第10話
<<隼人、今更何だって?>>
『知美』からのメールにはたった一言だった。
でも、その一言に凄く重いものを感じた。
3ヶ月前、公園に呼び出された私は隼人にフラれた。
中二の夏から9ヶ月間の恋が終わった。
終わりを告げたのは隼人の
「なんか・・・俺ら付き合ってる感じしないよね。飛鳥、キスだってさせてくれないし」
その言葉を聞いて私の頭の中で何かが音を立てて崩れた。
一緒にいられるだけで幸せ・・・そう思っていたのは私だけだった。
「そうだね・・・前みたく友達でいようか」
今思うと、よくこんな言葉が出たなぁと思う。
「おぅ。じゃ、友達って事でヨロシク!」
「うん」
何が友達だよ。
もう、友達には戻れない事は分かっていた。
実際友達には戻れなかった。
フラれた私の足は、自然と知美の家に向かっていた。
<<ピーンポーン>>・・・チャイムが鳴る・・・。
「はーい」
玄関に出てきたのは知美の兄の雅宏くんだった。
いつもお互いの家で遊ぶ私と知美。
だから私は雅宏くんの事をよく知っていた。
雅宏くんも私の事をよく知っていた。
「おぉ飛鳥ー。・・・どうした?」
私の目からは大粒の涙が溢れていた。
隼人に別れを告げられた時、涙は一滴も出てこなかった。
・・・本当は溢れそうな涙を必死でこらえた。
隼人の前で泣きたくなかった。
フラれて泣くのはミジメな気がしたから・・・。
必死でこらえていたけれどもう、限界だった。
雅宏くんの優しい顔は私を安堵感で包んでくれた。
その安堵感で素直な私の気持ち、涙が溢れたのだと思う。
「・・・知美と話がしたい・・・」
かすれて消えそうな声で一言言った。