こうして私は生きていく!
思い起こせば私の生きた人生は現在の平均寿命80年近くを思えば早々と終ってしまったと思う。
そう。
私は25年の人生に今、終わりを迎えたところなのであった。
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今日は朝から天気がよく、早寝早起きを実践し気分よく通勤していた時のことだった。
みんなが平和に通勤ラッシュを迎え、私も例にもれずバスの到着を停留所でまっていたとき。
それは起きた。
遠くから悲鳴が聞こえたと思った直後…
後ろからの鋭い痛みを一瞬感じたと思った私の意識はだんだんと遠のいていった。
耳に残るのは周りの騒音と悲鳴。
最後に視界に映ったのはつぶれた車の姿だだった。
お母さん お父さん
今まで育ててくれてありがとう。
私は何も親孝行することなく旅立ちの時を迎えたみたいです。
我儘な娘でしたが、無事に社会人となりこれから両親に楽をさせてあげようと思っていた矢先の出来事で…
なにも恩返しできなかったことが悔やまれますが、どうか悲しまないで。
私は楽しい人生だったのだから。
あぁ、最後に思いが届くなら…………
どうか、私の部屋の机の下に隠してある段ボールは…
中を見ずにゴミに出してください。
お願いだから…中は見ないで出してほしい…
なんて願ってしまう私なのでした。
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次に気が付いたのは知らないところだった。
見たことのないほど豪華な天井が私の目に映っていた。
そして、かすかに音がしたほうに視線を向けようと体を動かそうとして、体が思うように動かないことに気が付いた。
私が一生懸命動こうとしているとその気配を感じたのか視界に映ったのは…
それは美しい美男美女であったのだった。
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初めて目を開けみたときにいた美男美女。
それが私の今世での両親だと知ったのはその直後であった。
何もわからない状況でいきなりあらわれた2人に反射的に泣き出してしまった私。
その私に手を差し伸べてくれたのは美女の方。
男の人は隣でどうしてよいのかわからないといった感じでうろたえていたが、女の人はさすがに落ち着いていて私を抱き上げてくれた。
抱き上げられる感触がやさしくて余計に涙が出てしまったのはこの時の私しか知らない。
「どうしたのユーリ? お腹すいたのかな?」
女の人の声は見かけを裏切らないやさしい声をしていた。
じっくり見ている余裕はなかったけど抱き上げられた私の顔にきれいなプラチナの髪がかかってくすぐったい。
男の人もようやく落ち着いたのかそばにきて私の顔を覗き込んできた。
短いブロンドの髪が目に入りそのやさしげな視線に思わず見入ってしまった。
「あなた、ユーリが泣き止んだわ」
そう嬉しそうに女の人は男の人に言った。
その時になってようやく私は自分が泣き止んでいることに気が付いた。
「そうだな ミーシャ。 ユーリはなぜ泣いていたんだろう?」
「目が覚めたら誰もいなくてさみしくなっちゃったのかしら? ちょと離れていたから…ごめんねユーリ」
二人のやりとりをみていると女の人がミーシャという名前らしいことがわかった。
「ユーリ 父様と母様ですよ」
「ふふっ あなた、そんなこと言ってもまだわからないわよ」
そうやさしくミーシャが男の人に声をかけたことにより私はこの二人が父・母であること・名前がユーリであるという事を知った。
そして、この二人から産まれたのなら…と自分の外見にちょっと期待してしまったのは内緒である。
それにしても、なぜ私がこれほどに落ち着いていられるのか…
それはきっと前世の記憶があるからに他ならない。
そう。
私は前世の記憶をもって転生したようなのだ。
そのため最初はわけのわからない事態に混乱していたが、前世の記憶…
異世界トリップものの話が好きでネット小説を読み漁っていた私の知識がこのありえない現実を冷静に受け入れさせていた。
そして…私は少なからず喜んでいた。
常々興味のあった異世界…その世界に自身が生をうけたことに喜びを感じずして何を感じろというのだろうか。
さらに王道とは私のためにある言葉に違いないと認識することになったのは赤子であった私がようやく首が座り一人であるけるようになった頃であった。
それまでは私の世界は私の寝かされていた一室に限っており父母以外のひとといえばもう一人やさしそうな女の人にお世話になるくらいであったが、歩けるようになって家の中を探検してみて私の世界は広がっていった。
ただでさえ、最初から寝かされていた部屋は大きく豪華だと思っていたが、少し部屋を出てみるとどこまで続いているのかわからない長く広い廊下に出た。
そう。
私の父母はこの国で公爵の地位を賜っているらしい。
お母様は元王女で幼馴染の二人は恋に落ち家柄もあっていることから婚約・結婚となったとのこと。
お父様のお母様を見る目は愛しい人をみるそれで、子供の私でも二人の間に入れないものを感じずにはいられない。
でもそんなことを思っているとお母様が私をぎゅぅっとだきしめてくれる。
お父様もそんな私とお母様をぎゅうぅっと一緒にだきしめてくるからくるしいくらいだけど幸せを感じずにはいられない。
それもそのはず、一般的に公爵家・貴族ともなると乳母が子供の面倒をみて母親は何もしないらしい。
例にもれず私にも乳母がついていてくれるんだけど…
貴族の中でも珍しく父様と母様が直接私の面倒を見てくれてる。
だから最初に目が覚めた時も一番初めに目に入ったのが実の両親だったみたい。
こんなにやさしい両親に囲まれた私はとても幸せものなのです。
そうそう。
言葉とか生活習慣とか前世の記憶があることによっていろいろ弊害が出てくるかなぁって私も最初は心配していたんだけどいまのところはそんな心配はなし。
大きくなるにつれて侍女とかに貴族特有のお世話をされることがあって…
人にお世話されることには最初戸惑ってたんだけど、今では何とか譲歩できるところは譲歩して私にやらせてくれる周りのやさしさもあり、私はすくすく元気に育っているのでした。
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「おとうしゃま おかあしゃまっ」
そう言って私は両親に抱き着いた。
中身は25歳しかし今世ではようやく3歳をむかえようとしている私は最初、話せるようになったといってもうまく発音できずに悔しい思いをしていた。
でも、子供だから…と今では開き直り気にならない。
「ユーリどうしたの? そんなに走ってきたら転んじゃうわ」
そういって私を抱き上げたのはお母様。
そんな私に横から伸びてきた手があり抱き渡された。
「ユーリ ただいま」
「おかえりなしゃい おとうしゃま」
そう言って私の頬にキスを送るのはお父様。
反対の頬にもやわらかい感触があってお母様にもちゅってしてもらえたらしい。
「おかあしゃま おかえりなしゃい」
そう。
お父様とお母様は今日、王宮に呼ばれて一日二人でおうちを留守にしていたのだ。
お父様はお仕事がこの国の宰相様らしくて毎日王宮にいっているのは知っていたけど今日は二人一緒にだったからさみしくて帰ってくるのを首を長くして待っていたんだ♪
「ユーリ一人にしてごめんね。 今日はねお友達を連れてきたのよ」
そういってお母様とお父様の後ろから現れたのは、まだ子供なのに将来はきっと直視できないくらい美形になることを約束された容姿をしたちょっと私より年上の男の子だった。
お父様が私を下におろしてその子の前に立たせた。
「ユーリ この方は皇太子リュディアス殿下だ」
「初めまして ユーリ姫 私はリュディアス。 よろしく」
その子は見た目以上にしっかりしていた。
そしてなんと…この国の皇太子殿下だったのだ。
私は思わず父様の服の袖をつかみつつ…
「は、はじめまして でんか。 よろしくおねがいします」
ペコッと頭をさげてあいさつする私に近づいたリュディアス殿下は私の頭をナデナデしてくれた。
「よくできました。 私の事はリュディアスと呼んでほしいな」
そういって笑顔を向けてくる殿下。
「りゅであす…りゅd・・・」
笑顔を向けてくれたことが嬉しくて、名前で呼んでいいといわれた事が嬉しくて私は一生懸命名前を呼ばせてもらおうとしたけれど、どうしても発音できなかった。
そんな私の様子をみて笑顔を深めた殿下。
「言いにくいのかな?」
しゅんとしてしまった私。
そんな私をぎゅっと抱きしめてくる殿下。
今まで男のひとから抱きしめられたことのない私はドキドキしてしまった。
けれど嫌だとかそんなことを思えなくて殿下の腕のなかで安心感すらかんじておとなしくしていると…
「ユーリ、 リューとなら呼べるかい?」
そう殿下が言ってくださった。
「リューでんか」
「リューだけでいいよ」
「リュー」
笑顔でそう言った私を殿下改めリューは嬉しそうにその腕に抱きしめてきたのだった。
これがこれから長い付き合いになる私と殿下の始まりだった。
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あれからどれくらいの月日がたったのだろうか…
はじめて殿下が私の家にやってきた日。
宰相である父様があまりにも私のことを皇帝陛下に自慢したものだから興味を持った陛下が王宮に私を連れてこいって言ったみたい。
でも、父様は私を屋敷からまだ出す気はなくて、ちょうど一年の始まりを告げる新年の祭典で夫婦そろって王宮にいるところを捕まえて母様から説得をしたみたい。
父様より母様を落とした方が早いって思ったみたいで…
皇帝陛下の思惑どおり母様から許可を取ったところまではよかったんだけど…
その日はもう遅いし明日以降でということで話がまとまったときにその話を聞いたリュディアス殿下が自分もあってみたいって陛下にお願いしたんだって。
陛下もめったに我儘を言わない息子からの頼みで断れなくて、行動派のリュディアス殿下は家に帰る父様たちについて一緒に来てしまったとのことらしい。
そして私たちは一日で仲良くなった。
産まれた時から相手の事をしっていた。
一緒にいるのが当たり前みたいに何かあるごとに私はリューの後をついて回った。
初めて行った王宮でも父様側じゃなくてリューが迎えに来てくれたからリューに手をつないでもらって陛下にお会いしたくらい。
非公式の場だからって陛下に抱っこされて、王妃様に「こっちにもおいで」っていわれた時は驚いちゃった。
おとなしく王妃様のお膝の上で座ってたら父様が「まだやらんっ」ってめったに大きい声を出さないのに私を抱きしめながら陛下から遠ざけられちゃってビックリ。
リューはそんな私と両親の反応をみて嬉しそうにしてたけど…なんだったんだろう??
そして今。
私は成人の儀を執り行おうと神殿にきていた。
その年の成人を集めた聖堂で神官長の人に祝福の言葉をいただくだけなんだけど…準備に手間取っているのかな?なかなか待ち時間が長かった。
私は今回の成人を迎える中では最高位の貴族ということで待ち時間まで個室を与えられた板。
この国の成人は男女ともに18歳。
昔のことを思い出していたのはなんだか待ち時間が長くて退屈から、子供から大人になる私を見つめなおしていたからかもしれない。
ようやく準備ができたのか私を呼びに来た神官の人に連れられて大聖堂に足を踏み入れた。
今日のために半年以上前から用意してもらっていたドレスに身を包み。
両親からの祝福の言葉の入ったイヤリングをつけて私は儀式に挑む。
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ようやく儀式が終り。
人もまばらになってきた聖堂で私を呼ぶ声を聴いた気がした。
気のせいなのかもしれない。
周りには誰もいないのだから。
けれど、きれいな澄んだ声で何を言っているかわからなかったけれどお祝いしてもらっている気がして嬉しくなって私は聖堂を後にした。
迎えにきた馬車を待っていると今度はさきほどとは違いはっきりとした声で私の名前を呼ばれ振り返った。
そこには…リューが立っていた。
もう成人したのだし殿下と呼ぼうとしたら本人からそのままでよいと事前に言われていたので私はいまだにリュディアス殿下のことをリューと呼んでいる。
「迎えにきた。 成人おめでとう」
そういって近づいてくるリュー。
なんだかリューはとても嬉しそうだった。
ここは神殿前。
もう解散したとはいえ、まだまだ神殿前には今回の新成人がたくさんいる。
そしてその両親が無事に祝福を受けた子供を迎えにきて人はさらに多い。
そんな中に皇太子殿下が迎えにきた少女。
その意味に気が付いたものは何人いたかは定かではない。
いまだに気が付いていないのは当の本人であるユーリのみである。
「ありがとう。どうしたのすごく嬉しそう」
リューの笑顔をみて私も嬉しくなる。
それは今日という特別な日だからなのだろうか…
リューはまだわけのわかっていない私をみていたずらが成功したような笑顔を見せるだけ。
そして…
「 」
リューが私を抱きしめて耳元で囁いた言葉。
その言葉を理解したとき私の顔に熱が集まるのを感じた。
そのあとで、私はリューになんて答えたのか覚えていなかった。
今までにない幸せに包まれて、そのままお持ち帰りされてしまったのは言うまでもない。
なんと申しますか…
ありふれた内容になってしまった物語ですが…
せっかく筆を持ち、一応終わりを迎えたのでアップしてみました。
お読みいただきありがとうございました。