表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

7,妖精、バカにされる。

 

 アーガ要塞に到着。なんか、外から陣地内を見た限りにも、兵士の死体が散乱している。

 これは回れ右しろってことじゃないか。


 こういうときは気があう妖精リアリも同じ意見らしく、


「やばいですよ、これは。冒険者には及ばないとしても、王国軍の精鋭たちが簡単に殺されているなんて。とんでもない敵襲があったのです。まったく、『嫌な予感がする』ですよ。英語でいうとI have a bad feeling about thisです!」

「英語でいうとって、まてよ、そもそもおれはなんで異世界に来たのに、この世界の言語が話せるんだ?」

「え、いまさらそんな野暮なこと聞いてきます? それって、AVの中出しってぜんぶ疑似じゃん、と喚くようなものですぜ、あおっと!」

「え、疑似なの? 本物じゃないの? なんだそれ、おれたちの血税をちゃんと使え!」

「AVの撮影、血税使ってないでしょうが」

「そうだった。おれたちの血税、もっと下らないことに使われているんだった。くそが」


 おれとリアリが大いに真面目な会話をしているあいだに、エイミーとササラが要塞内に向かってしまった。

 ササラさんは、レ×プ願望がある変態さんでも、聖女の義務感はあるようで、まだ生存者がいるかもしれないと。

 一方のエイミーは、〈騎士王の秘宝〉とかいう、大金に化けるアイテムを入手、というか強奪するために。とりあえずエイミー、おまえはジョブ、シーフに変えたら?


「パーティが分散してしまった。よし、おれたちだけでも生き残り、ササラさんとエイミーの勇気を後世まで称えよう」

「大賛成です。生き残ったものがいないと、英雄を語り継ぐことはできませんからね」


 おれが手綱を引っ張り、馬車の向きを反転させようとしたとき。

 ふいに上空より、翼の生えた人型魔物が飛んできた。


 おれはそれを見上げながら、いまさらながら思ったね。ってか、おれのジョブってなに? ジョブも決まってないのに戦えるのか? 戦えないよ? チュートリアルを忘れるな!


 その飛行型魔物は、意外なことに人間の言葉を話しだした。


「なんだ、お前たち、どこから来た?」


 リアリが、たまには真面目に異世界の案内役らしく、説明した。


「あれは魔人ですね。え、魔物との違いですか? 人間並みに知能が発達すると、魔人認定されるわけです。当然ながら、戦うには魔物より厄介です」


 飛行型の魔物あらため魔人。翼をはばたかせて空中で停止していると、要塞のほうからその仲間が、さらに三体も飛んできて、合流した。えー、敵が増えた。


「あおとさん。心配はないです。妖精とは高貴な種族と話しましたよね? 相手が知能のない魔物ならともかく、知能のある魔人ならば、妖精への敬意というものがあるのです。つまり、ここはわたしが存在を示せば、あの魔人たちも手だしはしませんよ」


 という、どこからくるんだその自信はとともに、リアリが飛び上がる。

 そして四体の飛行型魔人に存在を誇示する。


「こら、魔人ども。ここは高貴なる妖精であるわたしの顔を立てて、この人間は見逃し、ここから去りなさい!」


 魔人たちがぽかんとした顔で、互いに顔を見合わせる。

 それから、一斉にぎゃははと笑い出した。


「羽虫が偉そうなこと言ってやがるぜ!」

「しゃべる羽虫の種族がな!」

「ぺちゃくちゃうるせぇから、羽虫以下だぜ!」

「違いねぇな!」


 それからバカ笑いしながら、要塞のほうに飛んでいった。あまりに笑えたせいで、おれたちを襲撃する気もなくなったらしい。


 リアリが戻ってきた。しばし茫然としていたが、大粒の涙──妖精の目から出るので、おれには極小粒だとしても──を流しだしながら、


「ぐ、ぐやじぃです! あんな奴らにバカにされて、わたしは、悔゛じいですぅぅう!」


 おれは人差し指で、リアリの頭をなでてやる。


「よしよし、もう泣き止め。おまえの仇は取ってやるから」

「ほ、本当ですか?」


 おれは魔人たちが飛んでいった要塞を見やって、


「ああ、鬼畜でバカだとしても、おまえはおれの妖精だ。おれは、おれの妖精をバカにされて黙っていたりはしない。あいつら、ただではすまさんさ。皆殺し祭りだ」

「あおとさぁん……………鬼畜でバカは余計じゃないですか、いえマジで」


高評価、ブックマーク登録、お願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ