5,メンバー増える。
行先は決まった。あとは軍資金を得るだけか。
しばらくすると、町の中央で騒ぎが起きる。
なんだろうかと眺めていたら、熊のようにでかい豚が三頭、暴れていた。リアリの説明では、あれは豚型の魔物で、オルブタというそうだ。
そんなオルブタ三頭は、いまは見覚えのある小屋に体当たりをかましている。
まてよ。あの小屋は、〈光の商人〉ジョブの闇ブローカーの幼女エイミーの仕事場ではないか。
それにはリアリも気づいていて、空中でふわふわしながら大笑いしだす。
「あはは。見てください、あおとさん。エイミーの店が、オルブタの群れに襲われていますよ! へ、あのメスガキ、ざまぁねぇですね!」
「人格は終わってるのに見た目だけは可愛い妖精キャラって、オマエ、なんかずるいよな」
で、眺めていたら、まずエイミーが慌てて逃げていく。オルブタたちはエイミーは見逃し、かわりになにか赤い物体を食べだした。ぬるっとしている、あれはどこかで見たことのある物体。
リアリも気づいた様子。
「あれぇ? オルブタたちが美味しそうに食べているのは、もしかしなくても、わたしたちがエイミーに売却の仲介を依頼した、あの臓器たちではないですか?」
「あぁぁ、そうだ! おれたちの大金に化けるはずの、冒険者と猟奇殺人鬼の臓器じゃないかぁぁぁ!」
「あおとさぁぁぁん! 声が大きいですよぉぉぉ! 猟奇殺人鬼はともかく、腐れ冒険者もブッ殺したのが、ばれるじゃぁぁぁないですかぁぁぁぁぁああ!!!」
「おまえこそ、声がでかいだろうがぁぁぁぁあ!!!」
こほん、という咳払いがしたので振り返ったら、治安官の制服を着た男が二人立っている。
さては、この治安官たち、初めからおれを見張っていたのか。この町には、よそ者が珍しいのだろう。
と、思いきや。
「通報があったのだ。女性の『いやぁぁ』とか『助けてぇぇ』とか『ア×ルだけは許してぇぇ』という叫びが聞こえた、と」
ええい、そっちかい!
「いや、それ誤解ですよ、おまわりさん。いや、治安官さん。それは、そういうプレイだったんです。しかも、『許してぇぇ』と、先んじて拒絶することで乞うてきても、さすがにア×ルはしなかったからね! してほしそうだったけども! ね、ササラさん、説明してあげて、聖女ササラさん! あれ、ササラさんは?」
そういえば、ササラさんがいつのまにか姿を消している。まさか、逃げたの??
「なんでだ!」
リアリが無駄に冷静に分析してくる。
「治安官に自分の性癖を明かす羞恥プレイは好みではないのではないですか?」
「レ×プ依頼だすくせに羞恥プレイは嫌って、どういう性癖? なめてんの?!」
二人の治安官が唸るように、
「やはり暴行犯だったか。しかも、先ほど冒険者を殺したことまで自白していたな」
「よし、貴様を逮捕する。貴様のようなよそ者に権利はないから、覚悟しろ」
リアリがふっと不敵に笑う。
「こうなったらあおとさん、降りかかる火の粉を払うときですね。重力100倍の世界から来た、その圧倒的な基礎バカ力によって、こんな治安官どもボコってくださいよっっっっっっ!」
「いや、それがさ……。実はさっき、ササラさんのクエストで、そのう、抜かずの二回戦という、男にとって最高のステージをやりとげてしまったので、もうなんかね、なんか、いま戦う気力とか、ぜんぜんないの。自力で立ち上がるスタミナさえもない。だって抜かずの二回戦だもの。すごく頑張ったもの。偉かったもの。自分で自分をほめてあげたい」
「使えなっ! こいつ、使えなっ!」
というわけで抵抗する気力もなく、御用となった。治安官に連行される途中で、リアリの奴はどこかに飛んで逃げていった。
こっちは治安署の牢屋に叩き込まれる。まったく、こっちは抜かずの二回戦を成し遂げた勇者だぞ。少しは敬え。
牢内には先客もいなく、静かなものだった。
むきだしの地面に横たわり、復刻ガチャのことを思って涙する。あぁ、なにをしても報われないなぁ。一年間もガチャ禁してガチャ石貯めたのに。
「あの妖精も、鉄格子の間から、盗んだ牢屋の鍵を運んでこいよ。ったく、使えん奴だ」
鉄格子に視線を向けていたところ、背後の壁に物音がし、振り返ると外側から穴が開く。
えー? と見ていると、その穴からエイミーが入ってきた。両手に、紫色に輝く腕甲をはめている。どうやらこれの力で、壁に穴をあけたようだ。
「あ、いたね。脱獄するよ。リアリとササラはもう町の外で待っているから」
「どういうことだ? なんで脱獄させてくれるんだ?」
幼女のくせに大人っぽい溜息をつくエイミー。
「リアリだよ。あいつに言われたの。うちは仲介するために預かった臓器を、豚どもに食べられちゃったからね。つまり、このままだと莫大な違約金を、あのバカ妖精に支払わなきゃならない。それが嫌だから、協力することで手を打ったんだよ。さ、行くよ、早くして」
「変態聖女に性悪妖精に幼女商人か。将来性のないパーティができたもんだな」
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