいた。


「お嬢ちゃん、変態とはひどいなぁ。おじさんは変態じゃなくて"変態に君達を渡す"仕事してるだけだよ」


「嫌! あんたも変態よ! 生理的に受け付けない!」


「酷いいわれ様だね。まぁすぐに無駄口も叩けないようにしてあげるよ」


「嫌あああ! 助けてえええ!」


 助けを求めている少女は、一際大きい木に追い詰められる。

追い詰めている男は少し小太りで、イカニモといった感じだ。

 少女はローブを深く着込んでおり、ここからだと体系はわかっても顔は見えない。


(天国にもこんなのいるのか、幻滅レベルだな)


 とにかく、助けるしかないと木々から飛び出る。


「あの、おじさん。その子離してあげてくれませんか?」


「あ? 誰だお前」


「ただの高校生ですが」


「コウコウセイ? わけのわからんこといってんじゃねえよ。ぶっ殺すぞ」


 女の子に対する口調と自分に対する口調に、あからさまな差異がある。

こいつは極端だなと思う。

 すると男は、ポケットから掌サイズのナイフを取り出す。

 ……今日日DQNでも取り出さなかったぞ、大人気ない。


「しっかしまぁ……」


 どうするか。

 相手は武器持ち、さらに自分より体格は大きい。

 余裕なフリはしてるが、実際めっちゃ怖い。


(やっぱりあの手しかないか……)


 すうと息を吸う。

そして大きな声で叫ぶ。


「おいおっさん。どうした? そのナイフで俺を刺すんだろ? 早くこいよチキン野郎」


 恥ずかしい。

 極端な挑発すぎて、相手がのってくるかすらわからない。


「……誰がチキンだってッ!?」


 さ、さっきの挑発で乗るのかよ!

 男はナイフを突き出したまま、こっちに突進してくる。

問題はここからだ。

 このナイフを避けきれるか。

 避け切れれば、逃げて少女と一緒に逃走できるだろう。

 だが避けれなければ。


(天国で死ぬとどうなるんだろ……)


 男が叫びながら、ナイフをさらに突き出す。

完全に俺の胴体を狙ってきている。


(DQNの突きよりも遅い速度なら……チャンスはある!)


 ナイフの切っ先は、俺の胴体を狙う。

DQNの拳と、ナイフの切っ先が被る。

 ……いける!


「よっ」


 身体を横にずらしながら、前に一歩踏み込む。

ナイフの切っ先は、さっきまで俺の身体があった場所を切り裂く。

 さて、避けたけど結局俺にコイツを伸すほどの実力はないので……。


(逃げる!)


 踏み込んだ足を、もう一歩前に進める。

ナイフをはずしてあたふたしている男の横をぬるりと抜ける。

 ついでに背中を一押し。


「うおおおッ!?」


 男は前のめりに倒れこむ。

どんだけ力んでたんだこの男は。


「えっと、逃げよう!」


 少女の近くまで走ってきた俺は、少女の手を取る。


「えっ!? あ、うん!」


 少女は一瞬驚いた顔をしたが、一緒に走り出してくれた。

そのまま俺達は、男の姿が見えなくなるまで走り続けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ