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傷だらけのこの世の中で ~link of tears~ 克服  作者: 偽穢
傷だらけのこの世の中で ~link of tears~ 1.告白
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第44話 〜寄り添う者達〜 7

「なんつーか、これがバカップルか・・・・こんなん見せられたら、誰でも二人が恋人だと思うだろうな」

「そうですか?」

「そうですよ。俺もそんなんが出来るように、頑張るとしますか〜」

 席を立ち、食器を片付けに入る。

「あ、俺も片付けるぞ! 先輩はここで待っていてください!」

 飲み終わったコップのトレイに、自分の食器を乗せて追いかける。今は先輩と二人きりでいると、むず痒さを感じてしまう。

「しかし、萌え先輩って凄い一途なのかね? なんつーか、もうお前以外の男はいらないって感じだよな」

「それは多分あれだ。顔に感情が殆ど出ないから、それでそう思いやすいんじゃないか?」

 食器を片付けながら軽口を叩き合う。

「彼氏がそんな風に思っていいのか?」

「いや、だってその内に俺より好きな男見つけて、そっちに行く事だってあるだろ?」

 コップはコップ入れに、フォークとナイフは箸用のスペースへ落とす。

「えらく弱気だな」

「じゃあ、もしも先輩に好きですと言われて断れる奴っているのか?」

「・・・・いないだろうな。彼女いない俺がそんなん言われたら、迷うことなく付き合うわ」

 皿と容器は同じ場所へ、その他のゴミはゴミ箱へと入れる。最後に空になったトレイを置いて、後片付けは終わる。

「まあ、今はお前が付き合っているんだから、そんな悪いこと考えんなよ。俺だって今は北条を狙っているしな。そんなん考えるだけ無駄ってやつだ。ほら、先輩迎えに行くぞ彼氏くん」

「分かってるよ」

 その後は先輩の所へ戻り、時間も時間だったのでクラスへと戻る。帰りの食堂は朝よりも人は増えており、どうも遅くに食べに来る奴らが多いみたいだ。

 渡り廊下へ出て、来たときとは反対の流れで戻っていく。こちら側の階段は靴棚のある場所から奥にあるので、特に人は居なかった。多分、食堂からクラスに近い奴しか朝は使わないな。

 そのため、三人で黙々と歩いていく。先輩は基本お喋りではないし、明は北条さんの事で頭が一杯なのか黙るし、俺は基本的に食べない朝食で少し腹が苦しかった。

 そのまま無言で階段を上がって行くと、途中で先輩が口を開いた。

「別れる前に、渡しておくものがありますので、少々お待ち下さい」

 三階へと上がる途中、階段の折返し地点の場所で、先輩がそう言って隅へとよる。

 渡すものと言われて、俺は鞄を先輩へと返す。受け取った先輩は鞄を開けて何かを探しだす。

 これに明が馬鹿みたいなテンションで反応する。

「この展開・・・・マジかよ!? 本当にそんなことがあるっていうのか?!」

「いや、お前は先にクラスに行け」

「こんな神イベを見逃せるかってんだ!」

 勝手に察して、興奮して鬱陶しい。そういや、こいつオタクだっけ? 何かオタク特有のイベントで考えてるな。

「・・・・どうぞ」

 俺達のやり取りはどこ吹く風か、涼しい顔で渡される。手渡されたのは膨らんだ弁当袋で、当然中身が有るのでその分の重さを感じる。

 隣りで明が「ガチでリアルで手作り弁当とかあんのかよ?!」っと、興奮しているが無視する。

「昨日お約束したお弁当です。またお昼に伺いに行きますので、教室で待っていてくださいね?」

 あ、そういえばそうだった。色々と余裕無くして、すっかり忘れていた。結果論だが、朝コンビニに行かなくて良かった。

「あ、有難うございます・・・・先輩」

 先輩を見上げながらお礼を言う。

「お礼なんていいんですよ。健に何かをしてあげられるのは、私も嬉しいですから」

 無表情な顔で見下ろされるが、今度は夜の世界で見せてくれた笑みが重なる。

 その不意打ちに心臓が一気にうるさくなる。あっちだと意識しないが、こっちだとこういう感覚がダイレクトに来る。

「あっと、その・・・・有難うございます」

 雰囲気や流れで察せる時ならこうはならないが、流石に急な笑顔はヤバかった。良く心臓は破裂しないもんだ。

「・・・・どうされたのですか? 顔が少し赤いですよ?」

 心配そうに顔を近づけて来られる。

 意識してる時にそれは止めて欲しい。でも、ここで逃げると先輩を傷つけるだろうし、どうしたらいいんだ?

「これはアレっすよ、先輩。照れてるんですよ。先輩みたいな美人に弁当貰って、そんな言葉を言われながら見つめられたら、誰だってドキドキもするってやつですよ。まあ、俺は正直羨ましいですけどね」

 今回ばかりはこいつにマジで感謝する。お陰で先輩が身を引いてくれた。

「そうなんですか? 健・・・?」

「えっと、その・・・・すみません。今度は先輩の笑顔が見えてしまって、急なそれで・・・・その、ドキドキしてます」

 意味不明な事は分かっているが、先輩には誤魔化す必要もないと思って素直に白状する。むしろ、変に隠す方が拗れると思った。

「今度は笑顔か? お前が見たいから脳内変換でもしてるんじゃねーの?」

「いや、そんなんじゃねーよ」

 あの感覚はリアルで、変換なんてもんじゃない。間違いなく、夜の世界で見た先輩の笑顔だった。

「ともかく、身体に異常はないのですね?」

「ええ、それは大丈夫です」

「でしたら構いません。もうすぐ授業も始まることですし、二人とも行きますよ」

 先輩が上手く話を切ってくれたので、残りの階段を上がる。

「それでは、私はここで失礼します。またお昼に会いましょうね?」

「は、はいっ!」

 そして俺達はもう一階上がってクラスへと戻る。もうすぐ始業なので、続々とクラスメイトが教室へと入っていく。俺達もそれに続いて中へと入る。

「お前萌え先輩に本当に愛されてんな〜。何で先輩はそんなにお前に惚れてるんだ?」

「・・・・本当、なんで好きになってくれたんだろうな? 俺自身信じられんよ」

「あ〜、お前ら見てると、俺もマジで彼女欲しくなった」

 明の言葉を聞きながら席に戻って、まず先輩からのお弁当を鞄へと仕舞う。そして、明はまだ席に戻る気はないようで、ギリギリまで俺と会話をするつもりらしい。

「んー、そういや北条はまだ来てないのか? アイツがギリギリに来るなんて珍しいな」

 今日の朝のテストはもう投げるから勉強はいい。だから、明との会話に時間を使うか。

「そうなのか?」

 言われて教室を見渡すと、確かに北条さんはいなかった。

「・・本当だな」

 ヤバい。このまま来ないと、昨夜の事を記憶しているかどうかの確認ができない。

「昨日のショックで休んだかな?」

 確かに、夜の世界で消耗して休むのは考えられる。だが、昨夜の俺はそこを見落としていた。こうなると見舞いに行くしか・・・・いや、今の俺が行くとか傷エグリに行くようなもんだぞ! どうしたものか・・・・

「どうした? 流石に自分が振ったショックで女の子が休むとなると、良心が痛むのか?」

「いや、別に? 先輩を困らせてた奴に情けをかけるほど、俺は優しくない」

「清々しいくらい萌え先輩一筋だな、お前。お、どうやら来たみたいだ。よかったな。これで、お前のせいで休んだとか言われなくてすむぞ」

「いや、それはまだ怪しいぞ」

 入ってきた瞬間で分かった。北条さんは向こうの世界での消耗を引きずっていると。

 あの感じは俺も経験があるから分かる。

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