第11話
「とりあえず中入れよ。知美、すぐ呼んで来るから」
そう言うと、雅宏くんは私をリビングに上がらせて階段を駆け上がった。
涙が止まらない。
止まる気配もない。
何に対して泣いているのか分からなくなってきた。
別れたくなかったから泣いているのか・・・。
隼人との気持ちの違いに泣いているのか・・・。
「飛鳥・・・どうした?」
さっき、雅宏くんが掛けてくれた言葉と同じだった。
知美は私の隣に座った。
私から話すのを待っている。
話さなきゃ・・・早く話さなきゃ・・・。
なのに言葉にならなかった。
聞いてもらいたい事はいっぱいあるのに。
なかなか言葉に出来ない私に、知美が口を開いた。
「隼人に泣かされたの?」
私は一瞬ビクっとした。
そしてコクリと頷いた。
どうして知美には分かってしまうのだろう。
というより分かってくれるのだろう・・・。
涙がだんだんと枯れてきた。
「許せない」
知美が一言言った。
その時の知美の声は、今でも忘れない。
低音で怒りに満ちた声。
隣にいた私は、少しゾクっとした。
落ち着いてきた私は静かに口を開いた。
「今・・・隼人にフラれちゃった・・・。何かねー・・・アタシと付き合ってる感じがしないんだって」
知美は黙って頷いている。
何もかも見透かしている様に。
私は話を続けた。
「・・・アタシは・・・アタシは・・・隼人と一緒にいられるだけで幸せだった・・・。でも・・・隼人は違ったみたい・・・」
そう言い終ると、知美は全てを理解した様だった。
「飛鳥・・・アタシはやっぱり隼人が許せないよ・・・。飛鳥が好きになった男だけど・・・許せない」
知美の目は赤くなっていた。
そして知美は、私の胸で泣いた。
「何で知美が泣くんだよ・・・」
私の目にも、また涙が溜まっていた。