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A humanoid's cleric

作者: 黒い案山子(空に生きる)
掲載日:2014/01/25

『お願い!お兄さんを助けて!』


「!酷い怪我だ…!早く、担架を!」


「君も酷い怪我よ?早くこっちに!」


『アタシは良いの…!アタシなんかより、お兄さんを早く!』


運ばれてきたのは、一人の青年だった。


――頭部のダメージが、深刻だった。

サラ…シャラ…と、布ずれの音がする。


カプセルの近くで、白衣の人達が何か作業していた。


「…これが本当に、あの…?」


「何回目かしらその質問。」


「だから本当だと言ってるだろう…」


透明なカプセルの中…そこには一人の青年が眠っていた。


口の辺りには酸素マスクをつけられている。


「……目覚めるのですか?」


「…貴方、疑問が多いわね。」


「目覚めるとも。」


どうやら、白衣の人間は三人…いや、喋っていないのが一人いる。


――パシュッ。


小さく、空気が漏れる音がした。


四人は、一斉に音の方に顔を向ける。


それは、カプセルの方で…


「………………?」


眠っていた青年が、身を起こしていた。


「……気、付いた?」


ややカタコトの言葉で、パソコンをいじくっていた男が話しかけた。


青年は困った様に口を開いた。


「…ここは?」


「ここは――えーっと…」


白衣の女が言い淀む。


それを横に見つつ、答えていた男が言った。


「ここは医療施設だよ。」


言いながら…青年に手を貸した。


青年は助けられながら…言った。


「誰か…私の名を知らないか?」


一瞬で、空気が冷えた。



「…言う事。わかたか?」


カタコトの男…ラーガに言われ、青年は頷く。


「ああ…。ありがとう。」


「他には何かあるか?えーっと…ウェース。」


質問が多い男…ゲァナは言った。


青年…ウェースはやや首を書きながら返した。


「…私は大悪魔を倒すのが目的だろう?」


「ああ…それがどうかしたかい?」


答えていた男…スーダ所長が返す。


「倒したら…どうしたらいいんだ?」


「貴方の好きにしたらいいと思うわよ?」


白衣の女…ラフェルが言う。


ウェースは頷いて…歩き出した。


外へ行く為に…。


「気をつけるんだよ」


スーダ所長の言葉に


「……分かってる。」


小さく頷いて、ウェースは外へ出ていった。



『ギャアアアアアッ!』


小煩い悪魔を聖水で黙らせ、ウェースはそのまま進む。


――あの時から、既に50年は経過していた。


だが、ウェースには“年齢”という概念が無いかの様に、若いままだ。


「…しつこいな…」


―――もっとも、ウェース自身はその異常性に気付いていない様だが。


「…一体、何処にいるんだ…大悪魔は…」


途方も無い道筋…ウェースはまだまだ、歩み続けた。



100年が経過した。


流石に、彼も自身の異常に……


「あれは…?」


気付いていない。


――彼は一人で旅を続けているから…気付かないのも無理が…?


『あ、お兄さん!良かった、生きてたんだ!』


ウェースの元に、小さな女の子が駆け寄ってきた。


『心配してたんだよ!』


「……君も、悪魔か!」


聖水を取り出した。


女の子は…慌てている。


『覚えて、ないの?アタシだよ?ニーシアだよ!?』


ボンッ…と煙を立てて、17くらいの年になった。


ウェースは更に警戒するが…僅かに頭を押さえた。


「……君は……キミ…は…?」


ウェースが何かを言う前に…


「悪魔は…滅すべし!」


清められた剣が、ニーシアを貫いた。


「…ぇ…?」


『え…う、そ…?』


真っ赤な血が地面に落ちる。


血が土に吸われていく。


ウェースは頭痛を感じ…ニーシアの方を見た。


ニーシアの背後では…見知らぬ男が微笑んでいた。


その姿が消える寸前に…ウェースは叫んだ。


「……ニーシア!君は…私を覚えてたのか!!」


ニーシアは、微笑んで…消えた。


「大丈夫か、求道者殿。」


剣をつきさした男が、笑う。


ウェースは混乱しつつ言った。


「あの子は…あの子は、本当に悪い子だったのか?」


「…悪魔に良いも悪いも無いだろう?求道者殿。」


男はただぽつりとそう言って、そのまま歩き去った。


ウェースは、夜眠り…思い出した。


今までの全てを。



『……人間が何の用だ?』


大悪魔が、ウェースを見下ろす。


「私の使命をはらしに来た!」


リィイ…と音を立てる短剣を構え、ウェースは言う。


彼が全てを思い出してから…たった数日後の事だった。



『キサマ……これほどの力で………グアアアアアア!!』


大悪魔が、ウェースの腕を引きちぎる。


ウェースは飛んだ腕を本能的に拾い、断面につけた。


腕は…完全にくっついた。


『キサマ…まさかヒューマノイド…!』


「そんなの、知らない。」


ウェースの最後の一撃で…大悪魔は、消滅した。


不気味な言葉を残して。


『我は再び現れる!』


ウェースは…それを眺めた。



大悪魔の住処から脱出した後、ウェースは立ちつくした。


何も無かった。


自分がヒューマノイドか人間かなんて、もうどうでも良かった。


感情は無い。


なのに、この苦しさは何か…?


分からなかった。


分からないまま……ウェースは眠りについた。



“活動終了”したウェースを、あの四人が拾いに来た。


四人の姿は…何も変わっていなかった。


「寝てる。早くつれ、帰る。」


ラーガが言って、普通に持ち上げた。


「慌てないの;…何処も酷い部分は無いわね。」


ラフェルが簡単に怪我(こしょう)の具合を見て頷く。


「……で、現われたらまた目覚めるんです…よね?」


ゲァナはまた疑問をスーダ所長にぶつけた。


「目覚めるだろうね。…我々が、止めても。」


所長は、寂しそうにつぶやくと…空を眺めた。



悪魔達のいなくなった空は、何故か晴れやかに見えた。

登場人物・用語説明


ウェース・レイヴン

本作主人公。酷い怪我を負って百年眠り、その間にヒューマノイドにされた。

目覚めた時には怪我の影響で、全ての記憶を失っていた。

そこから百年間、たった一人で生き抜いてきた。

髪は黒く、眼は淡い黄色。時折、明るい色の火を放つ。



ニーシア

リリスの女の子。ウェースに救われ、一緒に旅をしていた。

ウェースはリリス(倒すべき敵)だと知っていたが、手を下さなかった。

二百年経ち、彼女は立派なリリスの一人となったのだが…。

髪は桃色で、眼は紫色。



ヒューマノイド

人を機械化した、元人間。

感情を持たないが、演じる事は出来る。涙は流せない。

自己修復機能があり、ちょっとやそっとの傷では壊れる(しぬ)事はない。

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