第8話
私は携帯を手にしたまま、しばらく固まっていた。
隼人はなんで今更、私にメールを送ったのか・・・。
凄く気になった。
でも、なんだか見るのが怖かった。・・・<<怖い>>と思う理由などないのだけれど。
とにかく内容を見なければ。
私は『たかし』と『知美』のメールを後回しにして『隼人』のメールを見る事にした。
本文を開くボタンを、なかなか押せなかった。
指が震えて押せなかった。
でも、少し指に力を入れると簡単にボタンを押せた。
本文が表示された。
私は、反射的に顔を画面から背けていた。
恐る恐る画面の方へ目線を向ける。
内容はこうだった。
<<えー。江戸時代だって!斉藤も江戸時代だって言ってたし。>>
・・・は?意味が分からない。
江戸時代って何?斉藤って誰やねん!
ただはっきりしているのは、このメールは隼人が私に送ろうとしていたものではなく、間違って私に届いたという事だけだった。
なんだか腹ただしかった。
間違いメールを送って来た隼人にも、そんな隼人にちょっと期待していた自分にも。
私はメールが間違って届いた事を隼人に知らせるのをやめる事にした。
どうせくだらない内容の様だし・・・。
それより何より、3ヶ月ぶりのメールがこんなメールっていうのが嫌だった。
次に私は『知美』からのメールを開いた。
<<おはよ〜。朝早く起きちゃったのでメールしてみましたぁ↑夏休みも残り半分。思い出作ろ〜よ!>>
「知美早ぇーよ・・・。」
確かにメールの受信時刻は朝早かった。
でも私はこのメールを見てちょっと嬉しかった。
私も、このまま何もない夏休みは寂しいと思っていたから。
意思の疎通というか・・・さすが知美だなと思った。