表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傷だらけのこの世の中で ~link of tears~ 克服  作者: 偽穢
傷だらけのこの世の中で ~link of tears~ 1.告白
69/79

第69話 〜傷ついた命の苦悩〜 13

「ごめんごめん。やっぱり、好きな人が女の人とキスしてるのって、何かもやもやしちゃうんだよねー」

 もし、先輩が別の誰かとキスしてるのを見せられたらと思うと・・・うん、ヤバイ。拷問かも・・・

「あっ、健・・・・」

 俺は何も言えず、力の入らない先輩を地面へと優しく座らせる。

「もう、だからそんな風にしなくても・・・・」

「萌先輩は・・・俺だけのお姫様ですから。それじゃあ、今度こそ行ってきます」


「・・・どこに行くっていうの?」


 声の主を見れば、禍々しい色を強くし、この世の全てを憎んでいるかのような目で見下ろしてきた。その目には、光の欠片すら見えなかった。

「北条さんがいる空にだよ。『飛べ』」

 光の守りから抜け出し、俺も同じ場所へと昇る。

 空中戦とかやったことないが、今回は別に戦う気はなかったから、そこはどうでもよかった。

「じゃあ、アタシとずっと一緒に居てくれるの? あの女を捨てて、アタシと・・・・」

「いや、俺が好きなのは萌先輩だ。悪いが北条さんに俺は重荷だろ? 俺は甘えたがりだから、先輩のような甘やかせてくれる人じゃないと駄目なんだ。俺はまだまだガキだから・・・」

「そんなことないっ! 健君は格好いい男の子だよ?! だから、アタシは好きになったのっ!」

「それは幻想だよ。俺の本性を見たら、すぐに幻滅する」

「そんなの、どうせアタシと付き合いたくない嘘でしょ?!」

「じゃあ、視てみるか? 『動くなよ?』」

 相手を拘束する。

 先輩の力ではなく、俺の力で。

 これは試金石でもあった。

「・・・・・っ! 何でっ?! 動けな・・・」

 やっぱり、純粋な力のレベルは俺の方が上だった。

 大体召喚系の奴って、本体が弱い事もあるからな。だから、大型がヤラれた時点で、北条には力による勝ち目は消えていた。

 動こうともがく北条へと近づく。

「安心しろ。お前を滅ぼしたりはしない。ただ、昨日の放課後の、俺の情けない姿を『見せてやる』だけだ」

 目の前にまで移動し、手を頭にかざして、イメージしたあの時の映像を送り込む。

 先輩が俺を癒やすときに見てるであろうことを、先輩の力を使って逆に相手に見せてみる。きっと、できるはずだ。

「えっ?! 嘘っ!? 何でこんな映像が視えるのよ?!」

 先輩の胸の中で涙を流し、鼻水を垂らしながら、泣き声を上げる俺を見せていく。

「やめてっ!! 健君はこんなんじゃないっ! こんなの健君じゃないっ! こんな・・・幼児な健君は嘘よっ!! いやぁあああああっっっ!!??」

 自分の中の理想が崩れて、北条が発狂する。誰しも理想には裏切られるもんだ。

「分かったか? 俺はそんな人間なんだよ。それでも俺を好きだと言えるか?」

「・・なんで、なんで最期まで騙してくれなかったの!? どうせアタシを倒すくせに・・・どうして残酷な真実なんかを見せるのよぉぉおおおおっっっ?!」

 泣きながら叫ばれる。もうヤケクソなのか、俺に倒される事すら疑っていなかった。

「・・・倒す気はないさ」

「じゃあ、どうするっていうのよ?!」

「好きなだけ暴れろ。『解除』」

 北条の拘束を解き、自由にさせる。

 動けることを確認した北条は、もう感情のままに俺へと言葉を投げつけてくる。

「『ばかっ! ばかっ! ばかぁあああああっっっ!!!』」

 怒りの矢が俺へと放たれる。

 それを避けることはせず、そのまま大人しく突き刺される。

「健っ?!」

 先輩の驚く声が聞こえるが、それでも俺はされるがままにやられていく。

「嘘つき! よくも騙したわね! 男なんて皆嘘つきぃっ! 『死んじゃえっ! 死ねっ! 消えろっ!』」

「〜〜〜〜っ! 健・・・っ!」

 必死の矢に射たれた俺を見て、先輩が悲痛な声を上げる。

 先輩の気が気でないような声に胸が痛いが、俺は大丈夫だ。 

「なんで・・・何で死なないのよ?! だったら、直接・・・!」

 創造した槍を握り締め、真っ直ぐに突っ込んでくる。狙いは俺の心臓だった。

「『死ねっ!』」

 でも、その槍が俺を貫くことはなかった。胸に当たったまま、俺を貫けずにいた。

「どうして?! どうして貫けないのよ!?」

「俺を本当に殺す気がないからだろ?」

 この北条は戦う前に、俺を殺す気はないと言っていた。当然だろう。俺に固執する事がこの北条の存在理由なのだから、俺を殺せば存在できなくなるのは自明の理だ。

「そんな事ないっ! アタシは健君を・・・殺してアタシも死ぬの!」

 一見筋が通っているが・・・

「じゃあ、何で『最期まで騙して欲しかった』なんて言葉が出るんだよ?」

 槍の柄を掴み、そのまま目の前まで引き寄せる。 

「殺される前提で話をするのは、そう望んでいるからだろ?」

「それは健君が強くて、アタシじゃ勝てないからでしょ!?」

 絶望で光を失った瞳からは、涙が止まることなく流れていて、戦意など微塵も感じなかった。そこには深い哀しみしか見えなかった。

 ただ、どうしようもないから、暴れているだけだ。世界の理不尽に何も出来ない自分が嫌で、自暴自棄に振る舞うしかなかった。もう、それしかできなかった。

「ほら、それなら俺を殺して死ぬことはできない。だから、殺されたいんだろ?」

「〜〜〜〜っ! うるさいっ!」

 胸を殴られる。まるで小さな子供のようだった。

「もう・・・嫌なんだろう? 辛いんだろう?」

「うるさいっ! うるさいっ! 知ったような口を聞くなっ! アタシじゃなく、先輩を選んだくせに優しくするなっ! 殺すならさっさと殺せっ!」

 何度も何度も、泣きながら胸を殴られる。悲痛に叫びながら殴りつけてくる。

 俺はただ黙って彼女の叫びを聞く。傷だらけの命の苦悩を。

「どうせアタシなんか何の意味もないんだっ! 誰もアタシなんか見てないんだっ! こんな感情のアタシなんて、誰にも見向きなんてされないんだっ!!」

 頭をドンとぶつけて、服を力の限り握りしめ、その状態から顔を見上げられる。

「どうして・・・アタシは幸せになっちゃいけないのよぉ・・・っ?!」

 枯れる事のない涙が、雨のように地上へと落ちていく。

「なれる可能性はあるさ」

「どこでっ?! 誰がっ?!」

「池崎の奴が、現実でしてくれるかもな」

「・・・えっ?」

 突然の名前に驚かれるが、そのまま話を続ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ