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あたしは、今日もまた 与えられた 役割を担っていた。
それは、あたしに与えられた 大切な仕事。
様々な経緯で この狭間の世界にやって来た 人々を、あるべき道へと導くのだ。
ある者には、それまでの償いを受けさせるべく 罰を与え また ある者には、来世へ続く 道へ進ませる。
あたしが 担当しているのは、物語の中に出てくるような ファンタジーな世界であり それと同時に 陰謀と策略に張り巡らされている時代………。
それから まるで 大昔の魍魎に巣食われているような 欲望に満ちた 人達の争いだって あるのだ。
自分の置かれている 立ち位置を守る為 持てる武器を、何でも使っていく。
あたしは、そんな争いの中で 巻き込まれたりした 憐れな人達と何度も出遭った。
そんな人達は、なぜ 自分が、この狭間の世界にやって来たのかもわかっていない人ばかりで 中には、まだ 世界の成り立ちさえ知らない 幼い子供もいたし 権力には、縁のないような 純粋な心を持った人もいる。
あたしは、そんな人達の心を導く中 世界が嫌いになっていた。
だって この役割を得てから どれだけの時間が経ったのかは、わからないけれど いつまでも その汚い世界は、変わってはくれていないのだから。
他の世界が、どんなのか 知らない。
だけど ここまで 酷いのかは、あたしに知る手段はなかった。
どんなに心が、荒んできても あたしは、世界に与えられた 仕事をこなすだけだ。
これは、間違いなく あたしへの罰だから………。
~☆~☆~☆~
自己紹介が、遅れました。
あたしは、この狭間の世界の守人。
こことは、違う 異世界の住人でした。
今は、この狭間の世界の守人として 人々の死した 魂を導くのが、この世界に与えられた 大切な役割。
償わなければならない 罪を清算する為 定められた 人の心を救わないといけない。
全てが、終わって 許されるのかは、わからない。
けれど これは、誰かに決められたのではなくて 自分で決めたことなんだ。
人の心は、色々と難しい。
確かに そんな人達と関わることで 傷ついてしまうことだってある。
だけど 中には、温かい人の心もあるって事を知った。
だからこそ 世界を好きになりたいと思う。
どんなに汚い世界だって 清い心を持つ人が、少なからずいるのだから。
けれど 永い時が経っていくに連れて その想いが、踏みにじりられていく。
信じよう と 思っていても 欲望に溺れた人達が、誰かを陥れる。
そんな世界を見つめていると 悲しくて堪らなかった。
どんなに世界が、希望を捨てるな と 慰めの言葉を投げかけてきても あたしの心は、死んでいく。
汚い世界は、どんな事をしたって 清浄なる 綺麗な世界になることは、ありえないのだから。
あたしは、こうして 1000年 狭間の世界での役割をこなした。
その間 どれだけの人々の血が、流れ 穢れた 世界が、滅び 確立したのかは、数え切れない。
何度も 世界の破滅を目にしたこともあって その規則は、簡単に見えてくる。
そして 今 展開されている 世界も 近いうちに 滅んでしまうだろう。
今 成り立っている 国は、神の声により 全ての政策を行っていく 世界。
王となったのは、まだ 小さな子供だった。
彼の母親は、元々 この国の王女だったが 平民の出だった 傭兵と駆け落ちしてしまったらしい。
最初 王女の他に 王妃が生んだ他 側室達が、産み落とした 合計 10人もの王子・姫君が、いたため 彼女は、王族系図から 抹消されていた。
けれど 激しい跡目争いの結果 残された 王の血を受け継ぎし子供は、彼だけになってしまったのだ。
老いた 王は、欲目に駆られた 者達の争いを目にした中 幼き頃から 自分の内面を、愛してくれていた 我が子を思い出す。
けれど 時は、既に遅かった。
王の忠臣が、駆け落ちした 王女と傭兵の男を見つけ出した時には、王女もその夫も 死んでしまっていたのだ。
残されていたのは、亡き王女の面影を持った 幼い少年。
こうして 少年は、城へ迎え入れられたのだ。
当初は、下賎な生活を送っていた 彼を見下していた者達もいたものの 一部の心ある者達は、その王たる 器に気が付き 忠誠を誓うようになる。
けれど やはり 子供は、どこまでも 子供………。
欲に溺れた 人々は、幼き少年王を 自分達の傀儡にしようと 考えていた。
現に 跡目争いを陰で操っていたのは、何を隠そう 彼らなのだから。
自分達が、後見している王子や姫を 王座に就けるべく 人を使い 争いを煽っていたのだ。
けれど 結果は、相討ちとなってしまい 自分達の目的は、果たされなくなってしまった。
どうしたものか と 思っていたところに 家系図から消された 王女の忘れ形見の発覚。
誰もが、一度 手にした 権力を取り戻したい。
こうして 王城内では、醜い 権力争いが、始まる。
世界は、何度 滅びれば 気が済むのだろう………。
もう チャンスなんて 与えなければいいのに………。
何度も、希望を持っても 裏切られるばかり………。
ならば 最初から 期待なんかしなければいい………。
どうせ 人は、欲望に負けてしまうのだから………。
今までだって 同じ事を、繰り返してきたんだ………。
どうせ 今回も、同じ 定めを辿るに決まっている………。
だから 世界も、諦めるべきだ………。
こんな汚い 欲望に満ちた 世界なんか 切り捨てるべきなのに………。
なぜ いつまでも 信じることが出来るの………?
世界は、一体 何を待っているのだろうか………。
一体 世 界 は 、 何 を 与 え た の ?
世界は、何を与えたのか 何を求めているのかは、誰にもわからない。
けれど 人は、何度 滅んでも 同じ事を繰り返しても 何かを成し得ようとしてきた。
それが 関係しているのかは、誰にもわからない。
古きに渡る 血筋は、何度も 争いを好み 欲望のままに生きてきた。
その間 破滅への一手を辿り 世界は、何度も傷ついている。
もう 世界は、力を失い始めていた。
その綻びが、他の異なる世界と繋がってしまい 関係のない人達が、傷ついてしまっているのだ。
このままでは、この世界だけではなく 他の世界も巻き込んだ 大きな破滅が、待っているかもしれない。
そんなことになれば 何もかもが、おかしくなってしまう。
何とか 保っていたはずの均等も、崩れていく。
世界は、何を待っているの?
何に期待して 何を、与えたと?
破滅へのカウントダウンは、刻々と 近づいている。