第6話
お風呂場に入ると、正面に全身が映る鏡がある。
私は、自分の全身が映るように鏡の前に立った。
「キレイな身体・・・」
事実だった。でも事実ではない。・・・矛盾している。
胸は大きい。けど、スタイルがいい訳ではない。だからキレイな身体とは言えない。
でもキレイな身体なのだ。
キレイというより、汚れてないという方が適切なのかもしれない。
誰一人として、まだ私の身体に触った人はいない。
だからキレイな身体・・・。
私は、このキレイな身体をめちゃめちゃにして欲しくなった。
誰でもいいから汚して欲しい。
こんな事ばかり考えている私は変態なのか?と自分でも疑問をもった。
それでもやっぱり考えてしまう。
友達も、こんな事考えてたりするのかな・・・。
友達は、もう汚れた身体になったのかな・・・。
<<欲求不満>>という言葉が頭に浮かんだ。
欲求不満ってやつなのかな・・・。分からないけど・・・。
蛇口をひねると、一気に冷たい水が出てきた。
「うぁっ、冷たっ」
私は正気に戻った。・・・初めから正気なのだが。
もう考えるのはよそう。
自分で気持ちをセーブ出来るものなのか分からないけど、とにかく出来るだけ考えないようにしよう。
お湯の出てきたシャワーを自分の身体に向けた。
お風呂場の中は熱で暖かくなっていた。
正面の鏡も曇っている。
「あ・・・タオル・・・」
身体を拭こうとした私は、タオルをもってくるのを忘れている事に気付いた。
洗面所に顔を出し、私は迷う事なく大声で言った。
「陽介〜タオル持ってきて〜」
隣の台所で
「はいはい」
と陽介が返事をした。
まだ食べていたのか・・・。食べるのもスローだなぁ・・・。
普段の私なら口に出して言っていただろう。
でも、ここは頼み事をしているので口には出さなかった。