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Persawr Stars ~ 星の香水 ~  作者: クロネコ
世界の価値観は…?
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1



 狭間の世界………それは、どの世界にも 存在している 異空間のこと。


死んだ魂を導く為 設けられた 生と死の狭間に存在する 別空間だ。


そして 各世界に1人だけ 狭間に迷い込んでくる 魂を、あるべき場所へと導く存在 守人が、存在していた。


世界が、自ら 選出し選び抜いた 監視者だ。


男も女も 子供や大人に老人も、世界によって 監視者になっている。


ただ 1つだけ 共通しているのは、守人に選ばれた 人々は、皆 世界の進む歴史を、感じ取る 手段を無意識に 身に付けていた。


ある者は、持って生まれた 手腕で 世界の成り立ちを研究し 迷いを持った魂を、導きながら 歴史の修正に努める者。


また ある者は、最初から 自分の姿を世界の人々に見せつけ 脅しに似た言葉とその驚異的な能力で  世界の繁栄を求める者。


中には、世界に干渉せず 人々の行いを見守る者も………。


監視者の任期は、狭間の世界の感覚で 1000年単位だ。


狭間の世界(ここ)では、時間の流れが 生の世界と違っていて とても揺るかに流れる。


つまり 人の世界では、1000年以上もの時を監視しなければならない。


この狭間の世界に訪れる 人々は、目に見えない迷いを持っている。


欺かれていた 事実を知ったり 知らなかった 想いと真意を知ることが出来たり………、


迷いは、時に 更なる憎しみに変わることもあった、


勿論 憎しみの中に隠された 迷いが、全く 違うモノに変わることも………。


様々な迷いは、世紀に渡る 人間相関図を制作できるだろう。


それだけ 醜い 欲望の中に入り混じった 権力争いの果ての魂が、訪れることが多いのだから。


勿論 中には、純粋な魂を持つ者も 存在していた。


けれど そんな彼らを圧迫してしまう位 穢れた魂が、多かったのだ。



 今日もまた そういった 欲望の塊が、狭間の世界へと足を踏み入れる………。




























 

 

 

 

 

 


~☆~☆~☆~♠~☆~☆~☆~

 「いいか?!

ワシは、世界に必要な存在なのだツ!

こうしている間にも 馬鹿共が、とんでもない 発言をしているのだろうからな?」

1人の年老いた 男が、鬼のような形相で 少女に詰め寄っていた。

けれど 彼女は、そんな事など 興味を持っていない。

「運命は、変わらない。

アナタは、死んだ。

ここに来たという事は、迷いがあるから。

今の話から符合すると アナタの心配は、他の人達の発現について?

確かに 心配したくもなるかも………だって 暗殺されるくらいなんだから」

少女の問いかけに 男は、唇を噛み締めている。

「油断してしまっただけだ。

とにかく ワシを、生き返らしてくれツ!」

その発言に 少女は、”なぜ?”と 首を傾げた。

「アナタの運命は、既に 世界が受け入れた 真実だわ。

だから この世界に足を踏み入れることも可能になったのだから」

男は、少女の揺るぎの無い 言葉に 息を呑んだ。

けれど すぐ 何かを思い出したかのように 叫び出す。

「そんなわけ ない!!

ワシは、知っているのだぞ?

過去 狭間の世界(ここ)を訪れた者の中に 生還を果たした者が、存在していることを………。

その者は、書物で この世界の存在を残しているのだから」

「世界が、判断したのなら 生き返ることもあるかもしれない。

けれど それは、余程の事が無い限り ありえないことだわ?

その書物については、おそらく 前の任期の守人のしたこと。

他の人が、何を言ったのか知らないけど 世界の決めたことに文句を言わないで頂戴?」

ニッコリと 微笑みながら 少女は、言い放つ。

その表情に 男は、狼狽した。

本能で 何かを、感じ取ったのだろう。

「まずは、自己紹介をさせてもらうわね?

あたしのことは、サーヤと呼んで?

アナタの迷いは、本当に 生き残った人達の発言について?

他には、何も無いの?

例えば 残された 家族のことは?」

少女の指摘を聞いて 男は、固まる。

そして 何か思案するように 黙り込み 息をついた。

「ああ 確かに 心配じゃない と 言えば 嘘になる。

こんな薄汚い 爺かもしれないが 家族は、ワシと血が繋がっているのか 信じられない位 純粋なんだ」

どこか 遠くを見つめて呟く男に 少女は、苦笑する。

「なんだ………自分で 迷いに気が付いているんじゃないの。

生き返りたい と すごい勢いだったのも 実は、ご家族のその後を知りたかったのね?」

納得している 少女の言葉に 男は、肩を竦めた。

「ワシは、昔から 人には言えない 卑劣なことをしてきた………。

家族は、何度 その報復で 命を狙われてきたか 数え切れん。

今回 ワシが、闇に葬られたのならば 家族にも、危険が迫ったのかも………」

「ご家族は、無事よ。

元より アナタさえ 始末してしまえば  何とでもなる と 思われていたみたい」

サーヤの言葉に 男は、少し 胸を撫で下ろす。

けれど まだ 不安は、消えていないらしい。

そんな男の心を読み取ったかのように 少女は、指を鳴らした。

すると 何も無かったはずの空間に  突如 小さな戸棚が、出現する。

男は、ギョッと していたが サーヤは、気にも留めず 中から 何かを探し始めた。

「ああ………これだわ?」

男は、不思議そうに 少女を見つめている。

もう その顔の中に 最初のような  必死な怒りは、ないものの 年齢に合った 年を取った男の顔だ。

「この瓶の中にある 香りを嗅いでみて?

アナタの死後 ご家族が、どうなったのか 思い浮かんでくるから」

差し出された 小瓶を手に取り 男は、目を瞑り 中の香りを嗅ぐ。




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 目に映り込んできたのは、自分に似た 面影の少年が、ガチガチになりながら 大きな部屋で 何かを待っている光景だった。

彼は、王族と謁見する為の礼服を身に着けており その顔は、真剣そのもの。

その隣では、清楚なドレス姿の大人になりかけた 少女が、少年を心配そうに見つめている。

2人は、しきりに 時間を気にしているようだ。


 時間の流れは、わからないが ここにいる 2人に 男は、予感があった。

  <この2人は、アナタの孫よ>

 守人の声が、どこからともなく 聞こえてくる。

 どうやら 自分が殺されてから  随分 時間が経ってしまった時間のようだ。

 あんなに小さかった 2人は、もう 立派になっている。


 しばらくすると 部屋の扉が、開く。

入ってきたのは、少年よりも幼い 子供だった。

けれど 身に纏っている空気は、威圧感を持っている。

「「お会いできて 光栄です」」

2人は、彼が入ってくるなり すぐ 立ち上がって 膝を折り  礼儀を取った。

「あまり 堅苦しいのは、好きじゃない。

リラックスして欲しいんだ」

少年は、そんな2人に 何かを言葉を掛け  椅子に腰掛ける。

「さぁ 本題に入ろう。

まずは、彼方方をお呼びした理由について。

別に 処罰とかではありません」

その言葉に 2人は、目をパチクリさせてしまう。

「まず 彼方方のお父上方のお祖父様 ハワード前侯爵の暗殺の真相について………。

世間一般では、王妃暗殺について 連行しようとしたところ 抵抗した為 手を下した と 言われていますね?」

その発言に 少年と少女だけでなく 部屋の隅に控えている 側仕え達も、息を呑んだ。


  まさか 自分の暗殺の真相について こんな 小さな子供が話し出すなど 思いもしなかった。

 しかも 自分は、王族殺しの汚名を着せられていたということに 言葉が見つからない。

 <この少年は、フローリア王女の実の息子よ。

 アナタの死後 他の貴族達は、互いに陥れ合って 最終的には、皆 生き残れなかったの。

 しかも 王族も、彼以外 全員が、権力争いの中で 散っていった>

 それを聞いて 男は、目を大きく見開く。

 もう一度 視線を集中させてみると 確かに  少年は、自分の記憶の中に存在する 可憐な息子の幼馴染を、連想させてくれる。


「ハワード候は、元々 第一王妃の産んだ王子を支援する位置にいた。

それが、第二王妃側に就いていた 侯爵の義理の弟君に 不利な状況を与えていたそうなのです」

少年の口調は、子供とは思えない位 流暢で 大人顔負けだ。

「そして 他にも、色々と恨みを抱いている貴族は、大勢痛そうです。

こんな中 持ち上がったのが、ハワード候の妹が、後宮入りするという話。

彼女が、王の寵愛を受ければ 更に 侯爵家の発言力は、強まる。

彼らは、何としても 侯爵家の力を削がなければいけないと考え始めた」

「だから 祖父は、殺されたということですか?」

緊張しているものの 孫は、しっかりと話す。

「本当は、他の家族諸共 強盗に見せかけて 殺す計画だったらしい。

だが 当日になって  侯爵は、突然 事前のスケジュールを前倒しにして 暗殺者達の計画は狂った。

だから 殺害対象になったのは、侯爵1人になったそうだ。

まぁ 残された 君達には、反抗させない為 偽りの罪をなすりつけ 王都から追い出してしまったようだけれど」

「では………祖父は、前・王妃様の暗殺の黒幕では、なかったのですね?」

その言葉に 少年は、”ええ”と 微笑む。

「この事実は、既に 王宮内の議題に上げています。

何人かは、渋っておりますが もう 後ろ指を差されることはありません」

少年の隣に控えている 少女に至っては、目頭にハンカチを当てて 泣き出しているようだ。

そして 3人が、部屋から退室すると 映像は、消え去った。




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 「子供達には、色々 苦労をさせてしまったのか………」

男は、小瓶を片手に持って 悲しげに呟いた。

「確かに アナタの家族は、困難が続いていたわ。

けれど そのお陰で  忍耐力を手に入れた。

アナタの記憶の中にいる 2人の孫は、あんなにも 意思をしっかりと 持っていた?」

サーヤの問いかけに ハワードは、苦笑する。

「ハロルドは、泣き虫で いつも 姉のカチュアのスカートの裾を離そうとしなかった。

カチュアは、レディに有るまじき行動ばかりするお転婆で 屋敷の中を散らかす天才だったんだ」

孫のことを思い出しながら 話す彼は、とても嬉しそうだ。

彼は、本当に 家族想いらしい。

「アナタに嗅いでもらったのは、世界の中に浸透していた 記憶という名の香水(パルファム)よ。

今 本当に流れている時間は、もう 数年経っている。

この狭間の世界と現実の時の流れは、全く 違っているの。

でも アナタの家族は、あの小さな王子の後見を任された。

彼もまた 孤独と戦っている 1人。

自分なりに 信頼できる相手を、見つけ出しているわ」

ハワード候は、それを聞いて 安堵の顔になった。

「それだけ聞ければ 後は、迷いが無い。

家族が 苦労したことは、悲しいが 希望が見出せたのならば………」

男は、ふと 言葉を切る。

それと同時に 体の内部から  光を発す。

光は、少しずつ 小さくなってゆき 手の上に 白い鍵だけが、残った。

「その鍵は、アナタの次の行き先を示すモノ。

どこに向かうのかは、あたしも わからないわ」

サーヤの言葉に ハワード候は、頷く。

「狭間の世界の守人:サーヤ殿。

これからも ワシの生きた あの国を見守って欲しい」

男は、そう言い残すと 鍵を点に翳した。

すると 鍵は、再び 輝きだし ハワードは、その場から 消える。

「ルーディック・ハワード………次は、家族の為だけではなく 忠義にも懸命なる 正義を持ってね」

サーヤの声が、誰もいない 狭間の中に響き渡った。





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