第64話 〜傷ついた命の苦悩〜 8
「〜〜〜〜っ!!??」
物理的な事を少しでも考えてしまったせいで、身体にダメージが来てしまう。手からは剣が落ち、身体が衝撃で痙攣を起こすが、気力で立ち上がる。
「まだ・・・だ・・・・・まだ、大型が・・・・」
震える身体で剣を拾うが、今はまともに握ることすらできなかった。
そこを大型が見逃すことはなく、俺へと体当たりを仕掛けてくる。
「ゔっ!? があぁぁっ?!」
昨夜のように踏ん張ることはせず、派手に吹き飛ばされる。剣も手から滑り落ち、そのまま俺だけが飛んでいく。
「・・・健っ!」
それでも幸いなのは、先輩のいる光へと飛んだ事だ。その光に弾かれることなく受け入れられ、中にいる先輩が抱き止めてくれたお陰で、叩きつけられる衝撃は回避できた。
「直ぐに傷を癒やしますからそのまま————」
「だ、大丈夫です・・・ギリギリ後ろに飛んだので、見た目ほどのダメージは・・・・・」
「どこが大丈夫なのよ?! さっきから必死で涙を堪えてる先輩が、そんな言葉で安心できる訳ないでしょ?! ボロボロなんだから、大人しく癒やされなさいよバカッ!」
「そんな時間はない・・・直ぐに大型の攻撃や上空からも・・・・・」
周りを見れば、三体の大型が用心しながら光を取り囲みに来ていて、上からも北条さんが睨みを利かせていた。
俺が何をするか分からないから、ボロボロであっても油断をする気はないらしい。
「ああ〜っ、もうっ! 時間を稼げばいいんでしょ?! だったらあたしがそれ系を、適当に何か言えばいいんでしょ!?」
「ほ、北条さん・・・?」
やけくそ気味な北条さんに、先輩が少し驚いていた。
「大丈夫ですよ、先輩。あたしがアイツラにガツンと言いますから、その間に健君を・・・萌先輩の大事な彼氏を、癒やしてあげてください」
俺が戦っている間に何があったのか知らないが、北条さんは憑き物が落ちたかのように、冷静にそう言っていた。その顔はどこか哀しげでありながらも、未練を断ち切った綺麗な表情だった。
「・・・はい、ありがとうございます。北条さん」
「じゃあ、あたしは外に出るんで・・・暫くお二人は仲良くしててください。先輩と話し合ってて、あたしは狙われないと思いましたしね」
そういうや、北条さんは何の躊躇いもなく光の外へと出ていく。それを見届けた先輩は体の向きを変え、俺の頭を胸の中へと抱きしめる。そこから、そっと耳元に小声で囁かれる。
「健・・・好きですよ」
「へっ?! せんぱ・・・っ!?」
それから、俺へとキスをしてくる。それも一度じゃなく二度、三度と・・・繰り返し唇を俺の顔へと触れさせる。まるで雨に打たれるかのように、間髪入れずキスをされる。
「えっ?! ええ・・・っ!?」
突然の事に驚くも、俺は為す術もなく先輩の好きなようにされてしまう。
「あ〜あ、お熱いことで・・・案外先輩って、情熱的なのかもね〜」
「馬鹿言ってんじゃないわよっ!? アンタ達っ!! あのバカップルを早く引き裂きなさいっ!!」
「恋人の時間を邪魔すんじゃないわよっ! 『アンタら、空気を読みなさいよ〜〜〜〜〜〜〜ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!!』」
耳が痛くなる程の渾身の叫びに、周囲の動きが止まるのがわかった。
「・・・はあっ、はあっ・・・・! んっ・・・・思い切り叫んだんだから・・・・これで暫くは・・・何も出来ないでしょ? 昔から言うもんね・・・『声の大きい方が勝つ』・・・・ってね!」
俺も思わず体がビクッと反応してしまったが、先輩はそんな事を気にせず、ちゅっ、ちゅっとキスの回数を重ねていく。額に耳に鼻に頬に首筋にと、次第に下へとキスが移動していく。
「・・・健、もう少しだけ我慢していてくださいね? すぐに楽にしてあげますから・・・」
地面へと仰向けに寝かされ、服を開けさせられる。傷だらけの胸に先輩が顔を近づけると、そっと優しく口づけてくれた。
「め、萌先ぱ・・・いっ!」
「んっ・・・れろっ・・・ちゅっ・・・」
そこから昨夜のように舌で傷を舐められ、キスをされ、甘い刺激に体が震えてしまう。
ここに来てようやく先輩の意図に気づいた。力を使わずに癒やすにはこれしかない。でも時間が必要だから、北条さんにそれを説明して協力させたんだと。
「はあっ、ん・・・っ! あっ・・・ん・・・・ちゅっ・・れろっ・・・」
でも、これはちょっと刺激が強すぎる。必死になって舌を這わせ、俺を舐めている先輩がどこか艶かしくて、それに興奮している自分がいた。これは治療行為の筈なのに、どこか・・・・・そういう風に受け取ってしまう。きっと、本当に俺が死にかけているから、本能がそうさせている。そうさせているんだ! そうじゃないと、俺は先輩の事を・・・・
「うわ〜・・・これ、下手したらとんでもない光景よね・・・? あの萌先輩が、年下の男の子を襲ってるように見えるんだもん」
「〜〜〜〜っ!! 何であたしまで何もできないのよっ!」
「そりゃ、あたしの全力を出したからでしょ? 本体から分離したら、普通分離体の方が弱いのがゲームの定石でしょ? ばか?」
「はあ〜〜っ?! ゲームならそれこそ、分離体の方が強いに決まってるでしょっ!! 弱った本体を乗っとって、分離体が主役になるのよっ! アンタこそ馬鹿じゃないのっ?!」
「その馬鹿に動きを拘束される時点で、アンタのほうが弱いじゃん。ばーか、ばーか」
「何よ〜〜っ! 動けるようになったら覚えてなさいっ! 力を使い果たしたアンタに、分からせてあげるんだからっ!」
「きゃ〜っ! こわい〜っ! 健く〜ん、後でちゃんと助けてね〜?」
「何ぶりっこぶって〜〜」
「「・・・・・・!!」」
あー、うん。間の抜けた会話のお陰で、何か気分が下がった。冷めたな。
多分、わざと騒いでくれたんだよな? 俺が先輩に変な気を起こさないように。
「・・・んっ、健・・・次は背中をさせてください・・・・北条さんの言葉もそう長くは続かないと思いますので、早く・・・・」
先輩は必死だった。それだけ俺の傷が酷いということなんだろう。
素直に言葉に従い、片腕を服の中から抜き出し、先輩に背を向けて露わにした背中を見せる。
「・・・やっぱり、服の下はこんなにも傷だらけだったんですね・・・・」
そっと指で背中を撫でられる。
「今癒やしてあげますからね・・・・んっ・・・ちゅっ・・・・・はぁ・・・う・・ん・・・・」




