第51話 〜寄り添う者達〜 14
放課後は先輩との話し合いがあるんだが・・・・先輩が来たら解散でいいか。
それにしても、北条さんが好きなキャラって、カップリングだよな?
俺をネウスに似てるっていう事は、北条さんはクロワノールを自分に重ねている?
確かクロワノールのキャラ設定って、周囲から優しさを貰えず、ネウスが初めて優しさをくれたんだよな。それで、クロワノールはネウスを大好きになって・・・・んっ? 何か先輩好きになった俺もこれじゃね?
いや、でも先輩の優しさは絶対にリーベだ。リーベ以外あり得ない・・・・じゃなくてっ!
つまり、北条さんは頼れる対象が欲しいわけじゃないか? それで、ネウスに似てる俺だったら頼れると思って・・・・しかしそれだと、あまりにもオタク脳だろ。現実に二次元を求めるなよ。二次元のような存在なんて・・・・萌先輩がいた。
・・・・とりあえず、放課後にネウスとクロワノールのカップリング話しでもして、詰められるとこを詰めていこう。
最後のチャイムが鳴り、今日の授業が終わる。帰りの準備をしている間に担任がやって来て、朝のテストを返される。その後はいつもの連絡事項を聞いて、放課後を迎えた。
「健君、さっきは途中でごめんね?」
「いや、別にいいんだけど・・・・」
鞄も持たずに俺の席に来るってことは、話し込む気まんまんだよな。ちゃっかり、ドアに背を向けるように席にも座ってるし。
「どうした? トイレでも我慢してんのか?」
デリカシーのない言葉で明が会話に加わって来る。こいつは俺の後ろの席に座った。
「えっ? そうなの?」
「いや、ちげーよ」
明が来てくれたのは、正直に有難い。これなら、萌先輩が来た時に抜けやすくなる。
「さっき、何て言おうとしてたのかを、聞きたかったんだよ」
話しが逸れ過ぎないうちに、手早く聞きたい事を確認する。聞くのが遅れて、萌先輩を待たせることはしたくないからな。
「ああ、あれはね。好きな女の子がクロワノールとリーベなら、どうしてネウスが外れるの? って聞きたかったの」
「おっ? お前はその二人が好きなのか」
「まあ、そうだな。あの二人は、幸せになって欲しかったキャラだからな」
あの作者、ネウスを徹底的に虐めるために殺したからな。『これくらいしないと、ネウスというキャラは続きで反旗を翻すことはしないので、二人は退場させました』だもんな。
「で、本題だけど。俺がネウスを好きになりきれないのは、守りたい者を何も守りきれなかったから。例え、過去に世界を救ったとしても、結局身近の存在を守りきれなかったのなら、それは意味ないだろ?」
俺の考えを聞いて、次に北条さんが喋りだす。
「でも、あたしはネウスの一途さとか好きよ? あそこまで想われたら、女の子としては嬉しいもん」
「ただそれが強すぎて、一部だとシスコン(マザコン)、ロリコンとかネタにされてるよな」
うん、俺も少しはそう思うが、北条さんの前でそれは言うなよ。この馬鹿。
「それは勝手に馬鹿にしてるだけでしょ? 池崎君もそう思うんだ〜?」
案の定、北条さんからジト目で睨まれる。ここは助け舟を出すか。
「一応、俺はネウスの生き方は格好いいとは思う」
「だよねだよね〜♪ ネウスの一生懸命なところって、格好良いよね〜」
基本、良いとこを上げていれば機嫌を損ねることはない。機嫌が戻ったところで、北条さんには語ってもらうとするか。
「因みに、ネウス×クロワノールのどんなとこが好きなんだ?」
多分、それは北条さんも望んでいることだろう。二次元で好きな話や、キャラクターってのは、ある程度自分の望みを反映しているものだからな。
「ん〜、あの二人の絡みなら全部好きだよ! でも、やっぱり一番はネウスがクロワノールをとっても大切にしていて、彼女の為なら死すら厭わないところねっ!」
「俺としては重すぎると思うけど、北条は重たい方が好きなのか?」
明の質問に北条さんは笑いながら返事をする。
「いや、別に重たくある必要はないよ? 大切にしてくれて、想っていてくれるなら、嬉しいじゃない」
「まあ、そりゃそうだわな」
それは誰だってそうだと思うが、北条さんの場合は、それを切実に求めているということか? 自分だけのネウスを。
俺から明へと意識させられたら、多分北条さんは先輩の『救済』を受け入れるだろう。昨夜の閃きに自信はなかったが、今の話しで十中八九間違いないと思えた。
「・・・・ごめん、そろそろ俺行くよ」
目の端で捉えていたドアに、先輩の姿が見えたので一声かける。
「ん? あ、そうか・・・・」
明は先輩が来た事を察し、それ以上は何も言わない。ここで萌先輩の名前を出すのは、どう考えても良くないだろう。
北条さんも俺の言葉の意味を分かっているからか、何も言わずに俯いていた。
「それと、話を抜けるお詫びという訳でもないけど、はい」
「・・・・えっ?」
「今日の授業のノート。明日返してくれたらいいよ。教科書に乗っていない、先生が話した部分だけだから、物足りないところは教科書読めば補える」
ノートを渡すと、驚いたように俺を見てくる。悪いけど、こっちは早く先輩のところに行きたいので、これ以上の声はかけない。
最後に忘れ物がないかを確認すると、入れ忘れていた弁当を見つける。普段はない物だから、頭から抜け落ちて鞄にしまい忘れていた。それを鞄へと入れて席を立つ。
「あ、今日はお弁当だったんだ。・・・・お母さんが作ってくれたの?」
まあ、こう反応されるよな。ここはそうだと言って流せばいい。そうすれば波が立つこともなく、この場を去れる。普通ならそうなんだろう・・・・普通なら。
「萌先輩が作ってくれたんだ」
でも俺は先輩がくれた優しさを、嘘でも無かったことにはできない。こんな自分に手を差し伸べてくれた存在を、なぜこんな事で隠さないといけないんだ?
「それじゃあ、また明日」
「・・・・おう、また明日な」
呆れたような声で、明は手で早く行けと指示してくる。
何も言わない北条さんの横を通り過ぎて、俺は先輩の元へと行く。
教室を出る時には、明が北条さんへと話しかける声が、背後から聞こえた気がした。




