第50話 〜寄り添う者達〜 13
「あ〜、つまり? お前は昼飯食べながら、北条さんとオタトークしてたと?」
予鈴が鳴って先輩に起こされ、教室へと戻ってきたら明がご機嫌に話しかけてきた。
「おう! 悪夢なく眠れたからか、昼にはもういつも通りでな。お陰で『ソウハ』についても熱く語れたわ。あそこまで話せる辺り、北条も中々のオタクだと思うぞ」
「で、そんなに元気なのに、教室に戻ってこないのは何故なんだ?」
「ん? ああ、静流先生が『念の為、もう少し休みなさい』って事で、最後の授業には出てくるぞ」
ってことは、実際に見るまでは何も分からないな。虚勢か本当かは、自分の感覚で判断する。
「そうか。とにかく、意気投合できたなら何よりだ」
「まあ、北条が『健君はネウスに少し似てるよね』とか言った時は、焦ったけどな」
「はっ? それってどういう———」
詳しく聞こうとしたところで、本鈴が鳴ってしまう。明は慌てて席へと戻り、俺は北条さんが言ったという言葉について考えることになる。
ネウスと似てる?
ネウスは天才キャラのチートで、人間とヒトの中で断トツの力を持ってるんだぞ。俺とは違う。
似てるところと言えば・・・・人間嫌いか? いや、そんなことで好きなキャラと似てるとか言わないだろ。ん〜?
ノートを書きながら考える。こんなもの教師が教科書に載ってない事を言ったところだけ書けばいい。それ以外はまた教科書を読めばいいだけだ。
頭が良いと言われたとしても、あっちはマジモンの天才で比較にならないし、姉はいないし、守るべきヒロインは・・・・いる。先輩を守る俺をネウスに当てはめたのか?
確かにネウスは、成長したヒロインを守るためなら何でもしたし、俺も同じことをすると思う。だが、それを似てると言うのなら、夢だと言った話は嘘か? でも、昨夜あの時の俺は何もできなかったし、何か違和感あるな。
どこかスッキリとしない状態で、そこから何かが出てくることはなく、五限目が終わる。
俺はすぐに明の所に行って、聞けなかった事を聞く。
「なあ、俺がネウスに似てるって・・・・どういうところなんだ?」
「ああ、はいはい。そういや、そんな話の途中だったな」
次の教科書を準備しながら、明は答える。
「何だかんだ優しいってところだとさ」
「・・・・はあっ?」
意味がわからない。ネウスにも俺にも、全く当てはまらない言葉だ。
「いや、そんなマジで分からん顔するなよ」
「分かんねーよ。俺らに当てはまらないことだろ、それ」
「俺も分からんかったが、お前の名前が出たせいで何も言えなかったよ。だが北条は、だからお前を好きになったと思うって、そう言ってたぜ?」
「んー・・・・? マジでどういうことだよ? つか、お前よくそこからエンジョイトークできたな」
「そこから北条がネウス推しの話にしてくれたから、俺はそこでの会話を楽しんだ。実際、俺もネウスには憧れるしな。たった一人のヒロインを守るために生きるとか、ある意味男のロマンだよな」
そこは分かるが、優しさは本当に分からんぞ。
「っと、噂をすれば・・・・」
明が立ち上がり、ドアへと向かう。視線でそれを追えば、保健室から帰ってきた北条さんを見つけて、明が話しかける。
「本当にもう大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫。お昼はありがとうね。良かったら、また話そ?」
「ああ。喜んで」
明との会話を終えると、北条さんは自分の席へと荷物を置く。そして、俺へと近づいてくる。
その時の雰囲気には、負のオーラ的なものは感じなかった。
「健君もありがとう。お陰で池崎君と楽しくお話しできて、仲良くもなれたよ」
「俺、何かしたっけ?」
普通に話しかけられているが、これは安心していいのか?
「池崎君が言ってたよ。鞄を持って来たのは、健君が気づいてくれたからだって。それがなかったら、きっと楽しく会話もできなかったと思うの。だからありがとう」
特に裏があるとは思えない笑顔を見せる。これは開き直ることができたということか?
それにしても明のやつ、そんなことわざわざ言わなくてもいいだろうに・・・・
「それで、健君も『ソウハ』知ってるんだよね? どのキャラが好きなの?」
「・・・全体でみたらプログレスかな? 北条さんはネウスが好きなんだよね?」
真意を測るためにも話に乗る。一応、嘘じゃないように、本当に好きなキャラを上げる。
「そうだけど。でも、プログレスが好きって、健君珍しいね」
「単純に強いからだけどね」
「じゃあ、女の子で好きなのは誰?」
「それだとクロワノール・・・・」
ふと、好きな女の子と言われて、萌先輩が浮かぶ。そして、似ているキャラといえば———
「・・・・と、リーベ」
「そうなんだ! 実はあたしもクロワノールが好きなんだっ! 確かにリーベもネウスと関係あるけど、やっぱりネウスといえばクロワノールだよねっ!」
好きなキャラが被って嬉しそうにする。そこには裏など見られなかった。
どうやら、少しは気持ちに踏ん切りがついたのか? それとも、静流先生が何かしてくれたのかな?
「じゃあ、だったらなんで————」
勢いが出てきたところで、授業開始のチャイムが鳴る。
「あ〜・・・・続きは放課後に話そ?」
一方的に言って席へと戻られる。そして、本日最後の授業が始まった。




