表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傷だらけのこの世の中で ~link of tears~ 克服  作者: 偽穢
傷だらけのこの世の中で ~link of tears~ 1.告白
61/79

第61話 〜傷ついた命の苦悩〜 5

「実は・・・」

 どうせ朝になったらまた夢だと思い、記憶も曖昧になるだろうからと、昨日のことを赤裸々に話していく。

「へ〜、成る程成る程。急に池崎君がアプローチを仕掛けてきたのは、そういう訳なのね?」

「あ、ああ・・・」

「つまり健君は、あたしのアフターケアまで考えてくれてたのね?」

「いや、それは先輩のお陰だよ」

「先輩が・・・? へー・・・・・」

 人が変わったような低音だとまだ怖いな。

 こうやって会話してる間も、先輩の周辺には気を使ってるんだけど、まだ気を抜く事はできないな。

「その、先輩が北条さんを救って欲しいと思ってたから、俺はそうしただけなんだ」

「健・・・どうしてそう愚直なのですか・・・・・・」

「いや、だって・・・そうじゃないですか。先輩が北条さんを救おうとしていたから、俺はそれを叶えたくて・・・・・」

「ですが、その為に働いたのは健でしょう? そのまま素直にご自分がされた事にすればよいのです」

「んー、何か複雑ね・・・嬉しいんだけど、嬉しく思いにくいわ」

「でも、先輩は・・・・」

「あ、ごめんごめん! その、あたしまだ先輩に対しての反応が複雑で、理屈では分かるのに、感情は許してくれないみたいな感じなの。なんか、先輩には絶対に癒されるな! みたいな感情を出されてる感じ。だからその好意も素直に受け取れないのよ」

「そっか・・・じゃあ、俺が祓おうか? そういうのって、異心って言うんだろ?」

「へっ? 健君の家って神職か何かなの?」

「違うけど・・・『Blessing』みたいなのならできるよ?」

 多分。やったことないから絶対とは言えないが、まあこの世界でならできるだろ。

「あ〜、アレね。刀使って切り祓うシーン。でも、刀はどうするの?」

「『刀よ来い!』」

 イメージは完全にソウハだが、それでも手の中に想像した通りの物が現れる。

「あっ! それってネウスが使った剣じゃん! でも、刀って片刃だよね? 剣は両刃だから違うんじゃ・・・・?」

「・・・えっ? あっ! だ、大丈夫だから! 剣でも刃物だから行けるよ、きっと! だから大丈夫だよ!」

 慌てて弁解する俺を、北条さんは何故か身体を震わせながら見ていた。

「〜〜〜〜っ!! や〜んっ! 健君かわいい〜っ♪」

 そうして感情のままに抱きついてこられる。

「・・・へっ?」

「そのギャップはダメだよ〜。そんなのお姉さんには耐えられないよ〜」

 先輩以上にぎゅうぎゅうしてきて、頬もスリスリとしてくる。

「いや、え・・・っ? 何で今ので?」

「普段が大人びてるのに、不意に子どもの顔を見せられたら、そりゃかわいいと思うわよ〜♪」

 ほんと、こっちの世界が感覚薄くてよかった。これがリアルだと、匂いと柔らかさで頭おかしくなるからな。

「あ〜、何か先輩が健君を甘やかせるの、同じ女の子として分かる気がするわ〜♪ ねっねっ? たまにはあたしも健君の事甘やかしてもいい? それくらいならいいでしょ? ね・・・っ?」


「ダメです」


 北条さんを刺激しないように離れて見守っていた先輩が、割って入ってくる。

 どこにそんな力があるのか、北条さんから俺を引き剥がして、そのまま胸の中へと抱きしめられる。

「健は私の彼氏です。私の彼氏ですから、私が甘やかします。そうですよね? 健」

「・・・は、はい」

 逆らうなと本能が告げていた。今の先輩に逆らうと、明日が怖いぞと。

「流石に池崎と付き合った後で、それをするとアイツも嫌がると思いますしね」

「んー・・・でも、付き合うまでなら言い訳よね?」

「良くありません。私の健をとらないで下さい。この子は私の子です」

「いや、あの・・・先輩? なんか、その言い方だと母親っぽいんですけど・・・?」

「・・・そうですか? 健のお母様代わりですか・・・・・それも悪くないかもしれませんね」

「え・・・っ? まさか萌え先輩って、そういうプレイが好きとか? だから健君を狙ったとか?」

「私は純粋に、人として健が好きなだけです。そういうプレイとは何なのですか?」

「そんなの赤ち————」

「いや、そんな事より先に祓っていいですか?」

「・・・そうですね。お願いします」

 腕から解放され、俺は剣を鞘から引き抜き刃を確認する。黒い刀身は闇夜の中であっても、その存在を主張していた。黒には決して何色にも染まらずという意味があると聞いたが、この世界の闇にも染まらぬ黒さはどこか頼もしかった。

「じゃあ、祓うけどいい?」

 何回か素振りして馴染み具合を確認する。まあ、この世界でそんなのやっても意味はないが、気持ちの問題だった。

「オッケー、オッケー〜! ちゃっちゃっとやっちゃて〜!」

 先輩が俺の後ろへと下がったのを見てから、剣先を北条さん側へと向ける。一応、ズラしてはいる。

「うっ・・・切られないと分かってても、剣先がこっちに向いてるのは嫌な気分ね・・・」

 刃物を向けられて嫌な気分にならない奴はいないだろう。

「ごめん、直ぐ終わらせるから」

 じっと北条さんを視て、異心との繋がりを探す。凝視すれば、北条さんの身体の周囲に境界線のような物が感じ取れ、ソレに沿って剣先を動かしていく。

「・・・あっ、何か楽になってきた・・・・・かも?」

 全身をざっとなぞり終え、最後に口上を述べて、刀を一振りすれば終わる。

「『真心を惑わす異心、それを今切り祓う。去れ、本心ではなき幻の心よっ!』」

 下から上へと剣を振り上げる。

 天へと返し、そこで浄化される事を願う時に『Blessing』の主人公はそうしていたからだ。

 後は、このまま異心が離れて切り祓いは終わる。

「あ・・・凄い、本当に気持ちが楽になってく・・・・・」

 北条さんの身体から、黒きモヤが立ち昇っていく度に、彼女に輝きが戻る。錆びついた煌めきが、かつての光を取り戻すように、北条さんの身体が幻想的な光を帯びていく。

「・・・綺麗ですね」

 その光景を見ていた先輩から感想が漏れる。

「そうですね。人の真心ってこうも光るのかと、思い知らされますね」

 漫画でも表現されていたけど、実際にその輝きを見ると全然違っていた。ただ綺麗なだけじゃなく、何とも言えない味わいがあった。

 これは身近で見るからこそ知れる物で、決してその場にいない限りは分からない物だ。それくらい表現の仕様がなかった。

「人はただ生きているだけで、輝けるんですよ・・・・きっと、誰もが・・・・・・」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ