3,初クエストこなす。
「聖女うきうきレ×プって……なんで、そんな頭のおかしいクエストを受注してきたの!? 脳みそ蛆わいてんの?!」
「え、あおとさんの作戦は『ガンガンレ×プしていくぜ!』じゃなかったんですか? 違う? そいつは初耳ですぜい」
「初耳ですぜい、じゃないよ。なんだその炎上まったなしのふざけた作戦は。あぁ、おまえの姉じゃなくて、おまえを握りつぶせばよかったよ!」
「もう本気には思ってないことを~」
このこの~と肩を突いてくる妖精リアリ。
「うざい」
「大丈夫ですって、この異世界では、レ×プの罪で捕まっても、ペ×スを切り落とされるだけですから」
「日本より罰則が厳しいんだけど! いやある意味、見習うべきかもしれん………ってか、おまえ、いよいよできるかい! いや、おれのアレの身が心配でなくともやらんがな、そんな悪辣なことは!」
「おかしいですねぇ~。あおとさんのステータスによると、道徳の数値は、知力より低いはずなんですが。で、知力はたったの8。低っ! あははは、ぐぎゃっ」
最後のは、指さしバカ笑いしているところを思い切り殴られた妖精の短い悲鳴。
「ひ、ひどいじゃないですか、あおとさん。パパにも殴られたことないのに!」
「おまえのパパ、教育間違えたな。やっぱ鉄拳制裁って大事だったわ。昭和の教育、大正解だったわ」
「あんた、地獄のヤ×コメ欄みてみなさいよ。あれを書いているの、だいたい昭和世代ですからね」
「それより、話を戻そう。おまえが受注してきた、極悪非道のクエスト。すなわち【聖女うきうきレ×プ】クエストだが、」
「あおとさん、さっきツッコミそびれましたけど、誰も『うきうき』とは言ってませんから。どこからきたんですか、その『うきうき』は? あんたの心の奥の奥の願望からじゃぁないんですか?」
頭を抱える。
「いいか。おれの心にはまだ、正義がある。正義の輝きが、頑張って磨けば、ちょっとはある。だから、おれとしては、このクエストの依頼者を成敗したい」
「ふむ、ふむ。つまり、聖女ササラさんをレ×プするよう依頼してきた者を捕まえ、官憲に引き渡そうと? そういう正義の心意気なんですね、あおっと!」
「そうだ、そうだ。で、なるほど。標的にされている聖女の名は、ササラというのか。で、そのササラさんを襲うよう依頼してきた極悪人の名は?」
「聖女のササラさんです」
「だから、それは標的の聖女の名だろ? おれが聞いているのは、その聖女を襲うクエストを発注してきた者の名だよ」
リアリは眉間にしわを寄せ、(なに言ってんだこいつ?)という顔をした。
「ですから、聖女ササラさんですってば」
「……えーと、依頼者が?」
「はい」
「つまり、同姓同名ということなのか?」
「え? わたしが知る限り、この町に聖女ササラは一人しかいませんけど」
「……」
おれの頭が悪いのか。それとも現在の状況が、頭悪いのか。
「……あの、まって、整理させて。つまり、聖女のササラさん、自分をレ×プする依頼を出したの?」
「そうですよ。なんでも、レ×プ願望があるらしいですぜ!」
と、なんかいい笑顔でまとめてきたリアリ。
「…………」
「ちなみにこのササラさん。教会の修道女であり、かつ冒険者でもあって、ジョブも〈聖女〉。白魔法の上級者。処女膜を〈オールヒール〉で再生することなど、お茶の子さいさいだそうです」
「異世界転移してから、出会う人、みんな心病んでいて、おれはもう心が折れそう」
とにかく、訳のわからん依頼を出して迷惑だ、と聖女ササラとやらに文句を言ってやろう。
そこでリアリの案内により、ササラさんのいる教会に向かう。
この町、信仰心のある人は少ないようで、まったく人けがなかった。
そこで一人、神に祈っている聖女がいた。清純を絵で描いたような、黄金の髪がさらさらしている、同年代の可憐な聖女が。
「あの子が、ササラって子か」
「そうです。ちなみに、依頼料は前払いで全額いただいてしまいました」
「じゃ、お返ししなさい」
「あ、無理です。もうぜんぶ、エイミーに渡してきちゃいましたんで」
「逃げ道をふさいできやがったな!」
ところでササラさん、さっきから、こちらをちらちらと見てきている。
こっちに気づいているが、気づいていないという姿勢。
そして、あれは見間違いではない。ササラさんの瞳に、なんかハートが見える。あれか。快楽堕ちしたときに瞳に出るという、ハートなのか。
って気が早いな、おい。
「……………いいだろう、リアリ。やってやろうじゃないか! 冒険者として、クエストを完遂してやろう!」
「そうです、あおとさん! 厳密でなくとも、あおとさんは冒険者じゃないですけど!」
「気分の問題だ! おれは、やるぞ! 人間を捨てるぞ!」
「ファイトです、あおとさん! 人間は捨てなくていいので、わたしたちの未来のために、ここで頑張るのです!」
「よし……あ、でも、なんか緊張で、アレが元気にならない。だめだ。おれ、やっぱりダメだよ、リアリちゃん。おれの半身が、もう死んでいるんだよ。はじまる前から、なんか死んでいるんだよ。立ち上がる気配がないんだよぉぉ」
「あおっと! この根性なしが! 踏ん張るのです! 起たせるのです! あおと、せめてものわたしの力を与えましょう! いざ、わが妖精のアクティブスキル〈活性化〉による支援ですぅぅぅぅ!! がんばれ! がんばれ!」
妖精の種族専用アクティブスキル〈活性化〉。
効力、もろもろが活性化する。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」とおれ。
「ほぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」とリアリ。
いやなぜおまえ、まだいるの?
10分後。
おれは教会の外で青空を見上げていた。
「魔王を倒した気分だ」
リアリが、ぽんと肩に手を置く。
「あおとさん、見届けましたよ、あの勇姿を。ええレ×プでした」
「ああ………………」
賢者にジョブチェンジして思った。
あれ? おれ、やっちまった?
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