10,ボスじゃん。
いやぁ、気まずいよね。
ボスが出てきて、その弟さんの死体を武器装備しているんだものな。ほら、魔将軍ドーガンも、気まずそうじゃないか。いや、気まずいというか、あれは、なんか怒っていらっしゃる?
「貴様ぁぁ、この下等な人間がぁぁぁ、よくもわが愛する弟をぉぉぉぉ!」
「いや、そう怒りたくなる気持ちも分かるけど。ちょっと事情を説明させてくださいよ。これは不可抗力というもので、なんか殴ったら殺しちゃった、みたいな? これ、言い訳になっている?」
リアリがうんうんとうなずく。
「なってます、なってます。間違いなしです。誰もが納得します。道徳の教科書にのりますね、いまの生徒たちへのメッセージは。『なんか殴ったら殺しちゃった』、感涙ものです。さすが、あおっと」
しかし、魔将軍ドーガンは別の意見だったようで、身軽に飛び上がり、棍棒を振りかざして攻撃を仕掛けてきた。黒い炎で燃え上がる棍棒を見よ。
「あっ、あれは黒炎魔法! 魔法防御のたぐいを無効化する炎ではないですか! あおとさん、ここはわたしに任せてください!」
戦闘種族の妖精リアリが、右拳を突き上げ、ドーガンめがけて突進。
しかしドーガンが無造作に振るった左手で、「あぁぁれぇぇぇ!」と弾かれて飛ばされていった。
「羽虫めが」
とドーガン。
「おい、おれの妖精になんてことしやがる!」
ドーガンの棍棒を左手でつかむと、黒炎とやらが膨張。おれの身体に燃え広がる。
「馬鹿め、黒炎の特性を知らぬな? これは燃えれば最後、なにをしようとも消火することはできぬのだ。さぁ、生きたまま焼かれて死ぬがいい!」
「え、そうなの?」
ぱたぱたと手で叩いたら、燃え広がった黒炎が消えていく。ちょっと熱かったけど、火傷はしていないみたいだ。よかった。
愕然とするドーガン。
「な、な、なんだと! 聖女の白魔法でさえ消せぬ黒炎を消火しただと! しかも、ぱたぱたで! 馬鹿な! 貴様、何ものだぁぁぁ!」
「教えてやろう。おれは重力100倍の世界から転移してきたのだ。いわば生まれながらに、重力100倍トレーニングをしてきたようなもの。鍛え方が、この世界の住人とは違うのだよ、鍛え方が。よって、貴様の黒炎さえも食らわんのだ」
ドーガンはしばし眉間にしわを寄せていたが、
「いや、それはおかしいではないか。重力100倍世界から来たとしても、わが黒炎が食らわん理由にはならんではないか」
「……」
確かに。
「……うるさいんだよ、細かいことを、いちいちお前はぁぁ!!」
奴の弟の死体を振り上げ、思い切りドーガンの頭に叩きつける。
必殺《死体でぶん殴り》。
「ぐがぁぁぁっ!」
あまりに凄まじい衝撃に倒れるドーガン。その一撃で脳震盪を起こしたようだ。
「や、やめろ、われは四天王がひとり魔将軍ドーガンさま、だぞぉぉ!」
「知るか! 四天王最弱めが!」
死体を叩きつけすぎて、バラバラになった。そこからは足蹴にしてやる。ひたすら蹴飛ばしていたら、ドーガンの原型がなくなっていた。肉の塊の死体にぺっと唾を吐きかけておく。
「この野郎。ひと様の妖精をはたき飛ばしたあげく、図体がでかいくせに細かいことを気にしやがって。だからおまえは四天王最弱なんだ」
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